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第3章 不信な隣国
第44話 王女の目的
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僕達は今、アムスポリスの王宮内の厨房で国王へ献上する料理を調理している。
僕達と言っても、作業をしているのはほとんど僕1人で、サキとレイアの2人が僕の作業を手伝ってくれていた。
便宜上アリー王女と護衛の2人の兄も僕の補佐役という名目で同行を許されているのだが、実際に厨房では戦力にはならないので、部屋の隅で僕の作業を見守っていた。
「それにしてもお主等の弟は良い手際をしておるのう」
「今回の事には実の兄である私達も驚いています。
私達が実家で共に過ごしていた頃には、ライルがこんなにも有能な弟だとは思いもしませんでしたよ」
「まったくです。
兄弟の末っ子ということで、 愛玩動物的な存在でしたしね」
僕は調理を続けながら王女と兄達の話を聞いていた。
それはサキやレイアも同様だったようで、僕達に作業をさせて何もしない王女達の不満を幾度となく僕へ告げて来るのだが、下手に手伝わせることで作業効率が落ちる事と、王女は今回の依頼人であることを主張して何とか2人を納得させると、僕達は調理を続けた。
「ところで、まだ王女様の目的を聞いていませんでしたが、ここには僕達しかいませんので、よろしければお聞かせ願えませんか?」
僕は調理を続けながら、王女へ問い掛けた。
「そうじゃのう。
お主の料理が出来るまでは退屈であるし、調理を続けながら聞いておれ」
僕の問いに対して王女は今回の依頼の目的を話し始めた。
「今年の夏に我が国を襲った大飢饉は覚えておるか?」
「・・・・・!
当然です。僕の住んでいたレイン領にも大きな被害がありました」
「国王である私の父も、あの様に大規模な日照りによって起こった大飢饉に対応が追いつかずに途方に暮れておった。
なにせ頼りにしていた貴族連中も自分達の食糧の確保に動き出し、国庫の管理をしていた役人も貴族連中に唆され、あろう事か備蓄していた穀物の一部を貴族連中へ横流ししていたのだ」
僕は王女の話を聞いて、当時国からの援助が無かった理由が判明した。
「父と大臣達がその事実を知った時には既に国庫の管理をしていた役人は謎の死を遂げ、穀物を横領した貴族連中の手掛かりを失った。
父は犯人を捜すことを断念し、国庫に残された穀物の全てを王都の民と、国内の各領土を治める領主達へ分配し、いよいよ国の存亡の危機に陥った時に、隣国であるここ、アムスポリスから多くの支援物資が提供され、その後とある地方領主から日照りに対する解決案が早馬によって伝えられた事もあり、我が国は存亡の危機から救われたのじゃ」
「では、この国の王はプテロポリスの恩人ということですね」
僕は王女の話を聞いて、感じたままに尋ねた。
「いや、この話はそんなにも単純ではないのじゃ」
僕の感想を聞いた王女は真剣な眼差しを向けて話を続けた。
「確かにアムスポリス王からの救援物資によって我が国は救われた。
しかし、その後アムスポリス王から我が父へ送られて来た親書の内容が問題なのじゃ」
「・・・・・・」
僕は調理を進めながら、王女の次の言葉を待った。
「親書の内容を簡単に説明すると、今後両国に此度の様な災害が何時起こるかもしれないので、互いの王子・王女を婚姻させ、縁戚となろうという物じゃった」
「お話を聞く限りでは何も問題はないと思いますが?」
「まぁ、ここまでの話にはたしかに不信はない。
問題はアムスポリス王の人選にあるのじゃ」
「お前は知らないであろうが、アムスポリスに王女は存在しない。
よって、アムスポリス側は第二王子をプテロポリス第一王女の婿へ送り、我がプテロポリスは第二王女をアムスポリスの第一王子の妻として送る様に提案して来たのだ」
王女が言い辛そうにしていた事を察して、アトス兄さんが王女の話を引き継いで僕達へ語り出した。
「改めて尋ねますが、今の話にも別に不信な点はない様ですが?」
「では聞くが、お前はこの国の王子達がどの様な人物か知っているのか?」
「・・・・・・」
僕は兄さんの問いに答えることが出来ずに調理の手を止めてしまった。
確かに今までの話を国に対して何も責任のない僕からすると、二つの国が平和的に縁戚関係を築けるのならば良い事の様に感じるが、当事者としては縁戚関係になる相手の為人は重要問題だった。
「そう、問題は2人の王子の人格なのだ。
特に我が国の第一王女の婿として挙げられたアムスポリスの第二王子だが、密偵の報告では、狡猾にして残忍な性格で、特に支配欲が強い人物らしい。
その様な男が万が一にも我が国の第一王女の婿の位置に納まったりすればどの様な動きを取るか想像出来るか?」
僕は兄の言葉を聞いて、自分が仮に王家の人間だと仮定して考えてみた。
現国王の子は第一王女の次に第一王子が生まれ、後に第二王女・第三王女が生まれた訳で、第一王子が現国王の後を継いだとしても、姉である第一王女と、その婿の存在は大きいはずだ。
仮に第一王子に不慮の事故でも起きようものなら、プテロポリスの実権は第一王女の婿の物となり、プテロポリスは次第にアムスポリスの属国に・・・。
「気が付いたか?」
アトス兄さんは僕の表情の変化から、僕へ声を掛け、僕は静かに頷いた。
「つまり今回の妾の目的は、この国の内情と、出来うることなら問題の第二王子をこの目で見て、妾の感じたことを父王へ報告することなのじゃ」
僕達と言っても、作業をしているのはほとんど僕1人で、サキとレイアの2人が僕の作業を手伝ってくれていた。
便宜上アリー王女と護衛の2人の兄も僕の補佐役という名目で同行を許されているのだが、実際に厨房では戦力にはならないので、部屋の隅で僕の作業を見守っていた。
「それにしてもお主等の弟は良い手際をしておるのう」
「今回の事には実の兄である私達も驚いています。
私達が実家で共に過ごしていた頃には、ライルがこんなにも有能な弟だとは思いもしませんでしたよ」
「まったくです。
兄弟の末っ子ということで、 愛玩動物的な存在でしたしね」
僕は調理を続けながら王女と兄達の話を聞いていた。
それはサキやレイアも同様だったようで、僕達に作業をさせて何もしない王女達の不満を幾度となく僕へ告げて来るのだが、下手に手伝わせることで作業効率が落ちる事と、王女は今回の依頼人であることを主張して何とか2人を納得させると、僕達は調理を続けた。
「ところで、まだ王女様の目的を聞いていませんでしたが、ここには僕達しかいませんので、よろしければお聞かせ願えませんか?」
僕は調理を続けながら、王女へ問い掛けた。
「そうじゃのう。
お主の料理が出来るまでは退屈であるし、調理を続けながら聞いておれ」
僕の問いに対して王女は今回の依頼の目的を話し始めた。
「今年の夏に我が国を襲った大飢饉は覚えておるか?」
「・・・・・!
当然です。僕の住んでいたレイン領にも大きな被害がありました」
「国王である私の父も、あの様に大規模な日照りによって起こった大飢饉に対応が追いつかずに途方に暮れておった。
なにせ頼りにしていた貴族連中も自分達の食糧の確保に動き出し、国庫の管理をしていた役人も貴族連中に唆され、あろう事か備蓄していた穀物の一部を貴族連中へ横流ししていたのだ」
僕は王女の話を聞いて、当時国からの援助が無かった理由が判明した。
「父と大臣達がその事実を知った時には既に国庫の管理をしていた役人は謎の死を遂げ、穀物を横領した貴族連中の手掛かりを失った。
父は犯人を捜すことを断念し、国庫に残された穀物の全てを王都の民と、国内の各領土を治める領主達へ分配し、いよいよ国の存亡の危機に陥った時に、隣国であるここ、アムスポリスから多くの支援物資が提供され、その後とある地方領主から日照りに対する解決案が早馬によって伝えられた事もあり、我が国は存亡の危機から救われたのじゃ」
「では、この国の王はプテロポリスの恩人ということですね」
僕は王女の話を聞いて、感じたままに尋ねた。
「いや、この話はそんなにも単純ではないのじゃ」
僕の感想を聞いた王女は真剣な眼差しを向けて話を続けた。
「確かにアムスポリス王からの救援物資によって我が国は救われた。
しかし、その後アムスポリス王から我が父へ送られて来た親書の内容が問題なのじゃ」
「・・・・・・」
僕は調理を進めながら、王女の次の言葉を待った。
「親書の内容を簡単に説明すると、今後両国に此度の様な災害が何時起こるかもしれないので、互いの王子・王女を婚姻させ、縁戚となろうという物じゃった」
「お話を聞く限りでは何も問題はないと思いますが?」
「まぁ、ここまでの話にはたしかに不信はない。
問題はアムスポリス王の人選にあるのじゃ」
「お前は知らないであろうが、アムスポリスに王女は存在しない。
よって、アムスポリス側は第二王子をプテロポリス第一王女の婿へ送り、我がプテロポリスは第二王女をアムスポリスの第一王子の妻として送る様に提案して来たのだ」
王女が言い辛そうにしていた事を察して、アトス兄さんが王女の話を引き継いで僕達へ語り出した。
「改めて尋ねますが、今の話にも別に不信な点はない様ですが?」
「では聞くが、お前はこの国の王子達がどの様な人物か知っているのか?」
「・・・・・・」
僕は兄さんの問いに答えることが出来ずに調理の手を止めてしまった。
確かに今までの話を国に対して何も責任のない僕からすると、二つの国が平和的に縁戚関係を築けるのならば良い事の様に感じるが、当事者としては縁戚関係になる相手の為人は重要問題だった。
「そう、問題は2人の王子の人格なのだ。
特に我が国の第一王女の婿として挙げられたアムスポリスの第二王子だが、密偵の報告では、狡猾にして残忍な性格で、特に支配欲が強い人物らしい。
その様な男が万が一にも我が国の第一王女の婿の位置に納まったりすればどの様な動きを取るか想像出来るか?」
僕は兄の言葉を聞いて、自分が仮に王家の人間だと仮定して考えてみた。
現国王の子は第一王女の次に第一王子が生まれ、後に第二王女・第三王女が生まれた訳で、第一王子が現国王の後を継いだとしても、姉である第一王女と、その婿の存在は大きいはずだ。
仮に第一王子に不慮の事故でも起きようものなら、プテロポリスの実権は第一王女の婿の物となり、プテロポリスは次第にアムスポリスの属国に・・・。
「気が付いたか?」
アトス兄さんは僕の表情の変化から、僕へ声を掛け、僕は静かに頷いた。
「つまり今回の妾の目的は、この国の内情と、出来うることなら問題の第二王子をこの目で見て、妾の感じたことを父王へ報告することなのじゃ」
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