それ、あなたのものではありませんよ?

いぬい たすく

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そんなことをしても無駄ですよ?

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「ふふ。今更とぼけなくとも結構です。はじめから分かっていましたから。

 そんなことをなさっても無駄ですよ、。仮に私が他家に嫁いだところで、この家を継ぐのは私の産んだ二人目以降。子がなければ王家に返上することになるでしょう」

「何なの、お姉様。何を言っているの?」

 ルフィナの言葉が理解をこえたらしいアリーチェは泣きすぎて腫れぼったい目を瞬いている。

「あのね、アリーチェ。あなたや伯母様は、伯父様が子爵になって哀れな親無し子の私をご親切に拾ってやったと思っていたようだけれど。

 伯父様は二十年も前にこの家を継ぐ権利を失っていらっしゃるの。その娘であるあなたも何の権利も持っていないのよ」

「嘘よ!じゃあどうしてこのお屋敷で暮らしてこれたのよ!」

「それは、ただ単に伯父様が私の後見人だったからよ」

 ルフィナは十二歳の時に事故で両親を亡くしている。当主となるべきものが幼い場合、成人するまで後見人を立てる決まりなのだ。

「はじめから分かっていた?馬鹿を言うな。だったらなぜ私を後見人にしたんだ」

「仕方が無かったのです。私、どうしてもあの学校に入りたかったのですもの」

 王立アダルジーザ学院。先頃ルフィナが卒業した名門校だ。他に後見人となれる近親者がいないため、伯父を拒否すれば自動的に国から後見を受けることになる。そうした場合には一日も早い自立を促すために領主としての厳しい教育を受け、領地を離れることに制限が掛かる。それでは王都にある全寮制の学校に入ることは出来ない。

「おかげさまで普通の領主教育以上のことを学ぶことが出来ましたし、友人もたくさん出来ましたから。良い選択をしたと思います」

「お姉様ばっかりずっと王都にいて遊び放題だったんでしょう、ずるいわ!」

 従妹の的外れな恨み言に、今度はルフィナが目を瞬いた。

「遊び回っていたのはあなたの方でしょう。あなたがカルリーニ子爵令嬢を名乗るから、こっちにまで飛び火してきて迷惑したのよ。
 あなたって本当にご両親そっくりね」

「まあ、なんて言いぐさなの!
 アリーチェはあなたの身代わりになったのよ!申し訳ないと思わないの!」

「ええ、ちっとも。身代わりになってもらわなくても支障はありませんでしたから。私だったら簡単に婚約を白紙に戻すことが出来ましたし」

 この国の法律では、家の乗っ取りなどを防ぐために「後見人が取り決めた婚約は被後見人が成人したときに取り消すことが出来る」と定められているのだ。問題しか無い縁組みだと分かっていてルフィナが抵抗を示さなかったのはこのためだ。

「だから言いましたでしょう?そんなこと無駄ですって」
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