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萌え、発見!
しおりを挟む頑張って、世界を回ります!
といっても、キュトたんとレトゥリアーレの転移魔法で一瞬だ。
ありがとう、チート!
だってさ、RPGゲームで、一回行った街に戻るのに延々歩くとか、めちゃくちゃ過酷なモンスターいっぱいの洞窟とか山とかもう一回越えなきゃいけないとか、それが延々繰り返されるとか、本気で殺意覚えるでしょ。
お気楽ゲームには必須の転移魔法だよ!
アウトドア何それ美味しいの? の超絶インドアな僕には、大変ありがたい。
一日中森のなかを歩くとか、山歩きとか真剣に無理。
キュトたん、レトゥリアーレさま、ありがとう、ありがとう!
僕の感謝を肌で感じているらしいクロは、走り回れなくて運動不足で辛いと思うのに、ぶんぶん尻尾を振って、きらきらの瞳で、僕を見あげてくれる。
「ろー、かわいー」
「かわいーのは、常に! いつも! クロだから!」
もふもふ!
抱っこしたら、人込みとエルフの罵言でしょんぼりも、めちゃくちゃ癒される!
ありがとう、クロ!
「クロとひめ、かわいーなあ♡」
「全力で同意」
キュトとレトゥリアーレも、仲良しさんみたいだ。
レトゥリアーレの鼻血特製エルフ探査魔道具は、快調にエルフを探してくれる。
人界はキュトたんが、精霊界に近いところはレトゥリアーレが転移魔法を使ってくれて、ひゅんひゅんお邪魔しては、ピンチの時には助けに来るので魔道具どうぞを繰り返した。
「あ、悪魔──!」
「汚い手で触るな!」
「厄災め!」
僕を罵り、害そうと剣を掲げ、キュトが一生懸命作ってくれた魔道具を叩き落としたエルフたちは、レトゥリアーレが秘法を使う間さえ、なかった。
顔が崩れ、手足が萎れ、歪な瘤だらけの、灰の身体になってゆく。
腐った匂いを撒き散らし、ダークエルフに堕ちていった。
「悪魔のひめ来た!」
「いじめて、ごめんね」
「なんだ、このかわいーの!」
「見殺しにしたのに、たすけに来てくれるとか、すげー! ありがとー!」
喜んで魔道具をもらってくれたエルフたちは、エルフのままだった。
「よかった! レトゥリアーレさまが秘法を使わないで済んで!」
拍手する僕を、キュトたんの凄まじい目が睨みつけた。
こ、これ、僕、殺されそうなやつだ────!
世界に357エルフくらいいるらしくて、全部見つけるのは、かーなーりー! 大変です。
大体2エルフぐらいずつ纏まってくれてるけど、それでも捜しても捜してもまだいるエルフ!
ちょっと疲れながらも、クロと僕とキュトとレトゥリアーレの最強パーティ(僕だけ弱め)で頑張ってるよ。
そんなお疲れのエルフ探索の帰りに、人族の国、ゾォガ帝国の帝都で、折角来たからジァルデとゼドに、お土産のお菓子でも買おうとしてた時だった。
人込みと人いきれにうんざりしつつ、キュトと一緒にフードを目深にかぶった僕は、ぴょこんと跳びあがる。
「今、萌えが見えた!」
「…………は?」
キュトの目がまるくなり、レトゥリアーレの目が剣呑になり、クロの尻尾はぶんぶん振られた。
僕、魔山羊のお母さんのおかげで、めちゃくちゃ視力いいんだよ!
…………たぶん、人外。
「クロ!」
何も言わなくても、クロは僕を乗っけて走ってくれる。
「きゃあ!」
「な、なんだ、こんなとこで馬に乗るな!」
「ちがう、犬に乗ってるぞ!」
「すげえ!」
怒声と歓声が背を叩き、レトゥリアーレとキュトが、驚異の速度で駆けてくる。
主人公ふたり、チートだからね。
走るの、速!!
「急にどうしたんだ、ルル」
息も乱さず、隣を走るレトゥリアーレの目が、怖い。
ぷるぷるしながら、僕は道の先を指した。
「あっちに、けも耳が見えたのです!
きっと獣人さんです。
ゾォガの帝都だと、理不尽な難癖つけられて、すんごい袋叩きにされちゃうかも! という訳で、たすけにゆくのです!」
獣人を差別するゾォガ帝国の帝都で、けも耳を出すのは、危険だ。
民衆が騒ぎ、衛士や騎士団が出動し、袋叩きにされる。
酷い時は、なぶり殺しだ。
耳を隠すフードが取れたのかもしれない。
すぐに助けに行かないと────!
拳を握る僕の隣で、息も乱さず駆けてくるキュトの目が、爛々した。
「獣人! もふもふ!」
「萌えが僕たちを呼んでいる!!」
手を握り合う僕とキュトを、レトゥリアーレの凍える瞳が貫いた。
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