万能ドッペルゲンガーに転生したらしい俺はエルフに拾われる〜エルフと共に旅をしながらドッペルゲンガーとしての仕事を行い、最強へと至る〜

ネリムZ

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アンデッドの国

動き出す魂の歯車

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「憤怒の力を抑えてゼラさんの意識を表に出す⋯⋯それで、大丈夫なんだよね?」

「はい。まぁ魂に干渉するので、失敗したら貴女の魂が砕けますね」

「構わない。お願い、やって」

 ゼラさんの魂を私が魂ごと介入して、眠っているゼラさんを呼び起こす。
 そこで暴走は止まってゼラさんは元に戻る。
 だけど、失敗したらゼラさんは助からないし、私も魂が砕ける。
 ⋯⋯魂ごと誰かを助けるなら、私も自分の魂を賭けないとダメだろう。

「それでは、行きますよ」

 リーシアちゃんは私を止めようとはしなかった。
 きっと私の覚悟をきちんと分かっているからだろう。
 失敗する気は全く起きなかった⋯⋯今の私ならゼラさんを救える。
 そう確信しているのだ。

 意識が抜けるように消えて行き、私は新たな世界で目覚めた。

 ◆

 あれから数年が経過して、俺達はそれぞれ社会人へとなっていた。
 俺は昔のような会社員ではなく、投資家として活動している。
 昔、か。俺には不思議な事を思ってしまう癖がある。

「拓海、ご飯出来たよ」

「あぁ、ありがとう」

 幼馴染のマナが作ってくれた朝食を食べる。
 ベーコンエッグトーストがお気に入りである。
 彼女は昔、親の都合で自分の意思に関係なく結婚されそうになっていた。
 それを助ける為に俺は親達の協力の元、投資を初めて金を稼いだ。
 その金を使ってマナの会社を買収し、社長はそのままマナの父親で継続して、結婚を白紙にさせた。
 流石に一瞬では出来なかったが、間に合わない事はなかった。

 マナが大学は卒業したいと申し出て、時間が出来たのだ。
 それを行う為に三年以上の月日が経過して、その間にマナは必死に頑張っていた。
 今は俺達とルームシェアして家事を行ってくれている。
 俺は基本的にパソコンと睨めっこ状態である。

「美味しい匂いに釣られて起きました~」

彩奈あやな遅いぞ~拓海とマナがさっさと食べちゃうところだった」

「うへぇ。それは酷いなぁ。自分はもうマナのご飯ないと生きれない体なのに⋯⋯虚くん、おはよう」

「あぁ、おはよう」

 現在進行形で交際中の鬼龍院さんと挨拶を行う。
 彼女は経営者となっており、マナはプレイベート含めて彼女を支えている。
 既に交際してかなりの年月が経っており、普通なら結婚も視野に入れる所だろう。
 しかし、こんな複雑な状態になっている事からも、俺らの中にその考えはない。
 今はこの生活に甘んじて楽しんでいる状況である。

「ねぇねぇ拓海、拓海はマナの事好き?」

「ムッ! 虚くんは自分の事が好きですよね! 彼女なんですし!」

「君達さ、分かってて聞いてるよね」

 二人は同時に舌を出して「テヘペロ」とやって来る。
 一体いくつだと思いってるのか⋯⋯もう少し大人の振る舞いをして欲しいモノだ。
 そんな変わった家庭事情が俺達の普通の生活だ。
 鬼龍院さんに浮気されても仕方ないし、きっとそれを俺は受け入れるだろう。

 それでも二人を守ると決めている。
 別に俺じゃないといけない訳では無いが、彼女達が幸せを得るまでの間は俺が力を貸して守る。
 何故か出来なかった事を埋めるようにしている気がするが、きっと気のせいだろう。
 俺のこの守りたいという感情は本物だと、思っている。

「それじゃ、行ってきます」

「マナちゃん行って参る!」

「行ってらっしゃい。あとマナ、少しは大人らしい態度をしろよ」

 さて、朝食の片付けをしたら近況の情報収集でも行おうかな。
 時々こうやって一人になると、寂しくなる。

 寝室に戻ると、少しだけ他人の影がベットの上に座っていた。
 そこには居ないのだが、ホログラムのようにぼんやりと人影が見えたような気がするのだ。
 それを認識する度に涙が溢れて寂しく、悲しくなる。

「全く、なんでだよ」

 耳が長くて金髪の女性が笑ってる気がした。
 気を取り直してパソコンを立ち上げると、珍しくインターホンが押された。
 こんな朝から人が来る事はない。
 マナや鬼龍院さんの両親と言う訳でもないし、俺の家族な訳でもない。
 その場合はしっかりと連絡が来るからだ。

 玄関に向かってドアを開けると、そこには鬼龍院さんが立っていた。
 ⋯⋯いや、鬼龍院さんと似ているけど全く違う人だ。
 まず、鬼龍院さんよりも腕とかの体が筋肉質であり、顔はよりキリッとしている。
 そして何よりも、耳が異様に長いのだ。

「⋯⋯だ、れ?」

「⋯⋯え?」

 初めて会ったはずの人なのに、どこか懐かしい感じがする。
 おかしいな。
 こんな外国人のような見た目の人、俺の知り合いにいない。
 確かに外国人の知り合いはいるけど、鬼龍院さんに似ている人なんて居なかった。

「どちら様ですか?」

「⋯⋯ッ! ぜ、ゼラさん、ですよね?」

「は? 俺は⋯⋯待って、なんでその名前で俺を呼ぶんだ?」

 俺は昔、ニックネームを付けたいと言われた時に思いついた名前だ。
 それに強いこだわりがあり、今でも少しだけそう呼ばれたい思いがあった。
 しかし、それを言ったのは同居している二人だけであり、目の前の女性には言った事がない。

 完全に知らないと言う雰囲気だと分かると、彼女は途端に涙を浮かべた。
 サファイアのような光り輝く蒼い瞳が涙によって揺れている。

「ゼラさん、私を忘れてしまったんですか? 私です、ヒスイ・メイ・スカイです」

「すみません、俺にそんな知り合いはいません」

「忘れてしまったんですか? 私達の冒険の日々を、私を何度も助けてくれた事も、森で出会った事も、リーシアちゃんやリオちゃんの事も? ドラゴンとの戦いは? 人間国での出来事は? 本当に、全部忘れたんですか!」

「すみません、流石に頭がおかしいと思いますよ? 病院を紹介しますので、そこに行ってください」

 俺は彼女を不審者と断定して、そう言い放つ。
 これでも離れないようなら警察を呼ぶしかない。
 近所で噂が立ちそうなので、出来れば嫌なのだが。

「⋯⋯ゼラさん、私は強くなりました。リーシアちゃんを助けました。⋯⋯ゼラさん、今度は貴方を助けます。助けられたこの身を全力で賭けて」

「何を言っているのか、分かりません」

 あれ?
 おかしいな。
 なんでこんなに彼女を突っ撥ねる事に罪悪感が芽生えるんだ。
 こんなに心臓が潰さらそうな罪悪感に襲われたら事はなかった。

「ゼラさん、私の目を見てください」

 涙を流しながら、顔に手を当てて無理矢理目を合わさせられる。
 それがとても懐かしくて⋯⋯何故か今よりも少しだけ物腰の柔らかそうな彼女の影と重なった。
 おかしいな。なんだろうか、この気持ちは。

「ゼラさん、帰りましょう。貴方のいる場所はここでは無い筈です」

 その言葉に俺は⋯⋯そうな気がしてならなかった。
 彼女の言っている言葉がとても大切で正しい気がする。
 なんで、なんでだよ。
 意味が分からない。

 今までも分からない事は色々とあったし起こった。
 でも、今日ほど意味の分からない事はなかった。
 一体、なんなんだよ。

「誰! 貴女は、拓海のなんなの?」

「虚くん、誰ですか? その人は」

「マナ、鬼龍院さん⋯⋯」

「⋯⋯そっちこそ誰ですが、私はゼラさんと大切な話をしているのです!」

 涙を払って二人に対して女性はそうやって言い放った。
 と言うか、なんで二人はここに居るんだ?
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