能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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二章 能力専門学校

8話 正義のヒーロー(笑)

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「カミラ~」

「なんですかソラ」

 ここは迷宮都市の安全を守る、迷宮都市安全保護委員会の人達が住んでいるマンションの会議室。

 そこでは今日の役割である青髪の戦闘用人工人間冥土、ソラとカミラが居た。

 精霊族達はパトロールだ。

 カミラはタブレットを操作しており、ソラは机に持たれてだらけていた。

「ヤユイ様とミナ様ってどっちが強いの? ミナ様は私達の上司でメイド長だけどさ」

「そうですね。力が封印されているヤユイ様なら、ミナ様の方が強いです。が、全力ならヤユイ様の方が強いです。そもそも元はヤユイ様がメイド長だったんですよ」

「え、そうなの!」

「そうです。ソラはまだ若いから知らないのですね。ヤユイ様がミナ様の師匠です。そして、雑務などは秋様から教わり、今の座に居ます」

「ふむふむ」

「まとめ役、と言うのは強さだけでは成り立ちません。だからこそ、皐月様は十二星騎士で暴君者デストロイヤーと言う二つ名の称号を得ていますが、王系ではないです。指揮能力や書類仕事をこなせる⋯⋯言わば忍耐力が必要なんです。ま、強さの全力はヤユイ様の方が上、ミナ様はヤユイ様を上に見てます。だから、ミナ様にはメイド長としての役割はあっても、二つ名や王の名前がないんですよ」

「なるほど。てか、何やってんの?」

「漫画描いてます」

「なんの?」

「秋様と無月様です」

「へ~なんの話?」

「え、秋様に対して無月様が異能を使って動きを封じてP──して、それからP───で、P───、P──」

「ストップ! 真顔で何言ってんのよ! あんたってそう言うキャラなの!」

「結構人気なんですよ。他にもBL、おねショタ、またはその逆。近〇相〇、普通に純愛、NTRものや⋯⋯」

「止めて! 聞きたくない! 憧れの先輩のままで居させて!」

「ま、人気の層って淫魔族サキュバスなんですけどね」

「はは、ほんと、残酷な真実ってあるんだね。──てか、秋様を使って良いの? 秋様を尊敬している人は皆だよ? 支持率100パーセントだよ? 怒られないの?」

「だからこそ、乱れる姿を見たいと思う人は居るんですよ」

「それが人の創作物だとはね。はは」

 ソラの目は虚空を見ていた。憧れの先輩の一人、そんな人がR指定の漫画家の顔を持っていたと言う事実を受け入れないで居た。

「貴方達、少しは緊張感を持ちなさいよ」

「仕方ないじゃないですか~、今ではあの犯罪者も攻めて来ないし。ボコボコにしまくって、アイツアビリティの扱い上手く成って、有害物質を破壊することが出来るように成って、フグとかの刺身を扱っているんですよ? 全うになって暇──」

「ソラ!」

「え、あ、春、様」

 人工人間冥土のトップは人工人間では無く、秋である。

 そして、春と呼ばれたメイド服の人物はサポーターの力を有したモンスター。

 秋の右腕である有能な人物だ。

「お二人共、そこに直りなさい」

「「はい」」

 笑顔が怖い春。ピンクの髪の毛と瞳は桜を連想させる。彼女はこのダンジョンが出来てから二年目に生まれた。

「まず!」

 そこから長い長い説教が始まった。

「それとカミラ!」

「はい!」

「漫画出来たら最初に私に送ってください」

「畏まりました!」

「春様もファンなのかよ!」

「あ、それとこれを天音に渡してください」

「手紙ですか? 春様がお渡しになられれば良いのでは?」

「成る可く天音の顔を見たくないんですよ」

「春様は秋様一筋ですもんね」

「ええ」

(わ~二人しか分からない高次元な話してる~)

「あ、説教を再開しますね」

「「⋯⋯」」

 ◆

「や、やへてください」

「⋯⋯なら、金出せよ」

 加藤並の制服を着ている黄色髪の男が、男子生徒をボコボコにして金を巻き上げていた。

 他にも数人の生徒が一人の生徒を囲んでいる。

 彼らは黄グループ、加藤並の中で最弱のグループ。

「も、もう無理です! お金は、もう渡せま⋯⋯がは」

「無理じゃないんだ。やるんだよ! お前の役目は俺らの財布だろ?」

「無理な、モノは」

「聞こえないな~」

 ただの暴力。そこにカツアゲされている男子生徒と同じ制服を着て、仮面を付けている人物が現れた。

「参上正義のヒーロー!」

「は? なんだその変な仮面。つかてめぇ誰だ?」

「てめぇ誰だと言われたら、何故答える必要があると言う。弱い者イジメはやめなさい」

「は? 変な仮面付けた野郎が、ヤレ!」

『変な仮面野郎! 死ねぇや!』

「いきなりの暴力。愚かな。てか、そんなに変な仮面って強調しなくていいだろ!」

 ◆

 俺は目の前に迫ってくる不良共を拳一つで薙ぎ伏せる。

 身体強化のアビリティ持ちだろうし、違くてもそこそこ丈夫な筈だ。

 建造物を破壊してない時点で、きちんと手加減はしている。相手を気絶させただけだ。

 俺がどうしてこんな役をしているかと言うと、迷宮都市の方に一通の手紙が放り込まれたからだ。

 調べた結果、それが事実だと分かり、困った人を助けるのが我々の方針、そしてその内容が俺に密接に関わる事だったので俺が不良狩りを行っている。

 最初の狩る相手は、依頼者の兄である。

 手紙の内容はこうだ。小さな子供の字で、涙を垂らした跡もあった。

『お兄ちゃんが、こわい人たちに、いじめられて、お金をうばわれています。おねがいします。お兄ちゃんは、けいさつにもたよらないんです。たすけてください』

 まだ漢字が分からないのか、殆ど平仮名だった。

 俺だって情がない訳じゃない。

 だから、ここに居る。

 本当に真面目だな。わざわざ怖い目、痛い目にあっても学校に行くんだから。

「な、なんだお前。変な仮面のクセにっ!」

「本当はこんな事やるつもりは無かったよ。そこまで大事じゃなかったし。小さな事だったし。ま、やるけどさ」

 いや、本来大事になるべきだったのだろう。

「クソがあああ!」

 スピードを上げて黄色男が走って来る。

 相手の拳に合わせて蹴り上げる。

「ひぎゃあ」

「お前の役目は見せしめだ」

 伸びているソイツを見る事もしないで、カツアゲされていた男による。

「大丈夫か?」

「ありがとう」

 手を伸ばし、手を合わせて来たので引っ張る。

 立ち上がった男は俺に頭を下げる。

「感謝するな。俺は成る可く関わらないようにしていたからな。妹に感謝しておくんだ」

「え?」

「それと、奪われた金はこいつらに返させるから、安心して学校生活を楽しんでくれ」

「はい! そ、それと。僕、その仮面かっこいいと思います!」

 理解者⋯⋯こいつはこれからきちんと守ろう。

 さて、こいつらが起きるの待つか。こいつらの為にスペルカードを使ってまで起こすつもりは毛頭ない。

 加藤並について調べるようにして、分かった事がある。

 アビリティがない時代、加藤並は一般高校だった。

 正確にはヤンキー校では無く、そこそこ偏差値の高い良い高校だった。

 だが、アビリティがある時代になり、能力専門に成った時にズルズルと悪く成った。

 そして今の学園長、こいつに成ってからさらに悪く成った。

 何が悪く成ったのか、それは魔道具だった。

「チィ、まだ情報が足りないな」

 それだけしかまだ分からない。

 学園長の事を深く調べようとすると、上手く調べられないのだ。

 今の学園長が何処に居るかも分かってない。

 動物型人工人間を使ってでも分からないとは、相当なのだ。

「ん、ん~」

「起きたか」

「お、お前は!」

「で、何か⋯⋯」

 黄色頭の男が土下座する。

「俺を弟子にしてください!」

「悪人を弟子にする趣味はねぇ!」

 土下座と弟子入り志願して来た黄色男に俺は困惑を隠せないでいた。

 こいつ、なんなん?
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