能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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一章 同格の管理者

24話 迷宮症候群

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「くく。なかなか良いデータが取れた。しかし、魔法などを組み合わせて新たな魔法を作る事も出来る力、か。さて、一体どこまで出来るのか。しっかし、この程度なら、勝てるな」

 ◆

 まずは私様が魂の浄化を行う。
 ダンジョン内で死に、その中にある魔力は瘴気に犯された魂を純粋な魂に戻して行く。
 ここで注意するのは戻し過ぎない事。
 魂を完璧に浄化してしまうと輪廻の輪へと逝ってしまう。

「さて、次に記憶ですね。アンさんお願いします」

「はーい。この数やるのはつらたん」

 アンさんが集中する。
 そして、死者である筈のアンの顔が真っ赤になる。
 魔力が乱れているようだ。

「どうしました?」

「マスター様の幼い頃の裸の記憶!」

「ちょっと待ちなさい! 後でそれをビデオに移しなさい! そして、私様にも見せて! はい皆! 気になるでしょうけど、まずは仕事を優先しますよ!」

 なるほど。幼馴染であるこの方の記憶には天音神の事が沢山⋯⋯後で2層の映像専門店に連れて行きましょう。
 そこで記憶をビデオデータにして、夜な夜な観ましょう。

「あんたも集中しろよ! そろそろ終わるよ。人物像の記憶を送るよ」

「はい。さて、次は活性化ですね」

 こっからが私様達の正念場。
 復元した記憶を再び魂に植え付けて活性化させる。
 その記憶と魂が合致しない物を組み合わせると、綺麗に魂が砕ける。
 それはもう綺麗に木っ端微塵に。
 なので気をつける。

「はぁはぁ。12時間。予定通りですね。次です!」

「で、その魂を憑依させる肉体どうすんの? こっちで腐肉体人間族ゾンビでも用意する?」

「いえ。脆弱な人間のままにするのもあれですし、せっかく天音神に拾われた方々なので、人工人間オートマタの体を用意します。記憶の肉体を生成するだけですのですぐ終わるでしょう」

「マスター様怒らない?」

「そこは説明します。この体に魂を戻す方が危険です。この方だけは上位の肉体にしましょうか。簡単に壊れないように」

 そして、蘇生させた人間達は元の場所に返しておく。
 これで私様達の作業は終わった。

「合計36時間、ですか。ま、少し時間が掛かってしまいましたが、全部完璧ですので問題ないでしょう」

 しかし、数日後にそんな事は無いと思い知らされる事になる。

 ◆

 あれから数日後、俺はとある病院に来ていた。

 902号室に俺は来ている。
 中に入り、進む。
 ベットにはクリスタル人間になっている人が並んでいた。
 その中で唯一意識があり、外を見ている女の子、千秋。

 これは現在『迷宮症候群』と呼ばれる病気だ。
 原因不明、治療方法不明、半分だけクリスタル人間に成っている千秋。
 唯一無二の迷宮症候群で意識がある人間だ

 どうしてこうなったのか、俺も分からない。
 調べるにしても、ダンジョンに人を持って行く事が出来ない。
 神からの情報が来るまで何も出来ない。
 なんでなんにも連絡を寄越さないんだよ。クソが。

「千秋、来たよ」

「あ、ま、ね、あ、り、がと、う。まだ、した、がひ、り、ひ、りす、る、わ」

 無理に笑顔を作ろうとしている千秋。

「無理に話さなくて良いよ」

 俺は雪姫の誘いを最近断っている。
 訓練に割く時間を千秋と面談する時間に変えている。
 ストレスを与えない為にも友達と話す事は推奨されているらしい。
 オートマタの体にしたらしいが、それが原因だとは考え難い。

「ごめんな、千秋」

「あや、ま、る、な、あほ、あ、ま、ゆり、さ、んと、は、どう?」

「無理に喋んなって。ふん。こう見えても最近全然会ってない」

「ごめ」

 俺は顔を横に振るう。

「これは俺の考えた事だから。大丈夫! これからも沢山会う機会あるだろうし、着々と距離を詰めるよ」

「そか」

「じゃ、そろそろ行くよ。また来るね」

「う、ん」

 速く、これに関する情報を寄越せよ神共が。
 これはただ事じゃないだろ。

 俺は外に出ると猫が出て来る。
 黒い猫だった。動物型人工人間アニマルノイド⋯⋯これは分身体か。

「どうしたの?」

『はい。花蓮の両親を発見しました』

「そうか。じゃ、行って来る」

 ◇

 現在その場所に私は来ている。

「クソ。女の体って慣れないなぁ。慣れたくもないが」

 花蓮は女の子なので女の方が少しは良いかと思って変装している。
 しかし、このスペルカードでの変装は内面までも女に近づくから嫌だ。
 ま、自分のイメージが形に成った女の体なんだが⋯⋯見た目が完全に雪姫なんだよなぁ。
 さっさと終わらせよう。

「はーい」

 インターホンを押してさっさと呼ぶ。
 出て来たのは母親の方だった。

「あの、今家で花蓮ちゃんを預かっています」

「あそう。じゃこれからもよろしく~」

 ⋯⋯そうかい。

「あの、花蓮ちゃんの物を⋯⋯」

「あ? 全部捨てたに決まっているじゃない。馬鹿じゃないの? あ、売れる物は全部売ったけど」

「そうですか。失礼します」

 ま、こんな奴らなんだろうな。

 ◇

 家に戻ると亜久が回転蹴りを俺に放って来た。
 それを普通に顔で受け止める。

「なんだよ」

「なんだよ、じゃないよ! 千姉ちあねぇの容体は?」

「連続で2文字は話せる」

「あんまり回復してないんだね」

「ああ。心配だな」

「当然じゃない」

「俺はお前の今後の成績も心配だぞ」

「⋯⋯冷蔵庫にアイスあるよ?」

「誤魔化すな。課題やれ!」

「はーい。千姉に私も会いたいよー」

「明日なぁ」

 さて、アイス食べるか。俺も頭を冷静にしないとな。
 今出来る事を考えよう。
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