いじめられっ子の陰キャJKは自分を変えるため、ダンジョンに挑む〜底辺弱者は枕とレベルアップで強者へと駆け上がる〜

ネリムZ

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理想の日常

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「え、待って! 裕也さんと紗波さんが⋯⋯え?」

 裕也さんはともかく、紗波さんは割と若そうな見た目だ。
 流石にそれが祖母だなんて、嘘に決まってる。

「そう言えば、私苗字聞いてないや」

「世羅がなんで、ここを?」

「⋯⋯実は」

 私は二人のことを話した。すると、お父さんは一筋の涙を流した。
 それを隠すために片手で目を覆う。
 私達は両親の親に一度も会った事がなかった。
 母親の両親は既にこの世におらず、お父さんの親は知らなかった。

「そのな。喧嘩して家を出て、それまでだったんだ。まさか、世羅が助けられていたなんて⋯⋯。世羅、母さんな、ああ見えても今は72歳だぞ」

「え⋯⋯」

 世奈が話に付いて行けてないが、私達は裕也さん達に会いに行く。
 なんとか、成るかもしれないから。

 面会、私とお父さん、そして世奈で二人に会う事に成った。
 面会室に入って来た二人はとにかく驚いていたが、私を見て安堵してくれた。
 その事が分かる私は、本当に嬉しく、そして申し訳なく感じた。

「そうか。お前の、娘だったんだな」

「ああ。助けてくれて、ありがとう」

 事情を話、お父さんが頭を下げる。
 ドンッと机を叩いた。

「違うだろ。なんで、実の娘の様子を定期的に確認しなかったんだ。世羅ちゃんが、どれだけ辛い思いをして来たのか、想像出来ないのか」

「知らなかったんだ。適当な報告ばかりで、それを信じて、仕事もあって、予定も合わなくて、会えなくて⋯⋯」

 私の予定なんて基本的に無いし、適当な理由付けでもしていたのだろう。
 母親がそこら辺の情報操作をしていたと考えると、余計に憎く感じる。

「そんなのは言い訳だ。分かってるだろ」

「あぁ」

 お父さんが辛そうだ。
 私は世奈を連れて外に出る。ここは、この三人の話の場所だ。

「裕也さん。紗波さん。待ってます」

 それだけ言い残して、近くのコンビニのフードーコートに座り、チキンでも食べながら待つ。

「ねえ、お姉ちゃん。あの二人は?」

「私の恩人。全てが嫌いになって、全てがどうでも良く成りそうな時に救われた。⋯⋯ま、まぁヒノの事は言えなかったけど」

 ビー玉サイズのヒノを掌に浮かせる。

「確かに、空飛ぶ枕なんて気味悪いからね」

 少しヒノが落ち込んだ。

「ヒノは優秀なんだぞ? 寝たら自由に傷も癒せるし、体力も魔力も回復する。飛べるし大きく成れるし、移動しながら寝ると言う事が出来るんだよ」

「だったら、その頬の傷はなんなの? と言うかお姉ちゃん、なんでダンジョンなんかに入っているの! 私、本当に怖くて、心配したんだからね!」

 目を腫らし、少しだけ顔が赤く、ぷいっと怒っている世奈。
 それが堪らなく愛おしくて、嬉しくもあった。
 それだけ、心配を掛けてしまったのだろう。
 だけど、この傷はまだ残す予定だ。これが無くなると、自分の覚悟が少しだけ小さくなる気がするから。

「心配掛けたね。本当にごめんね。でも、お陰で世奈に奢ってやるくらいの金の余裕はあるから、さ」

「お金を何兆積まれても、お姉ちゃんの命は買えないんだよ? 失ったモノはお金では、買い戻せないんだよ?」

「ごめんごめん」

 それからこれまでの話をした。まぁ、私は辛いことばかりで、そこら辺を上手く濁して誇張して話した。

「お姉ちゃんが友達三人! 凄いね! 昔なら『友達? そんなのが居て人生楽しくなるのか? 人生楽しくするのは自分の力だろ?』って言ってるのに」

 そ、そんな奴だったかなぁ私。
 ちなみに世奈は人気者らしく、友達は二桁だ。しょごいね。
 まぁ、友達は数とは言わないし。私はそもそも友と言える人は一人と一個。裕也さん達は友達って言うよりも⋯⋯今は家族かな?

「あ、そ、そう言えばさ、その。た、貴音く、くんは?」

「⋯⋯」

 誰だそいつ?
 この反応、世奈が好きな相手なのかもしれない。
 しかし、私の記憶にそんな奴は居ない。
 中学の人⋯⋯なら私に聞かないか。まじで分からない。

「⋯⋯お姉ちゃん?」

「そいつ、誰?」

「え」

「え」

「と、隣の家の幼馴染の男の子で! い、イケメンで優しくて、いつも私と遊んでくれた⋯⋯」

「⋯⋯あ、あぁ、あの人ね。う、うん。元気なんじゃ、ないかな?」

「家変わってなかったよ! 思い出して!」

「あーい、今、今頭の中に、来たよ?」

 えーと、隣の家のイケメンで優しい男⋯⋯。
 誰だぁ誰だぁ。⋯⋯あ、滝宮!

「元気元気。毎日話し掛けて来る人、だった筈」

「なんでそんな朧気なの!」

「てかさぁ、世奈、その人の事が好きなの?」

「へ? い、いや、そんなんじゃないし! ないし!」

 顔を真っ赤にして否定している。こりゃ図星だな。
 しかし、すぐに表情が平常に戻る。

「あの人は、お姉ちゃんが一番だから」

 なにかボソッと言った。私が一番?
 ないない。それだったら、あそこまで怖いと思う筈無いでしょ。
 顔とかも出て来ないし。今なら、大丈夫かな?

「あ、お父さん出て来た」

「え、ここからだと見えないよ?」

「お父さんの魔力の位置が変わったから分かる。行こ。もう外で待ってる」

 そして、お父さんと合流して、裕也さんと紗波さんはすぐに解放されると言われた。
 良かった。本当に、良かった。

 そして、お父さんと世奈が裕也さん達の家に来る事が決まった。
 つまり、一緒に住むのだ。

「お父さん、ありがと」

「こうしないと、世羅はあそこに毎日通うだろ?」

「まぁね」

 これは、私も頑張らないとな。
 まずは常連さんが戻って来る様に頑張って、警察のせいで悪くなった印象回復を目指そう。
 さーて、チャーハン作るぞぉ!

 ◆

「んーおはよう世奈」

「おはようお姉ちゃん」

「おうおう。どうしてそんなにカリカリしてるのかな?」

 ヒノが横長く大きく成った状態で、二人で同じベットに寝ていた。
 体の疲れも癒えた様だ。既に起きて着替えて立っている世奈。
 しかし、何故怒っているのだろうか。

「もう九時だよ! 学校!」

「待て待て。今日は土曜だ。行かない行かない」

「え、お姉ちゃん野球部のマネージャーとか、してないの?」

「なんでしないといけないの?」

「えー」

「えー」

 と言うか、そう言う世奈は部活は無いのだろか?
 聞いたら今日は無いとの事。そして、リビングに向かうと既にお父さんは仕事に出ていた。

「相変わらず休みの日は起きるの遅いね」

「ぐっすり寝ますからね」

 ヒノがあれば起きる時間も調整出来るのさ。
 さて、何時ものように起きて、何時ものような時間なので紗波さんが朝食を用意してくれている。
 当然、昼も食べれる様に量は少ない。

「てかさ、部活も何も休校なのにやれんだろ?」

「えーやるでしょ。壊れたの体育館なんでしょ?」

「いや、瓦礫とか吹き飛んでたし、色々ぶっ壊れてるし、こう言うのは学校と国の問題でもあるし、全部一度綺麗にされて修復されるだろ」

「そこまでするなら、また登校出来るのは火曜日かな?」

「だねーだいたい四日は掛かるらしいし」

 そんな会話を世奈と交わす。今時の工事なんて、大きく無かったり工程が長く無い限り、一日で終わる。

「世羅ちゃんの学校って、あのニュースであった⋯⋯大丈夫だったの!」

「世羅ちゃん?」

 二人が心配そうに聞いて来る。それに、少しだけ笑顔を作って、答えた。
 作るとは言っても、ほぼ無意識だけど。

「全く問題ないですよ!」
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