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物理系魔法少女、ダブルミュータントと戦う

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 巨大な二体のアンデッド。ほんと、俺はつくづくこの二種類によく出会う。

 「ミュータントゾンビにまたスケルトン!?」

 「ルミナスさん。これってどれくらいの確率なんですか?」

 「えっとね⋯⋯一千万分の一らしいよ」

 「最低な運の良さを発揮したっぽいね」

 俺はルミナスさんよりも一歩前に出る。

 ミュータントスケルトンはさっきと同様にクロスボウを装備している。ゾンビは丸腰だ。

 格闘戦って考えると、ゾンビの方が強いか?

 腐っていていまいち分からないが、筋肉もあるだろうしね。

 「ま、やるしかないね」

 「ピンチになったら、全力で逃げるから言ってね!」

 「はい。命は大切に、これは一番重要!」

 俺は駆け出す。対するゾンビも駆け出して来た。

 やっぱり肉弾戦だよな!

 だけどタイマンなんて俺は望んでねぇんだな。

 俺の横を過ぎ去る弾丸がミュータントゾンビの脇腹を抉るが、そこに矢が刺さる。

 味方が攻撃したのかと思ったが、そでは無いと一瞬で証明された。肉が再生していく。

 「さっきリュックを置く時に取っておいたポーション!」

 テッテレー。

 俺が本気で投げれば、球速は軽く二百は出る!

 「オラッ!」

 ゾンビがどう動くか観察すると、足を止めて手のひらを前に出す。

 地面に魔法陣が出現し、土壁が伸びる。

 「「お前魔法使うのかよ!」」

 ルミナスさんとハモった。

 『魔法と物理ができそうなゾンビ⋯⋯アカツキの上位互換やん』
 『筋力で負けたら何であろうと下位互換だって』
 『いきなりのライブでびっくりしたけど、理由は理解した』

 『つか、回復の矢とかミュータントスケルトンにあるのかよ』
 『厄介だな。ぶっちゃけどっちもフィジカル強いし』
 『結局この中で一番速くて力強いのはアカツキなんだよ!』

 土壁で視界を塞ぐなら、そのままぶち破って不意打ちしてやらァ!

 「アカツキさん上だ!」

 「え」

 上を見ると、光の矢を装填したミュータントスケルトンが見下ろして来た。目は無いけど。

 「間に合え!」

 即撃ちのルミナスさんのおかげでその矢が俺に降る事は無かったが、土壁を粉砕しながら大きな手が俺を掴む。

 「くそっ!」

 やべぇ。力が強ぇ。

 本気で踏ん張ってるけど手が開く気配がしない。辛うじて耐えているから、潰される事は無いけど。

 『あれ? アカツキちゃん?』
 『実は力は互角?』
 『均衡しているよね?』

 俺を振りかぶり、ピッチャーミュータントゾンビ、地面に向かって投げた!

 グルンと回転して着地する。土が衝撃で盛り上がる。

 そのせいで射線が切れる。

 「邪魔だ!」

 両拳を強く横に突き出し、障害物をどかした。

 その瞬間にライフルが連射される。

 スケルトンが跳躍の構えをして、ゾンビは再び土壁を作った。

 「しゃらくせぇ!」

 土壁を拳で粉砕し、弾丸を通す。

 スケルトンに弾丸を流せなかったのか、奴は矢の雨を降らす。

 「だからどうした!」

 強く拳を固め、アッパーを放つ。全力でだ。

 「必殺マジカルシリーズ、本気殴り上げマジカルアッパー

 俺の全力のアッパーは矢の雨を粉砕する。

 『えっぐっ』
 『これがアカツキクオリティ』
 『障害は殴って突破だ!』

 『てか、そろそろちゃんとアンデッド特攻の武器用意せいよ』
 『現状、倒せるまで殴り続けるから必要ないんだよ』
 『ぜってー効率悪い。何か理由があるのか?』

 ゾンビが繰り出す攻撃を受け止める。

 「スケルトン! 行かせねぇぞ!」

 ルミナスさんの方に行きそうだったスケルトンを止めるべく、地面を蹴って接近した。

 奴を蹴飛ばす。弾丸が襲いにかかる。

 「ちぃ、先にルミナスさんかっ」

 ゾンビ、てめぇも行こうとするな!

 足を抱き掴み、後ろに引っ張るように力を入れる。

 「うおらっ!」

 『投げた!』
 『マジで?』
 『デタラメすぎる』

 『こんな戦い初めてなんだけど』
 『筋力の評価S?』
 『そうじゃなきゃここまでは無理だろ』

 ゾンビを地面に倒すと、強い振動が全身を襲う。

 「アカツキさん!」

 弾丸をクロスボウで防ぎながら、スケルトンの突き出すような蹴りが露出された俺の横腹に食い込む。

 軽く飛ぶ。

 「アカツキさん大丈夫! 結構飛んだけど!」

 「大丈夫だ。問題ない」

 ゾンビが立ち上がり、俺を睨む。

 火の玉を顕現させて放ち、スケルトンはルミナスさんの方に向かう。

 「今度はサッカーか? 俺は悪質だぜ!」

 火の球体と足を衝突させ、スケルトンに向かって蹴飛ばす。

 こっちを見たスケルトンがなんとなく、「え? なんで?」って顔をしている気がした。

 激しい爆炎がスケルトンを包み込む。そこから出て来る光の矢は俺を捉えている。

 「所詮は矢だろ!」

 そう思ったが、ゾンビが再び俺を掴みやがった。

 これじゃ身動きができない。

 「痛みを感じないってのは厄介だね!」

 ルミナスさんの弾丸を目などに浴びてもなお、ゾンビは俺を離さない。

 これはまずいか?

 「⋯⋯二ヒィ」

 アカツキちゃんは殴るだけが専売特許じゃないぜ?

 俺は自在に身長が変えられるんだよ!

 ニョキと抜け出して、元のサイズに戻って矢を躱す。

 矢は見事にゾンビに命中した。

 「はっはー! どうだ!」

 笑ってやると、ルミナスさんが叫んだ。

 「全然ダメージ受けてない! むしろ回復してる!」

 「回避されるのは折り込み済みってか?」

 いや、そう言う性質の矢なのか。

 アンデッドには回復の効果を与え、それ以外は普通の矢なのか。

 ルミナスさんの叫びは虚しく、俺に拳が叩き落とされる。

 防御なんてしてない。容赦なく地面に埋まった。

 「アカツキさん!」
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