カオル、白魔女になります!

矢野 零時

文字の大きさ
41 / 57
天空魔人グール

17 ドアオープン

しおりを挟む
 開けられたドアから光が入ってきました。
 明るい光はやさしく柔らかく、カオルがいる天空の世界にひろがっていきます。
「カオル、よく頑張ってくれましたね」
 優しい手が伸びてきて、カオルを抱いてくれました。カオルが顔をあげて、抱いてくれている者を見ることができました。
 笑いかけている顔。それは、美の女神ビーナスだったのです。
「ビーナスさん、石化から戻ることができたんですね」
 思わず、カオルは涙で目をうるませてしまいました。
「サラやみなさんのおかげよ。今度は恩返しをしないとね」
 ビーナスは、カオルを立ち上がらせると右手をあげました。すると、その場にいた者たちは、一斉に美の女神ビーナスを見つめ出したのです。

 美の女神を前にしては、ほんとうの美しさや魅力がなんであるのか、誰もが気づき出しました。やがて、グールになんの魅力も感じなくなっていたのです。
 いまはカオルも何も感じずにグールを見つめることができます。

 ただの魔人と化したグールは叫んでいました。
「者ども、こいつらを殺してしまえ」
 兵士たちがビーナスとカオルに襲いかかろうとした時です。

 開かれたドアから、レイモンドとクニッパ国の騎士たちが現れたのでした。レイモンドたちは、ビーナスを守るように前に立ち剣を抜いて兵たちと戦いを始めました。

 カオルはバッグから金貨を出して足元にならべ念をかけると、金貨はグールに向かって飛んで行きました。金貨はグールの額や頬に突き刺さり傷をつけていました。
「こしゃくなまねを」
 怒りに顔を赤くしたグールは歩き出し、直接女の子や男の子をつかんで食べ出したのです。自分の体についた傷や消えた魅力を取り戻すためでした。たしかに、子供を食べるたびに、魔人は元のような魅力が戻り出し顔の傷も消えていきました。

「お前は、魔法を使える女の子だったとはな。そんな子を食べれば、一気に体に力をつけられる」
 グールはニヤリと笑い、カオルを捕まえて食べようと手を伸ばしてきたのです。カオルの危機を察したレイモンドは、カオルのそばに駆けより、神剣をふってグールに切りつけました。

 レイモンドの一撃はグールの肩から胸に大きな切り傷を作り、血を噴き出させたのです。 

 大きな傷をおったグールは、今度はレイモンドに襲いかかっていきました。

 すると、ビーナスはゆっくりと魔人の方に向かって歩き出したのです。ビーナスの歩いた周りにはたくさんの美しい花たちが咲き出しています。
「偽りの仮面をかぶり続けることはできないわ」
 ビーナスがグールに向かって両手をあげると、花たちはグールの上に覆いかぶさっていったのです。
 グールは叫び声をあげながら、もがいていましたが、やがて押しよせる花々の中に消えて行ってしまいました。

 やがてカオルが作ったドアが少し前よりも大きく開かれると、幸せの女神ハッピーが入ってきました。
「おまたせしましたね」
 ハッピーの後ろに車輪のついたワーゴンが犬のようについてきます。そしてワーゴンの上にはたくさんの衣服がつまれていました。

「いつもの姿に戻らなければね」と言って、ハッピーはワーゴンとともに城の中を歩きまわり、近づいてきた男の子と女の子は好きな服を選んでいました。

 豚やカバのように太って大きくなっていた子供も、選んだ服を着ると、普通の子供の体形に戻っていたのです。

 でも、ハッピーが、どうして男の子の服には、半ズボン、チョッキと赤い蝶ネクタイを選んだのか、また女の子の服はフリルがついたチューリップのように膨らんだスカートを置いていたのか、カオルにも分かりませんでした。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

マジカル・ミッション

碧月あめり
児童書・童話
 小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

はるのものがたり

柏木みのり
児童書・童話
春樹(はるき)が突然逝ってしまって一ヶ月。いつも自分を守ってくれていた最愛の兄を亡くした中学二年生の春花(はるか)と親友を亡くした中学三年生の俊(しゅん)は、隣の世界から春樹に来た招待状を受け取る。頼り切っていた兄がいなくなり少しずつ変わっていく春花とそれを見守る俊。学校の日常と『お隣』での様々な出来事の中、二人は気持ちを寄せ合い、春樹を失った悲しみを乗り越えようとする。 「9日間」「春の音が聴こえる」「魔法使いたちへ」と関連してくる物語。 (also @ なろう)

処理中です...