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天空魔人グール
16 グール登場
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宮殿の奥の方から、「どうかしたのかね?」という声が聞こえてきました。
絹布を肩からかけて垂らした白い服を着た男が現れたのでした。
グールです。
背が高くて十頭身。頭の髪は金色でギリシャ神話に出てくる好青年を思わせました。
グールの笑顔を見続けていては、カオルも彼を好きになってしまいます。
まずいと思い、あわててカオルはメガネをかけようとしました。でも、近くにいた女の子にメガネを手で弾き飛ばされてしまいました。
「きみは初めて見る顔だ。最近来た子だね。どこから来たのかな?」
グールは真正面からカオルを見つめてきます。
「ぼくはね。子供たちが好きなんだ」
言っていることを黙って聞いていると、魔人とは思えなくなります。
「でも、あなたは子供を食べるつもりなんでしょう?」と、カオルは必死に敵意を胸の中に作り、言葉で攻撃をしました。
「そうだね。でも、みんなが私に食べられたいと言ってくるんだよ」
グールは笑っています。
「そうだろう。きみたち」
周りの女の子たちは、笑顔でうなずいていました。
「きみも、もしかしたら、ぼくに食べられたいと思っているのじゃないのかな?」
これは、まったくまずい。
カオルはグールと目をあわせないように顔をそむけると一気に走り出し、グールのいる部屋から飛び出しました。
数人の女の子たちは、宮殿から広場に走り出ると、「リュックを背負った侵入者が入り込んでいます。兵士のみなさん、すぐに捕まえてください」と大声で叫んでいました。
すぐに兵士たちは宮殿の中に入ってくると、カオルをみつけて追いかけ出したのです。
逃げまわっていたカオルは、やがて悪魔の像を飾ってある本堂に入って行きました。
本堂の真ん中は長い通路になっていて、通路の左右にいくつもの小部屋に分かれていました。そして、小部屋の出入口は鉄柵でふさがれていたのです。
小部屋をのぞいたカオルは走ることができなくなっていました。
どの小部屋にも、カオルと同じ子供たちが入れられていたからです。
どの部屋の子供も裸で太っていました。下あごに肉がつき、首回りが太くなり、下腹も膨らみ出していたのでした。
その上、体も大きくなりブタやカバと同じ大きさになっている子供たちもいたのです。
「珠代ちゃん、どうして?」と、カオルは珠代を見つけると叫んでいました。
珠代もカバのような大きさになっていたからです。
「珠代ちゃん、分かるでしょう。カオルよ。逃げましょう」
でも、珠代はニコニコして、カオルの言っていることは、まるで分かっていないようです。幼子に戻ってしまったようでした。
柵を開けて珠代を連れ出そうとしました。でも、重くて柵は簡単に動きません。もたもたしている間に、兵士たちがカオルを見つけ、こちらに走ってきました。
しかたがありません。珠代のそばを一時、離れることにしました。おばあさんから頼まれたドアを作って開けるまで、カオルは捕まるわけにはいかないのです。
悪魔の領地でも、風は吹いています。
カオルは風の精に願いをかけてホウキにまたがり、自転車の速さで飛び出しました。飛んだ力で兵士たちをけちらすことができ、通路の端までくることができました。
通路の反対側に、グールが現れ、笑顔を見せたのです。
「きみ。ゆっくりと話をしようじゃないか」
近づいてくる魔人の優しい声が聞こえて出しました。その声を聞いているだけで、グールがやってくるのを待っていたいと思い出してしまうのです。
このままでは、カオルの心もグールに支配されてしまいます。カオルが頭を一度強く左右にふると、一時グールから離れることができました。
道路の端は大理石の壁でできています。
ドアノブをバッグから取り出すと、カオルは力を入れて壁にドアノブをおしつけました。
すると、そこに鮮やかなオレンジ色をしたドアができあがったのです。
カオルは最後の力をふり絞ってドアを引きました。
にぶい音をたてて、ドアは開きました。
ドアを開け終わった後、カオルは崩れるように、そこにうずくまってしまいました。
絹布を肩からかけて垂らした白い服を着た男が現れたのでした。
グールです。
背が高くて十頭身。頭の髪は金色でギリシャ神話に出てくる好青年を思わせました。
グールの笑顔を見続けていては、カオルも彼を好きになってしまいます。
まずいと思い、あわててカオルはメガネをかけようとしました。でも、近くにいた女の子にメガネを手で弾き飛ばされてしまいました。
「きみは初めて見る顔だ。最近来た子だね。どこから来たのかな?」
グールは真正面からカオルを見つめてきます。
「ぼくはね。子供たちが好きなんだ」
言っていることを黙って聞いていると、魔人とは思えなくなります。
「でも、あなたは子供を食べるつもりなんでしょう?」と、カオルは必死に敵意を胸の中に作り、言葉で攻撃をしました。
「そうだね。でも、みんなが私に食べられたいと言ってくるんだよ」
グールは笑っています。
「そうだろう。きみたち」
周りの女の子たちは、笑顔でうなずいていました。
「きみも、もしかしたら、ぼくに食べられたいと思っているのじゃないのかな?」
これは、まったくまずい。
カオルはグールと目をあわせないように顔をそむけると一気に走り出し、グールのいる部屋から飛び出しました。
数人の女の子たちは、宮殿から広場に走り出ると、「リュックを背負った侵入者が入り込んでいます。兵士のみなさん、すぐに捕まえてください」と大声で叫んでいました。
すぐに兵士たちは宮殿の中に入ってくると、カオルをみつけて追いかけ出したのです。
逃げまわっていたカオルは、やがて悪魔の像を飾ってある本堂に入って行きました。
本堂の真ん中は長い通路になっていて、通路の左右にいくつもの小部屋に分かれていました。そして、小部屋の出入口は鉄柵でふさがれていたのです。
小部屋をのぞいたカオルは走ることができなくなっていました。
どの小部屋にも、カオルと同じ子供たちが入れられていたからです。
どの部屋の子供も裸で太っていました。下あごに肉がつき、首回りが太くなり、下腹も膨らみ出していたのでした。
その上、体も大きくなりブタやカバと同じ大きさになっている子供たちもいたのです。
「珠代ちゃん、どうして?」と、カオルは珠代を見つけると叫んでいました。
珠代もカバのような大きさになっていたからです。
「珠代ちゃん、分かるでしょう。カオルよ。逃げましょう」
でも、珠代はニコニコして、カオルの言っていることは、まるで分かっていないようです。幼子に戻ってしまったようでした。
柵を開けて珠代を連れ出そうとしました。でも、重くて柵は簡単に動きません。もたもたしている間に、兵士たちがカオルを見つけ、こちらに走ってきました。
しかたがありません。珠代のそばを一時、離れることにしました。おばあさんから頼まれたドアを作って開けるまで、カオルは捕まるわけにはいかないのです。
悪魔の領地でも、風は吹いています。
カオルは風の精に願いをかけてホウキにまたがり、自転車の速さで飛び出しました。飛んだ力で兵士たちをけちらすことができ、通路の端までくることができました。
通路の反対側に、グールが現れ、笑顔を見せたのです。
「きみ。ゆっくりと話をしようじゃないか」
近づいてくる魔人の優しい声が聞こえて出しました。その声を聞いているだけで、グールがやってくるのを待っていたいと思い出してしまうのです。
このままでは、カオルの心もグールに支配されてしまいます。カオルが頭を一度強く左右にふると、一時グールから離れることができました。
道路の端は大理石の壁でできています。
ドアノブをバッグから取り出すと、カオルは力を入れて壁にドアノブをおしつけました。
すると、そこに鮮やかなオレンジ色をしたドアができあがったのです。
カオルは最後の力をふり絞ってドアを引きました。
にぶい音をたてて、ドアは開きました。
ドアを開け終わった後、カオルは崩れるように、そこにうずくまってしまいました。
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