刑事殺し2

矢野 零時

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 夜の道を俺は歩いていた。だが、それまでとは、まるで違っていた。それは、第3の眼、寄生体の眼が活動を始めたからだ。俺の視界は360度を見廻せる。当事者でない人にどう説明したらいいか、俺にもわからない。例えれば、展望台から、全部を一気に見ている感じなのだ。
 やがて、警視庁本部の建物が見えてきた。腕時計を見て、時間を確かめる。9時、夜の9時だ。本部庁舎の玄関口に警備のために立っている警備員に近付く。俺を見ながら、強張っている警備員に警察手帳を見せてから、建物の中に入る。エレベーターの乗降口に行き、降りてきたエレベーターにのり、十階にまで上っておりた。
 おかしい。通路のどこにも、警備に立っている者がいない。俺は腰に提げていた銃を手にすると、通路を歩き出した。もちろん、後ろを振り返ることはしない。見えるからだ。いくつかのドアなしの事務室があり、そこには、誰もいない。
 通路をさらに左に曲がるとドア付きの部屋がならび、ドアには会議室番号を示す表示板がついていた。
 俺は会議室Aのドアをすばやく開け、ドアから外れた壁に一度体を寄せた。会議室から攻撃をしてくる者はいない。物音さえ聞こえないのだ。俺は会議室の出入口の前に立った。
 会議室には、寝泊りができるベッドが運び込まれていた。そして、ベッドの上に防御隊員の安倍がいた。顔を上に向けていたが、安倍は寝ているのではなかった。死んでいたのだ。胸には穴があき、ベッドのシーツを赤く染めていた。
「化け物め、牙を出したと言うことか」
 俺は額に縦じわをつくり、会議室Aを出て一度通路に立つ、後ろから迫ってくる者はいない。少し歩いて隣の会議室Bに入ってみた。そこにもベッドが置かれ、そこには防御隊員の伊藤が死んでいた。伊藤はベッドにはうつぶせに横たわっていた。背中から撃たれていたのだ。
 俺は背中に汗をかき出していた。だが、リュックの中には肉が入っている。その冷たさで、すぐに汗は熱をうばわれ、只の水滴にかわり、俺の背中にはりついていった。会議室Bから出るとふたたび通路を歩きだした。
 突き当りをまがり、南側の通路に出た時だった。
 神野と落合隊長が向かい合っていたのだ。神野が俺に声をかけてきた。
「片倉、撃て。SRが落合に化けているんだ」
 だが、すぐに落合隊長が叫んだ。
「片倉、だまされるな。SRは神野に化けているんだぞ」
 俺は動くことができなかった。どちらがSRか? 判らなかったからだ。
 俺がためらっている間に、二人は打ち合いを始めた。俺は流れ弾に当たらないように、すばやく伏せた。
 落合隊長が放った散弾は神野の体じゅうに当たっていたが、彼は平然としていた。だが、神野が抱えていたライフルから放たれた銃弾は落合隊長の頭を吹き飛ばしていた。飛ばされた頭は、サッカーボールのように転がって、おれの前でとまった。この威力は460ウェザビーマグナム弾に違いない。首のとれた落合の体からあふれでた血がバケツでぶちまけたように通路の床にひろがっていく。
 俺は、銃を握り直し、すばやく立ち上がった。
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