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第19話・哀しみ本線日本海

【哀しみ本線日本海】

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時は、1994年10月7日の夜8時半頃であった。

ところ変わって、大阪キタ曽根崎新地《そねざきしんち》にあるテナントビルの一階のエントランスホールにて…

22の私は、ホールに設置されているベンチに座って酒をのんでいた。

カネテツ(デリカフーヅ)のちくわとすまき(かまぼこ)を肴《さかな》にワンカップ大関をのんでいる私は、ものすごく悲しい表情を浮かべていた。

通りのスピーカーから森昌子さんの歌で『哀しみ本線日本海』が流れていた。

10月1日に大阪池田の零細工場《こうば》を勝手に放棄《ほか》した…

その後、大阪市内のあちらこちらを逃げ回った。

その末に、私は心身ともにヒヘイした。

サイアクだ…

お先真っ暗や…

日本《こななくに》に来るのじゃなかった…

生まれ育った国に帰りたい…

(生みの)ママに会いたい…

私は、そうつぶやきながら酒をのんでいた。

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

10月8日の朝7時過ぎであった。

私は、JR大阪駅から新潟行きの特急雷鳥《らいちょう》に乗って旅に出た。

列車は、60分後に敦賀駅に到着した。

ショルダーバッグを持って列車を降りた私は、改札を通って駅の外へ出た。

(ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン…)

ところ変わって、気比《けひ》の松原海水浴場にて…

私は、ぼんやりとした表情で海を見つめながら森昌子さんの歌で『哀しみ本線日本海』を歌っていた。

「うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…」

震える声でワンコーラスを歌ったあと、私は声を震わせながら泣いた。

「うううううううううううううううううう…ママに会いたい…ママに会いたい…ううううううううううううううううううううううううううう…」

生まれた国に帰りたい…

せやけど…

どこにあるのか分からない…

親きょうだいがおらん…

親類《みうち》もいてへん…

これから先…

どないして生きて行けばいいのか…

つらい(泣)
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