幼女のお股がツルツルなので徳川幕府は滅亡するらしい

マルシラガ

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第三幕 子猫はもっと遊びたい

握り飯

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「おおーーーっ!」

 杵柄神社の境内で百合丸と霧が声を揃えて歓声を上げた。

「本当に貰って良いのでござるか? いや、ダメと言われても今さら困るが」

「まだ温かい、なのー! 良い匂いがする、なのー!」

「大げさだね。ただの握り飯だよ」

 愛姫たちと待ち合わせした青太郎が「今日の昼飯にと思って店の者に用意してもらったんだ。良かったら貰っておくれ」と、それぞれに竹皮で包んだ握り飯を渡したら想像以上の好反応が返ってきたので青太郎は嬉しいやら驚くやらで目をパチパチと忙しく瞬かせた。

 二人ほどの大はしゃぎはしていない愛姫も「これは有り難い。遠慮のぉ頂くぞ」嬉しそうに微笑んでいる。

「おや、あっちの二人に比べたらお愛ちゃんの反応は普通だね」

「妾もあの二人のように体全体で喜んだ方が良かったかの?」

「いいや、あそこまで大げさなのは私もびっくりだけどさ。同じ猫柳の家臣なのに違うんだなって」

「ふむ、そういうことか。妾はこの家臣団に入って日が浅いからの。あと三日もあのような食事が続けば妾とて同じようになるやもしれぬが。……ふふふっ」

 愛姫は昨日の食事風景を思い出してクスクスと笑った。

「しかし、これは嬉しい誤算でござるな。今日は北町奉行の天野殿のところで何か馳走になろうと思っておったが、これがあるならそれはまた今度にしよう。あまり頻繁に行くと迷惑に思われてしまうでござるからな」

「うん。たまに行くから可愛がられるの。そこの見極めが重要、なの」

「やれやれ、みんなで飯をたかりに行くつもりじゃったのか。それはそれで興味深いがの」

「面白いね。まるで餌場を巡回して歩くノラ猫のようだ」

「ノラ猫……だと?」

 百合丸がキュッと目を細めて青太郎を睨む。

「あ、別に悪く言ったつもりは――」

 青太郎が慌てて取り繕おうとしたが、

「良い目の付け所でござる! 拙者たちがこれから探すのはノラ猫。ならば当てずっぽうに歩き回るよりも、餌がもらえそうなところを巡って探したほうが見つかりやすいのは道理! たとえ見つけられなくても、そういうところを順々に当たって行けば目当ての猫を見かけたという者がいるかもしれぬ!」

「おー。ウリ丸珍しく良い思案、なの」

「珍しくなんて言うな……ん? どうした青太郎」

 百合丸は唖然としている青太郎を見て頭を傾けた。

「あ、いや……なんていうか……」

 悪口と取られかねない失言をしたのに、それを言われた当人が気付いていない。なので、どう説明したものやらと青太郎が困り果てていると、愛姫が苦笑しながら助け舟を出してくれた。

「気にするな百合丸。青太郎はおぬしらの勢いに話を合わせられなかっただけじゃ。そのうち自然と呼吸も合うじゃろ。な?」

「あ、う、うん。そうなんだ、話に勢いがあり過ぎてあいの手を入れ損ねたんだよ」

「なるほど、そうでござったか」

「青太郎。ちゃんと霧たちについてこれるように頑張る、なの」

 ニッと男前に笑いかける百合丸。

 一番幼いのになぜか上から目線で努力を促す霧。

 そして何もかもを見通して鷹揚に頷いている愛姫。

 青太郎は三者三様の少女たち見比べて思わずプッと噴き出した。

「あんたらは個性が際立っていて楽しいねぇ。みんなそれぞれに違った光で輝く七宝のようだ」

「おや、今度は良い例え方をしたのう。その調子じゃ」

 愛姫がまるで稽古事の師匠のように扇子の先でポンポンと青太郎の腕を打って柔らかく微笑む。

「あんたらどう見ても私より年下なのに、誰一人として私を年上扱いをする気はないようだね」

「そこは持って生まれた格の違いというものじゃろう。誰の目から見てもおぬしより妾たちの方が格上じゃ」

 言われて青太郎は三人の少女たちを順に見回した。そして溜息を一つ。

「私が、というより、あんたらに勝てそうな子はそうそう居ないよ」

「ま、そうじゃろうな」

 愛姫は微塵も謙遜する様子もなく言い切った。その横で百合丸と霧が当たり前だと言わんばかりに頷いている。

 青太郎はまだこの子らの力関係の上下をいまいち掴み切れていないけれど、この中での序列は自分が一番の最下位だということだけははっきりわかった。

「そんなことより早く猫探し始める、なの。やらなきゃいけないことは一つじゃない、なの」

「おぉ、そうでござる。猫探しだけじゃなくて、殿の命が懸かっているのをうっかり忘れるところでござった。先に梵貞寺に寄ってみるでござるよ」

 百合丸の提案に二人が頷いて走り出したのを青太郎は慌てて追いかけた。

「ええっ? 何だい今の話!? ひどく物騒な言葉が混じっていたような気がするよ!?」
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