ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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触発、魔王の谷

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 ポメリアから届くそれをドゥケが感じ取り、さらにそれを額を合わせることでリデムが読み取り、転移魔法に必要な転移先の位置を特定した。
 整列した団員達がかあっとまばゆい光に包まれると、その次の瞬間には、レドネ渓谷のそれなんて目じゃないくらい恐ろしげな高い崖に囲まれた城砦が目の前にあった。
 その城砦は、表面が何やらうぞうぞと蠢いているように見える。いや、実際に蠢いてるんだ。無数の魔族が取りついて。
 私達が転移した場所は、幸か不幸か魔族の姿が近くにはなかった。いきなり敵のど真ん中に現れて即乱戦とはならなかったことで、大きな岩の陰に身を潜め、私達は体制を整えることができた。
「ポメリアが比較的安全な場所を示してくれたんだな」
 ドゥケが唸るように言葉を漏らす。そして、
「近付いたからはっきり分かる。ポメリアはあの城砦の右端の塔に囚われてる」
 と、指差した。するとアリスリスも、
「分かる。リリナもそこにいる」
 って頷いた。
 ドゥケが言う。
「今さら作戦もへったくれもない。俺とアリスリスが正面突破を図る。そして敵を引き付けてる間にみんなはリリナとポメリアの救出を頼む。小隊に分かれて行動して、必ずそれぞれヒールが使える者を同行させてくれ。俺のキスによる簡易版の加護は、致命傷を一回防ぐことができるだけだ。なるべく頼らないように。
 命を捨てる覚悟では来てくれただろうが、俺からのお願いは一つ。
『誰も死ぬな』
 だ。俺は君らのことが好きだ。愛してる。だから死なれたら困る。命を投げ出しながらも、粗末にはするな。生きて帰ったらたっぷりサービスしてやる。リリナとポメリアを助け出したらとにかく逃げろ。今回は奪還だけが目的だ。魔王を倒すのは次の機会を待つ」
「それは何故?」
 ドゥケの言葉にライアーネ様が問い掛け、彼が答える。
「ポメリアとリリナの力が弱まってる。一旦退いて回復してからじゃないとたぶん魔王を倒しきれない。正直、アリスリスとリリナもいるからどさくさで一気にケリをつけたいとも思ったが、どうやら無理のようだ」
 そこにアリスリスも加わる。
「リリナの力が弱まってるってなんだ? 危ないのか?」
 怒ったみたいな問い掛けにも、ドゥケは冷静だった。
「いや、命までは大丈夫なようだが、とにかく力がどこかに吸い取られてるかのように弱ってるんだ。魔王が何かしたのかもしれない。リリナやポメリアをすぐに殺さないのは、彼女らの力を利用したかったからだろうな」
 彼の言うことは私にはピンとこなかったけど、どうやら今回で最終決戦にはならないようだということだけは分かった。
「とにかく、俺とアリスリスが正面から突っ込む。リデムは後方から支援攻撃を、リデムの護衛に何人かを残して、後はさっきも言った通りにリリナとポメリアの救出だ」

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