ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

文字の大きさ
60 / 105

必ず

しおりを挟む
 神妖精しんようせいの巫女を取り戻すことは、魔王を倒すのには絶対に必要なことだった。何故なら、魔王を倒せるのは神妖精の巫女だけだから。勇者はあくまで、その時まで彼女達を守ることが役目だった。命を投げ出してでも。
 国王陛下や軍の上層部はそのことを知っていたから、ポメリアとリリナの奪還作戦についてはすぐさま承認が下りた。そうするしかないから。
 でもそれは……
「でもこれは、それこそ敵の懐に飛び込むのと同じだ。恐らく生きて帰れる保証はそれこそない。だから今回も、希望者だけを募る。抜けたい者は申し出てくれ。ここで抜けても恥ではない。もし我々が倒れた時には、次を担ってくれる者として生き延びて欲しい!」
 ライアーネ様が台の上に立ち、そう告げた。だけど今回は、誰一人辞退しなかった。前回の遊撃隊としての任を与えられた時に、皆、覚悟は決めてたらしかった。
 もちろん私も、引き下がるつもりなんて毛頭ない。
 しかも、アリスリスまでがそこに加わっていた。本当はこんなことに巻き込みたくなかったけど、彼女の決意の強さは私も感じてる。それを曲げることは無理だって分かる。
「アリスリス…! 必ずリリナとポメリアを助けようね」
 私が声を掛けると、彼女は「ふん!」と鼻を鳴らしながら、
「当たり前だ! 私はそのためにここにいるんだ…!」
 と、鋼のような意思を溢れさせていた。
 なんだか、彼女がたった十一歳でも勇者に選ばれた理由が分かった気がした。この胆力は、歴戦の騎士でもそうそう到達できない境地という気がする。
 彼女には青菫あおすみれ騎士団団員用の鎧の中で最も小さいものが支給された。それでもやっぱりぶかぶかだけど、そのぶかぶかな鎧でも覆いきれないほどの力が溢れてるようにも見えた。
 それぞれが身支度を済ませ、遺書をしたためてた者も多く、私もその一人だった。私を送り出してくれた母や祖父母に対する感謝と、務めを果たしたことで命を落としたなら何一つ悔やむことはないと伝えるためのものだった。
 そしていよいよ、ポメリアとリリナの奪還へと向かう。
 整列した団員達は皆、鋼の意志を固めた面持ちをしてた。たぶん私もそうだったんだろうな。
 ライアーネ様もキッと眉を引き締めて、
「では、行くぞ!」



 不安や恐怖がないと言ったら嘘になる。だけどそれ以上に私は、確かめたいこともあった。カッセルのことだ。彼がどうして人間を裏切ったのか。彼が言っていたことの意味が何なのか、もしかしたらそれも確かめられるかもしれないという想いも、私にはあった。
 だけどもちろん、カッセルが私達の前に立ち塞がるなら、容赦をしないという覚悟も持ちつつだけど。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

処理中です...