ミコナとかぷせるあにまるず

せんのあすむ

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どれがあの時の亀かな

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貯水槽の中に亀が落ちるのは滅多にないことですけど、実はこれまでにも猫や犬が落ちることはあったみたいです。だから本当は、清掃時にはネットを掛けた上で空気を送り込むために送風機をセットするという形になっているんですけど、横着してネットを掛けない担当者がいるらしいですね。

それか、ネットを外した後は再度中を確認した上ですぐに閉めなきゃいけないのを、開けっ放しにしていたり。

それについて内内で処理してしまうので、これまで表沙汰にならなかった。

そして今回も、亀が貯水槽の中にいたということで、前回にミコナの家の貯水槽のメンテナンスを担当した人とは別の人が、今回、やってきていました。

だけどミコナ達はそこまでは気付かずに、亀が助かったことに安心していたんです。

フカも、亀が落ちた原因を推測はしましたけど、そこから先までは考えが至らずに、

「……よかったな……」

メンテナンスの人達が、亀が住んでいたはずの池に連れていってくれたのを見送りながら呟いたのでした。



こうしてこの世には残念なこともありつつ、でもちゃんと幸せだってありつつ、出来上がっています。

「どれがあの時の亀かな」

あの亀が放されたという池の近くまで来て、ミコナはところどころに姿を見せている亀を眺めました。

「さすがに亀の区別まではつかねえよ」

一番傍で亀を見ていたフカが言います。確かにどれもこれも同じに見えてしまって。それに今、見えるところにいるとも限りませんし。

「けどまあ、元の住処に戻れたんなら良しとしよう」

「そうやな。ワイらにはそう考えるしかできへんし」

「そうだね」

と、ウルとティーさんとガーがそれぞれ口にします。オウは、

「メンドクサイ。なぜ俺がそんなことをせねばならんのだ?」

とか言って家に残りましたが。

確かに、こうして池に来てもはっきりとは確認できませんでしたので、オウの方が正しかったのかもしれませんね。

「よし、じゃあ買い物に行くぞ!」

亀騒動も落ち着いたその日、オウはいつものようにカリナにそう声を掛けました。オウとカリナとドンキーでの買い物は、すっかり習慣になっています。

「はっはっは! 進め! 進め!」

オウはドンキーの上に乗って、それこそ王様気分ではしゃいでいます。ルリアの魂が分離してからはかなり幼い感じになりましたけど、王様っぽい振る舞いはそのままでした。

すると、信号待ちで立ち止まっていた時、

「む?」

オウは自分をじっと見つめる視線に気付きました。それは、母親らしい女の人に連れられた、三歳くらいの女の子でした。女の子は、

「ママ、変な鳥さん」

オウを指差しながら母親に向かってそう言います。

「え? あ、ごめんなさいね」

母親は慌ててカリナに向かって頭を下げます。カリナも、

「いえ、大丈夫ですから」

頭を下げました。すると、オウが、

「俺は鳥ではない、オウだ!」

やっぱりふんぞり返って言ったのでした。

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