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光
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「エリー様…男子の前でああいう行為はお控え下さい」
「ごめんなさい…」
先ほど、二人の前で愛しのベアトリーチェのおっぱいを可愛がっていた私は、優しくエスコートされてジェイクの部屋に連れて行かれた。
そして…あまり表情には出ていないものの、少し頬を赤くしたジェイクにそう言われたのだ。
確かに、気を許した者同士の空間だが…異性がいる中で淑女としては取ってはいけない行動だった。
しっかり者のジェイクが見逃すはずがない。
…予想以上に困らせてしまった、と反省する。
だけど…わざわざ場所を変えて、静かに諭してくれる彼の優しさに胸がときめく。
「でも…ふざけていた訳ではないのよ…?」
「わかっていますよ。ビーチェを、純粋に可愛がってくれたのですよね?」
「うんっ…」
穏やかに微笑み、私を理解してくれるジェイク。
決めつけないで、ちゃんと話を聞いてくれる…私をちゃんと見てくれる愛しい人……好き、大好き。
つい、ジェイクへの思いが高ぶってしまう私だが…次の言葉でハッとして、ようやくある事に気が付いた。
「ですが、俺はとにかく…ガイアからしたらかなり刺激の強い光景だったと思います」
「っ、はい…」
何故、今まで思い当たらなかったのか…。
兄妹のジェイクは気まずいだけだが…ガイアは心からベアトリーチェを愛している年頃の男性。
という事は…彼の目にベアトリーチェの様子は、かなり性的に映っただろう。
や、やってしまった…!
自分の行動がどんな影響を及ぼしたのか理解すると、途端に顔が熱くなって鼓動が速くなった。
「本当に、ごめんなさいっ…気を付けます…」
「ふふっ…わかって頂けて良かったです」
ジェイクは真っ赤な私を見ると、愛しそうに目を細めて静かにクスッと笑った。
「…可愛い」
「っ!じぇ、じぇいく…」
小さく呟かれた声色が…酷く甘く…自分が優しいものに包まれてでろでろに甘やかされていると実感させられた。
ジェイクはいつも、たっぷりの愛情と思いやりで、私を癒し、満たし、守ってくれている。
それだけではなく…駄目な事はしっかり駄目と優しく教えてくれて、私の事を考えて行動してくれている。
ーーーグレンヴィル兄妹は、私の“光”だった。
ローレンスの息子に無理矢理遊びに付き合わされ、強く引っ張られた腕は凄く痛かった。
初対面でいきなり、愛称で呼び捨てられるのも凄く嫌だった。
だけど、私を助けてくれる人はいなかった。
抵抗したり助けを求めたりしても、周りの使用人たちは微笑ましそうに『王女殿下と一緒で嬉しいのですよ』などと言うだけ。
誰も…私の悲鳴に気付いてくれなかった。
ローレンスの息子の件に限らず、家庭教師や役職付きの使用人たちは、いつもそうだった。
ルナフィオーレ王国の唯一の王女だからか…必要以上に我慢を強いられ、理不尽な事に意見すれば心が狭く、器量が足りないと言われる。
なのに、助けて欲しい時や悲しい事があった時…そんな時だけ都合良く『子供だから』と軽くあっさり流されてしまう。
こうだと決めつけられて、私の意見を聞いてくれない…私を理解しようとしてくれなかった。
私をちゃんと見てくれる母と、薄々感じ取ってくれていた兄弟たちがそれとなく守ってくれていた。
が…忙しくてたまにしか会えない母と、それぞれスケジュールが違うためなかなか一緒にはいれない兄弟たち…父なんて気付く以前に忙し過ぎて会えない…私は一人で耐える時間の方がずっと多かった。
ローレンスの息子と一緒にいるのは本当に苦痛で、初対面でも嫌なものは嫌だった。
それでも、私の気持ちは声にしても周りに届かず…騒ぎすぎれば、逆に狭量で我が儘な悪者にされてしまう。
これもきっと耐えるしかない。
そう諦めていたら…小さな女の子が、私の心の悲鳴に気付いて駆け付けてくれた。
当時八歳のベアトリーチェだ。
…家族以外で、初めて私をちゃんと見てくれた綺麗で可愛い女の子。
さらりと揺れるプラチナブロンドをキラキラと輝かせながら登場した彼女を見て、一瞬…天使様が舞い降りたのかと思った。
微笑みを浮かべながらやんわりと言っていたが、深みのある碧眼から毅然とした態度を感じ、私は酷く安心したのを覚えている。
ローレンスの息子は、ベアトリーチェの正論に対して逆上したが、彼女は泣きながらも諦めずに、ジェイクを呼んで助けてくれた。
私は、すぐにベアトリーチェが大好きになった。
それからというもの…ベアトリーチェは、私の穴だらけになった心を安らぎで満たしてくれた。
もちろん、グレンヴィル兄妹はどちらも同じくらい愛しい存在だが…ベアトリーチェは特別だった。
ーーー私の、可愛い天使様。
ベアトリーチェは、心地のよい愛情を向けてくれていて、いつも包み込むような暖かな微笑みを浮かべて、私の全部を照らしてくれていた。
彼女は、私からの気持ちを真摯に受け止めて応えてくれる。
私の事をその目で見極めて、嘘や二心もなく、純粋にまっすぐ、私を思ってくれている。
普段は謙虚なのに…いざというときは勇敢で、可愛くて、綺麗で、強くて賢い。
それからおっぱいが大好きで……甘えん坊のフリをした甘やかし上手。
ベアトリーチェは、時々、年下の小さな女の子とは思えない、お姉さんみたいに感じる時があった。
だから…私はベアトリーチェを全力で甘やかして、いつも甘えている。
好き……出来ることなら、私とジェイクとベアトリーチェの三人で結婚したいくらい大好き。
ベアトリーチェのどんな部分も、どんな表情も、全て愛しい。
それはベアトリーチェだけではなく、ジェイクも一緒だ。
グレンヴィル兄妹になら、どんな事をされても良いし、どんな面を持っていても幻滅なんて絶対しない。
「………………!」
ベアトリーチェの事を考えていて…ふと、思う。
彼女は、八歳の時から私のおっぱいが大好きだけど…ジェイクは……私のおっぱい…好きなのかな?
ジェイクも…大好きだったらいいなぁ…。
「……ね、ジェイク…」
「はい」
「ジェイクは…その、ね…?私のおっぱい…どう思う…?ビーチェは大好きって思ってくれているのだけど…」
「……………………………………………………………………………………はい?」
「も、もし、大好きって思ってくれているなら…ビーチェみたいにしてくれて……あ、あれ…?ジェイク…?どうしたの…?」
ジェイクは微笑みを浮かべながら、何だかカチコチと固い雰囲気…というか、動作がぎこちなく見えた。
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