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準備
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(※ガールズラブ要素を含む性的描写があります。苦手な方、嫌悪感のある方はご注意下さい)
もうすぐ、十五歳になったエリザベス王女が、初めて社交の場に足を踏み入れる日がやってくる。
お城では舞踏会が開催され、エリザベス王女の初のお披露目舞台に、娘LOVEの王妃の気合いはMAXに達しているらしい。
エリザベス王女のために最高の装飾を城内に施し、招待客を厳選し、警備はいつもの三倍以上厳重に…等、誰も止める事の出来ない気迫で指示が飛んだとか…。
入場者は厳しくチェックされ、“招待客の連れ”として来た者は入る事が出来ないだろう。
さすが、国の賢母…かなり用心深い。
これなら、シリルが変装をして“誰かの連れ”として舞踏会に紛れ込む事は不可能…が、安心は出来ない。
…もしシリルが、その招待客になりすましてきたら?
常識から逸脱した行動を取るシリルならあり得る…彼なら一切の悪気なしに、名案だと言わんばかりにやらかす。
無自覚で下位の貴族を脅し、まるで自分こそが正義というように振る舞う姿が容易に想像できる。
招待客から招待状を奪って身分を偽った場合…入場時にシリルだとわからないような変装をされたら厄介だ。
他人になりすましたシリルは、こっそり接触を試みようとするだろう。
エリザベス王女は、シリルに“会うだけ”でも不幸になりかねない…。
完全に非がシリルにあるのに、何故か正しい事を言ってもエリザベス王女に非がある展開になる恐れがあるし…社交の場で空気の読めない事を言って、エリザベス王女の立場を悪くするかもしれない…。
十三歳の私は、そばで彼女を守る事が出来ないーーーーーーーーーだがっ…!!
私が、何の対策もせずに五年間を過ごす訳がない!
この五年間…エリザベス王女と兄が婚約関係にあり、付け入る隙がないくらいラブラブだというアピールをお城の“ある場所”でやってもらった。
その“ある場所”とは…王族居住区とは別の、貴族の行き来が多い廊下だ。
二人には、その廊下から見える“中庭”で“午前中”にイチャついてもらい、そこを通れば必ず目に入るようにした。
もちろん…警備を厳重にして。
そこを通った多くの貴族たちは、二人が相思相愛でよそ見などあり得ない強固な関係だと認識するだろう。
これで、万が一…シリルがエリザベス王女にアプローチを仕掛けてきても、彼女が悪のアバズレ扱いされる事はない…!
狙いはそれだけではない。
お城に出入り出来る貴族ともなれば、国王から信頼される人格を持ち、能力を認められた有力者たち…それなりの発言力を持っている。
しかも、有力者たちは王家への忠誠心が高く、グレンヴィル公爵家の力を良く理解している者たちばかりだ。
更に時間帯を“午前中”に限定し、真面目で勤勉な者たちの目に止まるように狙いもつけた。
性格は行動に表れるもの……ここは、日本人の作家が書いた中世風ファンタジー小説の世界。
だからか、行動パターンが日本人っぽいんだよね…。
さて…二人の絆を目の当たりにしてきた勤勉な有力者たちと、根も葉もない事を信じる浅ましい者たち…世間はどちらを相手にするだろうか?
エリザベス王女は、お城では勉強をがっつりするか、私や兄を招待して自由時間を過ごすかの二択。
お出掛けもグレンヴィル公爵邸にしか行かない。
こじつけて『浮気…!色目を使っていた…!』と言うのも難しい。
物語でハーレム要員たちが動き出したのは、エリザベス王女とシリルの婚約話が浮上してから。
シリルにすでにハーレム要員がいて、嫉妬していたとしても行動には移さないだろう。
エリザベス王女には相思相愛の婚約者がいて、シリルとの関係性は無いに等しいのだから。
シリルが場を引っ掻き回す、お得意の巻き込み事故が起こるかどうかが怖い部分だけど…これは五年前の木登り強制事件のように先手必勝で阻止しするしかない。
ーーーそう、何かをやらかす前に潰す。
兄や、この舞踏会で社交デビューするガイアに『万が一こんな事が起こったら…』とお願いした。
奴の言い分を潰し、話す隙を与えなくらい正論でまくし立て、すぐに衛兵を呼んで欲しい。
『何故、十四歳の社交デビュー前のシリルが、身分を偽ってここにいるのか?』…と。
例えシリルが戯れ言を言っていても、この一言で周りの興味はシリルだけに向くはずだ。
奴の言い分は聞かなくていい、きっと意味がない。
だったら聞く意味なんてない。
いくらか目星を付けて、思考を巡らせてみたが、良い対策が浮かばなかった。
そこで私は、予測不可能な事を難しく考え込むのではなく、シンプルに考えてみようと思った。
そこで行き着いた先が『力業が必要な時もある』だ。
ただ…物語のスペンサー公爵夫人がシリルのせいで死亡した例があるので、接近は避けて、一定の距離を保ってもらって。
今、一番怖いのは、エリザベス王女の大事な人がシリルのせいで死亡する事。
兄や…王妃が…。
兄には、シリルに関わったり、接近したりすると、五年前のエリザベス王女のように怪我するかもしれない…もしかしたら死亡者が出るかも…と、シリルが訪問突撃をしてくる度、必死に伝えたきた。
シリルは軽率で短慮な行動が多く、そのせいで大きな怪我を繰り返しているというのは有名な噂だ。
五年間の木登り強制暴力事件からシリルを危険視していた兄は、その噂の事もあり、グレンヴィル公爵家の影…隠密部隊を密かに飛ばしてシリルの動向を探ってくれた。
そして、内容は教えてくれなかったが…危険性の裏付けが取れたらしく、私の言った通りに行動した方が良いと判断してくれた。
…さすが、兄。
妹が言った事を鵜呑みにせず、冷静に考えて、きちんと材料を揃えてから判断してくれる。
王妃の許可を取り、何名か隠密部隊を配置すると言っていた。
お兄ちゃん…最高かっ…!!
お城の会場には警備がそこらじゅうにいるし、視野が広く勘のいい兄は、シリルなんかに後おくれは取らない。
兄は、ずーーっとべったりエスコートしてそばを離れないと、エリザベス王女の手を優しく握って言っていた。
まるで…愛の言葉を囁くように、素晴らしい語彙力で、天然超イケメンパワーを炸裂させていた。…私もいる目の前で。
エリザベス王女には、この舞踏会を何の心配もなく心から楽しんでもらうため、もしものシリル対策の事は話していない。
何にも知らないエリザベス王女はストレートに言葉を受け取り、ふしゅううううぅ…と、顔から湯気が出そうなくらい真っ赤になってしまって…それはそれは可愛くて最高だった。
兄の言葉が相当嬉しかったのか…エリザベス王女は気持ちが高まり、兄に抱きついてキスしていた。
口に。
長く。
深く。
その後も気持ちが高まり続けていたエリザベス王女は、椅子に膝立ちすると、兄の顔を特盛ロイヤルおっぱいに抱え込み、ぎゅうううううぅ…と夢中で抱き締めていた。
次に『ジェイク…私のジェイク…♡好き、大好き♡』とうわごとのように囁くでろでろの甘い声と、可愛らしいリップ音も聞こえた。
兄は耳まで赤く染めて焦っていたが、暫くすると大人しく身を委ねていた。
わかるよ、お兄ちゃん…そのおっぱい、しゅごいよね…ふわふわで、あったかくて、いい匂いで、思考がとろとろになって、何も考えられなくなるよね…。
私はその尊い光景を目に焼き付け、心のメモリーソフトに永久保存した。
それから、エリザベス王女とガイアの関係だが…シリルとは違い、ガイアへの心配は全くない。
物語では最悪な関係だった二人だが、仲はとても良好で、例え二人きりになっても大丈夫。
この同い年組は、良く私を話題にして話している。
長椅子に座り、私を両側からぴったりサンドして、両側から私の手を握って。
そして兄は、エリザベス王女の隣で微笑ましそうに眺めている。
このパターンが、四人でいる時のお約束になった。
ーーー今のように。私の部屋で。
「ビーチェはいつまでも小さくて可愛い…」
「わかります…最高に可愛いですよね…」
「うん、可愛い…世界で一番可愛い…」
何だ、この空間は…。
たまにどちらかが呟いた言葉に反応し、内容がほぼ無いやり取りを小出しで続けている…。
ゆったりと静かな空間に、間隔を空けて。
………ついに、『可愛い』の前に『世界で一番』が付くようになってしまった。訂正したい…世界で一番可愛いのはエリザベス王女だとっ…!!
「ビーチェ、良かったね」
兄が静かに微笑みながら、ほのぼのと言ってきた。
推しにサンドさせるのは幸せだが…過大評価が過ぎて戸惑ってしまう…。
それにしても…両側からめちゃくちゃいい匂いがする…。
「大きくなったら抱っこ出来なくなっちゃうと思ったけど…まだ余裕で出来ちゃうね♡」
「んっ…っ…」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…と、こめかみにキスをしてくれながら、頭を優しく撫でてくれた。
しゅき…。
抱っこ大好きなエリザベス王女は、私が同年代の子供に比べると小柄な事に喜んでくれている。
小さいだけで、体つきは特別華奢という訳ではない。
ちゃんと成長しているのだけど…あれ、おかしいな、毎日牛乳を飲んでいるはずなのに。
女性らしい…その、出るところは出て来ているのに…おっぱいに身長の分の栄養を持っていかれているとか…?
え…このままだと、バランス怖いことにならない…?
牛乳、止めた方がいい…?
兄は背が高く、引き締まった体に成長したのに。
十六歳で成熟した大人のような雰囲気を纏い、知性的な色気を、眠そうな表情がいっそう引き立てている。
要するに、最高にカッコいい、クールなイケメンに成長していた。
同じDNAのはずなのに、何故こんなにも差がある…?
「ねっ、ガイア?」
「はい、エリザベス様。どんなビーチェも素敵ですけど、この小柄さはビーチェの魅力の一つですからね」
でも…エリザベス王女とガイアが気に入ってくれているなら、小さくてもいいや。
好きなだけ抱っこして、好きなだけ好きなところを触って欲しい。
「うんうんっ♡」
「ですが…成長が遅れていないか少し心配です」
ガイアが確かめるように太ももを触り、さりげなく撫でてくれながら言ってきた。
…ガイアは太ももが好きなのかな?
じゃあ、もっとむっちりするようにお肉食べないと!
ちゃんと食べているか心配させてしまったし、もう少したんぱく質の量を増やした方が良いかもしれない…!
「ふふっ、そんな事ないよね?ビーチェ♡ここはたーっぷり栄養を摂っていい子に育ってるもんねっ♡」
ガイアの事に気を取られていると、いつの間にか、エリザベス王女の両手が背中から脇の下に入れられていた。
「ひあっ…あっ…エリーさま…」
そして、そのまま胸の下に移動し、服の上から成長中のおっぱいを、ぶるんっ…と下乳から持ち上げられた。
たぷたぷ優しく揺らして、愛おしそうに可愛がってくれている。
「いい子いい子♡ちゃんとブラジャー出来て偉いねー♡」
「ひゃんっ…あっ…んっ、はぁ…」
仕上げに、揉み揉みされながら、人差し指で的確に何度も先っぽを弾かれてたくさん褒めてもらった…嬉しい…。
兄とガイアの前では気まずくて、凄く恥ずかしいけど…エリザベス王女がしたいならいっぱいやってくれていいからね…♡
二人にここまで気を許して、エリザベス王女がかなりリラックスしている証拠だし。
とても良い事だ。
「………………………エ リ ー 様 ?少し、お話があります」
「はぁい…♡怒らないで、ジェイク」
「…怒っていませんよ。ガイア、ビーチェを頼んだよ」
「っ…っ……はい、義兄上」
…だけど兄は、穏やかだが、少し固い表情で、エリザベス王女を優しくエスコートすると、部屋の外に出ていった。
ポカン…として、思わずガイアを見上げると、頬を赤く染め、視線をそらし、口元を手の甲で抑えていた。
わっ…これはもしかして、エリザベス王女におっぱいを可愛がられているのを見て、ドキドキしてくれたのかな…?
そうだったら…嬉しいなぁ…。
ーーー静かに恥じらう姿が、何とも尊い…。
ガイアも成長して、更に魅力的になった。
前世で言う、モデルのようにスタイルが良く、スラッと細身に見えるが、男性らしい体つきになってきている。
顔つきもキリッとシャープになってきて、ミステリアスな色気が増した事に加え、小説のイラストのようなエレガントな気品が漂い始めていた。
ただ…物語とは違い、病んではいないので、雰囲気が柔らかい。
「ガイア様も、そ、その…触って、良いんだよ…?」
「……こら。嬉しいですけど、駄目です」
…何で嬉しいのにダメなんだろうか?
好きにしてくれて良いのに。
もうすぐ、十五歳になったエリザベス王女が、初めて社交の場に足を踏み入れる日がやってくる。
お城では舞踏会が開催され、エリザベス王女の初のお披露目舞台に、娘LOVEの王妃の気合いはMAXに達しているらしい。
エリザベス王女のために最高の装飾を城内に施し、招待客を厳選し、警備はいつもの三倍以上厳重に…等、誰も止める事の出来ない気迫で指示が飛んだとか…。
入場者は厳しくチェックされ、“招待客の連れ”として来た者は入る事が出来ないだろう。
さすが、国の賢母…かなり用心深い。
これなら、シリルが変装をして“誰かの連れ”として舞踏会に紛れ込む事は不可能…が、安心は出来ない。
…もしシリルが、その招待客になりすましてきたら?
常識から逸脱した行動を取るシリルならあり得る…彼なら一切の悪気なしに、名案だと言わんばかりにやらかす。
無自覚で下位の貴族を脅し、まるで自分こそが正義というように振る舞う姿が容易に想像できる。
招待客から招待状を奪って身分を偽った場合…入場時にシリルだとわからないような変装をされたら厄介だ。
他人になりすましたシリルは、こっそり接触を試みようとするだろう。
エリザベス王女は、シリルに“会うだけ”でも不幸になりかねない…。
完全に非がシリルにあるのに、何故か正しい事を言ってもエリザベス王女に非がある展開になる恐れがあるし…社交の場で空気の読めない事を言って、エリザベス王女の立場を悪くするかもしれない…。
十三歳の私は、そばで彼女を守る事が出来ないーーーーーーーーーだがっ…!!
私が、何の対策もせずに五年間を過ごす訳がない!
この五年間…エリザベス王女と兄が婚約関係にあり、付け入る隙がないくらいラブラブだというアピールをお城の“ある場所”でやってもらった。
その“ある場所”とは…王族居住区とは別の、貴族の行き来が多い廊下だ。
二人には、その廊下から見える“中庭”で“午前中”にイチャついてもらい、そこを通れば必ず目に入るようにした。
もちろん…警備を厳重にして。
そこを通った多くの貴族たちは、二人が相思相愛でよそ見などあり得ない強固な関係だと認識するだろう。
これで、万が一…シリルがエリザベス王女にアプローチを仕掛けてきても、彼女が悪のアバズレ扱いされる事はない…!
狙いはそれだけではない。
お城に出入り出来る貴族ともなれば、国王から信頼される人格を持ち、能力を認められた有力者たち…それなりの発言力を持っている。
しかも、有力者たちは王家への忠誠心が高く、グレンヴィル公爵家の力を良く理解している者たちばかりだ。
更に時間帯を“午前中”に限定し、真面目で勤勉な者たちの目に止まるように狙いもつけた。
性格は行動に表れるもの……ここは、日本人の作家が書いた中世風ファンタジー小説の世界。
だからか、行動パターンが日本人っぽいんだよね…。
さて…二人の絆を目の当たりにしてきた勤勉な有力者たちと、根も葉もない事を信じる浅ましい者たち…世間はどちらを相手にするだろうか?
エリザベス王女は、お城では勉強をがっつりするか、私や兄を招待して自由時間を過ごすかの二択。
お出掛けもグレンヴィル公爵邸にしか行かない。
こじつけて『浮気…!色目を使っていた…!』と言うのも難しい。
物語でハーレム要員たちが動き出したのは、エリザベス王女とシリルの婚約話が浮上してから。
シリルにすでにハーレム要員がいて、嫉妬していたとしても行動には移さないだろう。
エリザベス王女には相思相愛の婚約者がいて、シリルとの関係性は無いに等しいのだから。
シリルが場を引っ掻き回す、お得意の巻き込み事故が起こるかどうかが怖い部分だけど…これは五年前の木登り強制事件のように先手必勝で阻止しするしかない。
ーーーそう、何かをやらかす前に潰す。
兄や、この舞踏会で社交デビューするガイアに『万が一こんな事が起こったら…』とお願いした。
奴の言い分を潰し、話す隙を与えなくらい正論でまくし立て、すぐに衛兵を呼んで欲しい。
『何故、十四歳の社交デビュー前のシリルが、身分を偽ってここにいるのか?』…と。
例えシリルが戯れ言を言っていても、この一言で周りの興味はシリルだけに向くはずだ。
奴の言い分は聞かなくていい、きっと意味がない。
だったら聞く意味なんてない。
いくらか目星を付けて、思考を巡らせてみたが、良い対策が浮かばなかった。
そこで私は、予測不可能な事を難しく考え込むのではなく、シンプルに考えてみようと思った。
そこで行き着いた先が『力業が必要な時もある』だ。
ただ…物語のスペンサー公爵夫人がシリルのせいで死亡した例があるので、接近は避けて、一定の距離を保ってもらって。
今、一番怖いのは、エリザベス王女の大事な人がシリルのせいで死亡する事。
兄や…王妃が…。
兄には、シリルに関わったり、接近したりすると、五年前のエリザベス王女のように怪我するかもしれない…もしかしたら死亡者が出るかも…と、シリルが訪問突撃をしてくる度、必死に伝えたきた。
シリルは軽率で短慮な行動が多く、そのせいで大きな怪我を繰り返しているというのは有名な噂だ。
五年間の木登り強制暴力事件からシリルを危険視していた兄は、その噂の事もあり、グレンヴィル公爵家の影…隠密部隊を密かに飛ばしてシリルの動向を探ってくれた。
そして、内容は教えてくれなかったが…危険性の裏付けが取れたらしく、私の言った通りに行動した方が良いと判断してくれた。
…さすが、兄。
妹が言った事を鵜呑みにせず、冷静に考えて、きちんと材料を揃えてから判断してくれる。
王妃の許可を取り、何名か隠密部隊を配置すると言っていた。
お兄ちゃん…最高かっ…!!
お城の会場には警備がそこらじゅうにいるし、視野が広く勘のいい兄は、シリルなんかに後おくれは取らない。
兄は、ずーーっとべったりエスコートしてそばを離れないと、エリザベス王女の手を優しく握って言っていた。
まるで…愛の言葉を囁くように、素晴らしい語彙力で、天然超イケメンパワーを炸裂させていた。…私もいる目の前で。
エリザベス王女には、この舞踏会を何の心配もなく心から楽しんでもらうため、もしものシリル対策の事は話していない。
何にも知らないエリザベス王女はストレートに言葉を受け取り、ふしゅううううぅ…と、顔から湯気が出そうなくらい真っ赤になってしまって…それはそれは可愛くて最高だった。
兄の言葉が相当嬉しかったのか…エリザベス王女は気持ちが高まり、兄に抱きついてキスしていた。
口に。
長く。
深く。
その後も気持ちが高まり続けていたエリザベス王女は、椅子に膝立ちすると、兄の顔を特盛ロイヤルおっぱいに抱え込み、ぎゅうううううぅ…と夢中で抱き締めていた。
次に『ジェイク…私のジェイク…♡好き、大好き♡』とうわごとのように囁くでろでろの甘い声と、可愛らしいリップ音も聞こえた。
兄は耳まで赤く染めて焦っていたが、暫くすると大人しく身を委ねていた。
わかるよ、お兄ちゃん…そのおっぱい、しゅごいよね…ふわふわで、あったかくて、いい匂いで、思考がとろとろになって、何も考えられなくなるよね…。
私はその尊い光景を目に焼き付け、心のメモリーソフトに永久保存した。
それから、エリザベス王女とガイアの関係だが…シリルとは違い、ガイアへの心配は全くない。
物語では最悪な関係だった二人だが、仲はとても良好で、例え二人きりになっても大丈夫。
この同い年組は、良く私を話題にして話している。
長椅子に座り、私を両側からぴったりサンドして、両側から私の手を握って。
そして兄は、エリザベス王女の隣で微笑ましそうに眺めている。
このパターンが、四人でいる時のお約束になった。
ーーー今のように。私の部屋で。
「ビーチェはいつまでも小さくて可愛い…」
「わかります…最高に可愛いですよね…」
「うん、可愛い…世界で一番可愛い…」
何だ、この空間は…。
たまにどちらかが呟いた言葉に反応し、内容がほぼ無いやり取りを小出しで続けている…。
ゆったりと静かな空間に、間隔を空けて。
………ついに、『可愛い』の前に『世界で一番』が付くようになってしまった。訂正したい…世界で一番可愛いのはエリザベス王女だとっ…!!
「ビーチェ、良かったね」
兄が静かに微笑みながら、ほのぼのと言ってきた。
推しにサンドさせるのは幸せだが…過大評価が過ぎて戸惑ってしまう…。
それにしても…両側からめちゃくちゃいい匂いがする…。
「大きくなったら抱っこ出来なくなっちゃうと思ったけど…まだ余裕で出来ちゃうね♡」
「んっ…っ…」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…と、こめかみにキスをしてくれながら、頭を優しく撫でてくれた。
しゅき…。
抱っこ大好きなエリザベス王女は、私が同年代の子供に比べると小柄な事に喜んでくれている。
小さいだけで、体つきは特別華奢という訳ではない。
ちゃんと成長しているのだけど…あれ、おかしいな、毎日牛乳を飲んでいるはずなのに。
女性らしい…その、出るところは出て来ているのに…おっぱいに身長の分の栄養を持っていかれているとか…?
え…このままだと、バランス怖いことにならない…?
牛乳、止めた方がいい…?
兄は背が高く、引き締まった体に成長したのに。
十六歳で成熟した大人のような雰囲気を纏い、知性的な色気を、眠そうな表情がいっそう引き立てている。
要するに、最高にカッコいい、クールなイケメンに成長していた。
同じDNAのはずなのに、何故こんなにも差がある…?
「ねっ、ガイア?」
「はい、エリザベス様。どんなビーチェも素敵ですけど、この小柄さはビーチェの魅力の一つですからね」
でも…エリザベス王女とガイアが気に入ってくれているなら、小さくてもいいや。
好きなだけ抱っこして、好きなだけ好きなところを触って欲しい。
「うんうんっ♡」
「ですが…成長が遅れていないか少し心配です」
ガイアが確かめるように太ももを触り、さりげなく撫でてくれながら言ってきた。
…ガイアは太ももが好きなのかな?
じゃあ、もっとむっちりするようにお肉食べないと!
ちゃんと食べているか心配させてしまったし、もう少したんぱく質の量を増やした方が良いかもしれない…!
「ふふっ、そんな事ないよね?ビーチェ♡ここはたーっぷり栄養を摂っていい子に育ってるもんねっ♡」
ガイアの事に気を取られていると、いつの間にか、エリザベス王女の両手が背中から脇の下に入れられていた。
「ひあっ…あっ…エリーさま…」
そして、そのまま胸の下に移動し、服の上から成長中のおっぱいを、ぶるんっ…と下乳から持ち上げられた。
たぷたぷ優しく揺らして、愛おしそうに可愛がってくれている。
「いい子いい子♡ちゃんとブラジャー出来て偉いねー♡」
「ひゃんっ…あっ…んっ、はぁ…」
仕上げに、揉み揉みされながら、人差し指で的確に何度も先っぽを弾かれてたくさん褒めてもらった…嬉しい…。
兄とガイアの前では気まずくて、凄く恥ずかしいけど…エリザベス王女がしたいならいっぱいやってくれていいからね…♡
二人にここまで気を許して、エリザベス王女がかなりリラックスしている証拠だし。
とても良い事だ。
「………………………エ リ ー 様 ?少し、お話があります」
「はぁい…♡怒らないで、ジェイク」
「…怒っていませんよ。ガイア、ビーチェを頼んだよ」
「っ…っ……はい、義兄上」
…だけど兄は、穏やかだが、少し固い表情で、エリザベス王女を優しくエスコートすると、部屋の外に出ていった。
ポカン…として、思わずガイアを見上げると、頬を赤く染め、視線をそらし、口元を手の甲で抑えていた。
わっ…これはもしかして、エリザベス王女におっぱいを可愛がられているのを見て、ドキドキしてくれたのかな…?
そうだったら…嬉しいなぁ…。
ーーー静かに恥じらう姿が、何とも尊い…。
ガイアも成長して、更に魅力的になった。
前世で言う、モデルのようにスタイルが良く、スラッと細身に見えるが、男性らしい体つきになってきている。
顔つきもキリッとシャープになってきて、ミステリアスな色気が増した事に加え、小説のイラストのようなエレガントな気品が漂い始めていた。
ただ…物語とは違い、病んではいないので、雰囲気が柔らかい。
「ガイア様も、そ、その…触って、良いんだよ…?」
「……こら。嬉しいですけど、駄目です」
…何で嬉しいのにダメなんだろうか?
好きにしてくれて良いのに。
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