冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

145.暴かれる罪(5)

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フェラーラ侯爵の話を聞き終わると、エドアルドは、無言のままクラリーチェを気遣うように見つめた。
両親の死により、本来侯爵令嬢として大切に育てられるはずだった彼女の人生は大きく狂ってしまった。
理不尽な仕打ちを受け、逃げ出したくなるほど辛い思いをしても、傷付けられても、クラリーチェは相手を責めることはしなかった。
そんな優しい彼女は、両親が殺されたという事実をどのように受け止めるのだろうか。

「………あなた方は………罪のない命を奪ってまで、成し遂げたかった事は何だったのですか?」

クラリーチェは、静かに問いかけた。
そして、エドアルドにふわりと笑顔を向けてから、彼の腕の中から抜け出してブラマーニ公爵の前に立つ。
体に合わないドレスを着ていても、堂々と胸を張り、凛とした雰囲気を纏ったクラリーチェは、息を呑むほど美しかった。

「………ご両親の仇である我々を、責めないのですか?」

少し拍子抜けした様子で、フェラーラ侯爵は呟いた。
その一方で、ブラマーニ公爵やディアマンテはクラリーチェを睨みつけている。
唯一人、ジュストだけは口元にだけ薄っすらと笑みを浮べてクラリーチェを見つめていた。

「………責めたところで、亡くなったエドアルド様達のお母様も、私の両親も、生き返ってくるわけではありません。それに、憎しみは、新たな憎しみしか生みません。………尤も、王族殺しは大罪中の大罪。エドアルド様達の事故の件もございますから、おそらく極刑は免れないでしょう。………それでも、自らが犯した罪と向き合い、その罪を認めることが、皆様方に出来る償いではないでしょうか」

実にクラリーチェらしい答えだと、エドアルドは思った。
クラリーチェのその言葉に、フェラーラ侯爵の赤い瞳が、信じられないものを見るように大きく見開かれた。

「………血は、争えないものですな。貴女のお父上も、全く同じ事を仰られた。そんな彼の未来を、私はこの手で奪った。………つまらない正義の為に命を落とすなど、愚かだと蔑みながら。………けれど、それ以上に愚かだったのは、私の方だったという事ですね」

懐かしそうに、それでいて虚しそうに、ぽつりとそう呟いた後、フェラーラ侯爵はブラマーニ公爵を見た。

「…………貴方も大人しく白状したらいかがです?陛下は既に、全てをご存知でいらっしゃるようですよ。もう貴方の求めるものは、何一つ手に入らない」

憮然とした表情を浮かべたブラマーニ公爵は、沈黙を守ったまま蹲っていた。
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