猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

167.ルカの処遇

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 ルカが従者を外された、とは一体どういうことだろう。
 まさかとは思うが、ラヴィニアの従者という立場にありながら主の暴走を止められなかったことへの責任を取らされ、国を陥れた反逆者として処刑でもされてしまうのだろうか。
 考えれば考えるほどに恐ろしい予想ばかりが頭に浮かんできて、リリアーナは無意識のうちに眉間に皺を寄せ、顔を歪めていた。

「…………あなたにそのような険しい顔をさせるとは…………インサーナ侯爵令息を消しておかなかった事を、今猛烈に後悔しています」

 不意にぼそりと聞こえてきた、ラファエロのあまりにも不穏過ぎる発言に、リリアーナはぎょっとする。

「な…………、何てことを仰いますの?」
「ふふ、冗談ですよ。ただあなたがその可愛らしい顔を顰めていたので、それを崩させたかっただけです」

 ラファエロは含み笑いをすると、リリアーナのストロベリーブロンドの髪を一房手に取り、そっと口付けを落とした。
 ラファエロが言うと、全く冗談に聞こえないのは気のせいだろうか。

「そもそもインサーナ侯爵令息が従者を外されたのは、彼の優秀さに目をつけたオルカーニャの新国王が、彼を宰相補佐官として採用することを決定したせいですからね。決して理不尽な対応をされたわけではありませんよ」

 再びにっこりと笑顔を浮かべ直したラファエロの明かした事実に、リリアーナは一瞬動きを止め、それからゆっくりと目を見開いた。

「…………え?」
「即位して真っ先に彼を登用するとは………少なくとも、新国王は人を見る目はあるようですね」

 ラファエロは感心しながらまじまじと報告書を眺めている。

「インサーナ侯爵令息がいなくなって、ラヴィニア王女は大丈夫なのでしょうか…………?」

 少し心配そうにリリアーナが目を伏せると、ラファエロは報告書をエドアルドに手渡しながら頷いた。

「彼女もようやく己の心と向き合うことが出来ましたからね。まあ、後の事はあの二人の努力次第、ということになるのでしょう」

 僅かに口元を緩め、ラファエロは大して興味もなさそうに呟いた。
 リリアーナはそんなラファエロの言葉に、笑顔で同意した。

 結局ルカとラヴィニアの婚約が発表されるのは、それから二年程後の話になったという。
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