猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

166.報告書

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オルカーニャの国王が王太子に譲位し、隠居したという知らせが『監視役』としてオルカーニャに派遣されたスカリオーネ伯爵から齎されたのは、それから更に一ヶ月程経った頃だった。
スカリオーネ伯爵はグロッシ侯爵家の傍系に当たる血筋で、本家と同じく外交を得意とする家柄だ。
因みに彼の次男は近衛騎士団に所属しており、クラリーチェ付の侍女であるリディアの婚約者でもある。

「それなりに、自責の念に駆られたようだな。年老いてまともな判断が出来なくなっているのは目に見えていたのだから、さっさと引退していればこのようなことにはならなかったものを………。挙句の果てに自らの行いの尻拭いを息子にさせるとは………全く愚かなことだ」

スカリオーネ伯爵からの報告書に目を通しながら、エドアルドは鼻で笑うと、そう言ってのけた。
エドアルドやラファエロも無能な父王の後始末をし続けていた過去があるからこそ、思うところがあるのだろう。

「今回の件は人生最後の、良い教訓になったのではないでしょうか。兄上の言う通り、些か遅すぎる引退のように感じるのは否めませんが………。結果だけを見れば、私達にとってはこの上なく不快な思いをしたことは損害と言えますが、それを差し引いても余るほどの収穫はありましたしね」

わざと小さく溜息をつくと、ラファエロはリリアーナの結婚において、最大にして最難関の障害となっていたグロッシ侯爵の方をちらりと見ながら、微笑んだ。
その視線に気がついたらしいグロッシ侯爵は、面白くなさそうにふん、と鼻を鳴らす。
最終的にラファエロに手を貸し、あのような形での結婚を許してくれたが、あくまでも娘を奪ったラファエロの事は気に食わないらしかった。

「………そう言えば、王女殿下はどうなりましたの?…………その、従者のインサーナ侯爵令息とは………?」

放っておくとラファエロに対して嫌味を言い出しそうな父の様子から、話題を変えたほうがいいと思い、リリアーナは思い出したように呟いてみる。

「あのはた迷惑な王女は、両親と兄からこっぴどく叱られ、当面の間は自室での謹慎処分を言い渡されたそうだ。おそらくは、色々と欠如した常識や行儀作法の再教育でもするのだろう。………インサーナ侯爵令息は、王女の従者を外されたらしい」
「え…………?」

予想外の事実に驚いて、リリアーナは大きく目を瞠った。


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