猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

116.責任

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(ラヴィニア王女の保護者ではないのだから、そこまで責任を感じることもないと思うのだけれど………)

リリアーナはルカを見つめながらそんなふうに感じた。
一般的に子供の教育は専属の教育係が付く。ラヴィニアの口振りからして、彼女もその例に漏れず、教育係はいたらしいから、ラヴィニアがこのような歪んだ人格になったのは、ルカのせいではないだろう。
それでもそう言い切るということは、ルカは思っていた以上に責任感がある人物らしい。

「………本気でそう思っているのならば、何故我が国に王女を連れてきたのです?」

ルカの自己犠牲的な振る舞いに感心するリリアーナとは真逆に、ラファエロは相変わらず冷たい声で淡々と切り込む。

「………それは、本当に申し訳なく………」

ルカが唇を噛み締めるのが、辛うじて見えた。
あの様子だと、謝罪の言葉のみで赦されるような単純にな問題ではないのは重々承知しているようだった。
おそらくルカは、ラファエロの気持ちを汲み取り、少しでもラヴィニアへの処罰が軽くなる法法を考えているのだろう。

「あなたは王女が他国に渡ればどうなるのか想像が出来ていたはずです。それなのに王女を野放しにし、こうして責められる結果を招くなど、余程キエザ我が国に喧嘩を売っているのかと真剣に考えたくなりますよね。………ああ、もしかするとあなたは何か別の意図があり、祖国と我々の国交断絶でも望んでいるのですか?」

ラファエロは肩を震わせて泣き続けるラヴィニアと、俯くルカに向かって、わざと挑発するかのようにそう言い放った。

「け、決してそのような…………っ!」

ラファエロの言葉を聞いたルカが慌てた様子でそれを否定した。

「そのようなつもりがなかったと言うのならば、何故王女の遊学を止めなかったのか…………。それなりにきちんとした、理由があるんですよね?」

エメラルド色の双眸が、ナイフのような鋭さを宿す。

「………それは………」

何をどう説明すれば良いのかと、ルカは必死に考えているようだった。
だが、今回の遊学については、目先のことしか考えていないオルカーニャ国王が決定し、ラヴィニアの我儘により姉姫の嫁先であるガラディスからキエザヘと行き先が曲げられたのだから、『きちんとした理由』は『王と王女の希望を押し通した』というのが真実だ。
リリアーナは、ルカがなんと答えるのかが気になって、じっとルカを見つめるのだった。
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