猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

98.可能性

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「兄上、私とリリアーナは急用が出来ましたので、暫く舞踏会を中座させていただきます」

はっきりとした声で、ラファエロはエドアルドに向かって話しかけた。

「分かった。………私とクラリーチェも後ほど向かおう」

ラファエロの表情から全てを悟った、とでも言うように、エドアルドはニヤリと嗤うと、ラファエロの申し出をあっさりと許可した。

「何をしようと、わたくしから逃れることは出来ませんのに…………。ああ!もしかして、最後の思い出つくりにでも行かれるのかしら?わたくしは心が広いですから、それくらいはいくら侯爵家の小娘程度でも、許して差し上げてよ?」

この状況でもなお、自分本位な言動を繰り返すラヴィニアに、ラファエロもエドアルドも最早答える気持ちすらもなくなったようだった。
エドアルドに向かって一礼をすると、何かに急き立てられているかのように、ラファエロは大股で大広間をあとにする。

「あ………の………?」

訳も分からず、抱き上げられたままのリリアーナは、困惑したように瞬きを繰り返した。

「今のままでも十分すぎるほど綺麗ですが、もう少しだけ、お色直しをしましょうか?」

ラファエロは愛おしくてたまらない、とでもいうようにリリアーナを見つめる。

「お色直し………ですの?」
「はい。別室でエラとマリカが控えているはずですから、そちらへ向かいましょうか」

何故、グロッシ侯爵邸自邸にいたはずのエラが王宮の一室に控えているのかという疑問が生じたが、それはおそらくラファエロの指示によるものだろうということは推測できた。

先程のラファエロとエドアルドのやり取りと、今の状況を考えると、ある一つの可能性が頭に浮かんできて、リリアーナは胸が高鳴るのを感じる。

(まさか…………。でも、それならば全て解決することができるわ………)

ラファエロは、策士だ。
無計画で物事を進めないし、ありとあらゆる可能性を考え、その全てに対応した対策を取ってくる。
とすると、ラファエロはラヴィニアがこんな突飛な行動を取ることも想定の中に入れていたということだ。
そんなラファエロが、今からラヴィニアの計画を潰すために取る行動は、どう考えても一つしか考えられない。
一歩ずつ、ラファエロが歩みを進めていくのと同時に、リリアーナの中の仮定が、少しずつ確信に変わっていった。
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