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結婚編
67.血筋
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「………相応しくない、とラファエロ様が仰ったのですか?」
自分の口から出た声が、思いの外落ち着いていて、リリアーナはほっとした。
まだ、冷静さは欠いていないと実感出来たことで、ラヴィニア王女の挑発に乗らずに済みそうだった。
「いいえ?………でもラファエロ様は心の中でそう思ってらっしゃるに違いないわ!」
呆れるほどの思い込みの強さと、自己肯定感の強さだけは郡を抜いているといか言いようがない。
あまりに利己的で、証拠も何もない状態でこれだけ騒げる彼女は、酷く幼稚で哀れに思えた。
「そう思われる原因は………やはり、………王家の血筋が関係するのでしょうか………?」
それまで静かに二人を見守っていたクラリーチェが、まっすぐにラヴィニアを見つめ、口を開いた。
「他に何があるというの?」
何を今更とでも言うように、ラヴィニアはクラリーチェを睨めつけた。
「王族の家系に生まれた人間は、それだけで特別なのよ。どんなに望んでも、手に入れられるものではないのだもの」
得意げにそう語るラヴィニアの黒い瞳は、これ以上ないくらいに輝いていた。
王家の血筋というものを、余程誇りに思っているのだろう。
そう言えば元ブラマーニ公爵夫人もそんなことを口にしていたのを思い出す。
父も罵っていたが、王家の人間であるということを取ったら彼女には何も残らないだろう。
「確かに、王族に生まれた方は、特別な存在だと思いますわ。………ですが、血統だけで全てが決まる訳ではありません」
クラリーチェは淡い紫の双眸を悲しげに揺らがせた。
「………何ですって?」
ラヴィニアのはっきりとした眉がぴくりと跳ね上がる。
口元は歪み、明らかに不満そうな表情に変化していく。
「人間にとって、大切なものは血筋だけではないと申し上げたのです」
静かな、けれど凛と冴え渡った声は、クラリーチェの強い気持ちを反映しているかのようだった。
「どんなに努力しても、血筋は変えられないわ」
「ええ。ですが、人間は人格や能力など、それぞれ違ったものを持っています。………人にとって大切なのは、寧ろ後者であると、私は思いますわ」
クラリーチェの言葉を聞いたラヴィニアは、かっと目を見開くと、思い切り嘲りの表情を浮かべた。
自分の口から出た声が、思いの外落ち着いていて、リリアーナはほっとした。
まだ、冷静さは欠いていないと実感出来たことで、ラヴィニア王女の挑発に乗らずに済みそうだった。
「いいえ?………でもラファエロ様は心の中でそう思ってらっしゃるに違いないわ!」
呆れるほどの思い込みの強さと、自己肯定感の強さだけは郡を抜いているといか言いようがない。
あまりに利己的で、証拠も何もない状態でこれだけ騒げる彼女は、酷く幼稚で哀れに思えた。
「そう思われる原因は………やはり、………王家の血筋が関係するのでしょうか………?」
それまで静かに二人を見守っていたクラリーチェが、まっすぐにラヴィニアを見つめ、口を開いた。
「他に何があるというの?」
何を今更とでも言うように、ラヴィニアはクラリーチェを睨めつけた。
「王族の家系に生まれた人間は、それだけで特別なのよ。どんなに望んでも、手に入れられるものではないのだもの」
得意げにそう語るラヴィニアの黒い瞳は、これ以上ないくらいに輝いていた。
王家の血筋というものを、余程誇りに思っているのだろう。
そう言えば元ブラマーニ公爵夫人もそんなことを口にしていたのを思い出す。
父も罵っていたが、王家の人間であるということを取ったら彼女には何も残らないだろう。
「確かに、王族に生まれた方は、特別な存在だと思いますわ。………ですが、血統だけで全てが決まる訳ではありません」
クラリーチェは淡い紫の双眸を悲しげに揺らがせた。
「………何ですって?」
ラヴィニアのはっきりとした眉がぴくりと跳ね上がる。
口元は歪み、明らかに不満そうな表情に変化していく。
「人間にとって、大切なものは血筋だけではないと申し上げたのです」
静かな、けれど凛と冴え渡った声は、クラリーチェの強い気持ちを反映しているかのようだった。
「どんなに努力しても、血筋は変えられないわ」
「ええ。ですが、人間は人格や能力など、それぞれ違ったものを持っています。………人にとって大切なのは、寧ろ後者であると、私は思いますわ」
クラリーチェの言葉を聞いたラヴィニアは、かっと目を見開くと、思い切り嘲りの表情を浮かべた。
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