猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

66.対峙

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「盗み聞きなどしていないわ。わたくしの進路にあなた達がいたのが悪いのよ」

堂々と胸を張るラヴィニアに、リリアーナは内心で深く溜息をついた。
いちいち目くじらを立てていたらきりがないと分かっていても、ラヴィニアの言動はそのたびにリリアーナの神経を逆なでする。
それでも笑顔を崩さずにいると、ラヴィニアは凄まじい敵意を含んだ眼差しを、リリアーナへと向けてきた。

「ラヴィニア王女もよろしければ、一緒にお茶を楽しみませんか?」

そんな殺伐とした雰囲気を纏う二人に、やんわりとクラリーチェが声を掛けた。
声や口調と同様に、柔らかな微笑みを湛えたクラリーチェは、非の打ち所のない完璧な動作でラヴィニアに席を勧めた。

「………ふん。本来わたくしはあなた達のような下賤の者とは一緒にお茶など飲まないのだから、ありがたく思うことねっ!」

またしてもクラリーチェを下賤の民と蔑んだ事に対して怒りが沸点に到達したが、何とか武装した笑顔でその怒りを押し込める。
それでもクラリーチェの誘いを断らなかったところをみると、クラリーチェやリリアーナの血筋は蔑む気持ちに変わりはないが、流石に再度エドアルドの怒りを買うことは避けたかったのだろう。

緋色スカーレットのドレスの裾を翻したかと思うと、ラヴィニアは気取った仕草で着席した。
クラリーチェもそれを見届けてから、腰を下ろす。

同じ座る動作を取ってみても、クラリーチェの方が数倍洗練されていて美しく見えたのは、欲目だろうか。

「先程のお言葉は、どういう意味なのですか?」

呼吸を整え、背筋を伸ばすと、リリアーナはしっかりとラヴィニアを見据えた。
こうして改めてラヴィニアを見ると、初めて彼女を見たときに受けた鮮烈な印象は、彼女の持つ色彩のせいだったのだと気がつく。
顔立ちこそ整ってはいるが、ラファエロやエドアルド、そしてクラリーチェといった人並み外れた美貌を見慣れているせいなのか、特別美人だとは思えなかった。

「どういう意味?そんなの、決まっているじゃないの」

ラヴィニアは下ろした長い真っ赤な髪をうるさそうにばさりと片手で払い除けると、リリアーナを鼻で笑った。

「あなたはラファエロ様の妃には、相応しくないのよ」

当たり前のことを言わせるなとでも言うように、ラヴィニアは真っ赤な唇を歪めて見せたのだった。
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