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結婚編
49.ラファエロの訪問
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翌朝。
いつもよりも少し遅く目覚めたリリアーナが支度をして階下に降りていくと、玄関から入ってくるラファエロの姿が目に入った。
「おはようございます、リリアーナ」
「おはようございます、ラファエロ様。………でも何故我が家に………?」
リリアーナが不思議そうに首を傾げると、ラファエロは微笑みながらリリアーナを見つめた。
「おや、愛しい婚約者を迎えに来るのに、何か特別な理由が必要ですか?」
朝から眩しい程の笑顔に、リリアーナは赤面した。
「まあ、ラファエロ様ったら………」
「ふふ。照れるあなたも、この上なく可愛らしいですね」
リリアーナに歩み寄ると、ラファエロは彼女をぎゅっと抱き締める。
「あなたの迎えも勿論、訪問の理由の一つですが、今日はあなたのお父上と少し話をお聞きしたいことがあったのです」
ほんの少し体を離すと、ラファエロは訪問の理由を正直に打ち明けた。
「お父様に?」
「ええ。グロッシ侯爵は、外交において右に出る者はいませんからね」
それを聞いて、リリアーナは納得したように頷いた。
おそらくラファエロは、オルカーニャとラヴィニアについての話をするためにやってきたのだろう。
「でも、わざわざ我が家までお越しにならなくても、お父様が登城するまでお待ちになっていれば良かったのではないのですか?」
あと少しすれば、父が屋敷を出る時間だ。
それなのにそれを待たずに父を訪ねてきたということは、余程緊急性があるのだろうか。
「いえ………実は昨日あなたが帰った後、例の王女と廊下で鉢合わせまして…………」
ラファエロは溜息をつくと、実に不愉快そうに顔を顰めた。
「え………?」
謁見の時に、リリアーナのほうを見て嘲笑った、ラヴィニアの顔が頭に浮かぶ。
いやな予感がして、リリアーナはラファエロの背中に回した手に力を込めた、その時だった。
「殿下。こんなに朝早くから、何用ですかな?」
背後から咳払いが聞こえて、リリアーナは飛び上がった。
慌ててラファエロから体を離し、後ろを振り返ると、仏頂面のグロッシ侯爵が立っていた。
「お父様、これは、その………」
「………婚約中なのですから、抱き合うくらいでは咎めはいたしませんが………せめて私の目の触れない場所でお願いしますよ、殿下」
「ええ、肝に銘じておきます」
どことなく気まずそうな父がラファエロに忠告をすると、ラファエロは全く動じることなく頷いた。
「おそらく、あまりよろしくないお話なのでしょう。落ち着いて話せる場所にご案内します。………妻とウルバーノも同席させて、よろしいでしょうか?」
「ええ、勿論です」
そんな会話を交わしながら、ラファエロとグロッシ侯爵が歩き出す。
二人の間に漂う、重苦しい空気を感じ取り、リリアーナは不安気にラファエロの背中を見つめるのだった。
いつもよりも少し遅く目覚めたリリアーナが支度をして階下に降りていくと、玄関から入ってくるラファエロの姿が目に入った。
「おはようございます、リリアーナ」
「おはようございます、ラファエロ様。………でも何故我が家に………?」
リリアーナが不思議そうに首を傾げると、ラファエロは微笑みながらリリアーナを見つめた。
「おや、愛しい婚約者を迎えに来るのに、何か特別な理由が必要ですか?」
朝から眩しい程の笑顔に、リリアーナは赤面した。
「まあ、ラファエロ様ったら………」
「ふふ。照れるあなたも、この上なく可愛らしいですね」
リリアーナに歩み寄ると、ラファエロは彼女をぎゅっと抱き締める。
「あなたの迎えも勿論、訪問の理由の一つですが、今日はあなたのお父上と少し話をお聞きしたいことがあったのです」
ほんの少し体を離すと、ラファエロは訪問の理由を正直に打ち明けた。
「お父様に?」
「ええ。グロッシ侯爵は、外交において右に出る者はいませんからね」
それを聞いて、リリアーナは納得したように頷いた。
おそらくラファエロは、オルカーニャとラヴィニアについての話をするためにやってきたのだろう。
「でも、わざわざ我が家までお越しにならなくても、お父様が登城するまでお待ちになっていれば良かったのではないのですか?」
あと少しすれば、父が屋敷を出る時間だ。
それなのにそれを待たずに父を訪ねてきたということは、余程緊急性があるのだろうか。
「いえ………実は昨日あなたが帰った後、例の王女と廊下で鉢合わせまして…………」
ラファエロは溜息をつくと、実に不愉快そうに顔を顰めた。
「え………?」
謁見の時に、リリアーナのほうを見て嘲笑った、ラヴィニアの顔が頭に浮かぶ。
いやな予感がして、リリアーナはラファエロの背中に回した手に力を込めた、その時だった。
「殿下。こんなに朝早くから、何用ですかな?」
背後から咳払いが聞こえて、リリアーナは飛び上がった。
慌ててラファエロから体を離し、後ろを振り返ると、仏頂面のグロッシ侯爵が立っていた。
「お父様、これは、その………」
「………婚約中なのですから、抱き合うくらいでは咎めはいたしませんが………せめて私の目の触れない場所でお願いしますよ、殿下」
「ええ、肝に銘じておきます」
どことなく気まずそうな父がラファエロに忠告をすると、ラファエロは全く動じることなく頷いた。
「おそらく、あまりよろしくないお話なのでしょう。落ち着いて話せる場所にご案内します。………妻とウルバーノも同席させて、よろしいでしょうか?」
「ええ、勿論です」
そんな会話を交わしながら、ラファエロとグロッシ侯爵が歩き出す。
二人の間に漂う、重苦しい空気を感じ取り、リリアーナは不安気にラファエロの背中を見つめるのだった。
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