猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

7.真実

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「ほんの少しだけ、意地悪をするつもりだったのですが、あなたが必死に作り笑いで取り繕いながらも、不安げに私を視線で追いかけてくるのを見ていたらつい………」

ラファエロは小さく笑い声を上げた。
自分が、急にそっけない態度を取るようになったラファエロのことで悶々と悩む様を見て、ラファエロは楽しんでいたのだという事実を知らされ、リリアーナは愕然とする。

真っ先に浮かんできたのは、自分の気持ちを弄ぶような真似をしたラファエロへの怒りであり、憤りだった。
だが、それと同時にラファエロを本気で怒らせたわけではなかったということに対しての安堵の気持ちも浮かんでくる。

「………酷いことをなさったという自覚はありますの?」

深く息を吸い込み、それを吐き出すのとともに零れ落ちたのは、そんな言葉だった。
本当ならばもっと酷い言葉で罵りたいのに、頭には何も浮かんでこない。

「ええ。………反省しています」

今度は心底申し訳なさそうに、ラファエロは頭を下げた。

「こんなことを言っても言い訳にしかなりませんが、結婚してしまえばあなたは家族と気軽に会うことができなくなってしまいますから、少し遠慮しなければという気持ちが出たのも事実です。……あなたが両親や兄と過ごすのもあと少しですし、その貴重な時間すらも私の『リリアーナあなたを独占したい』という我儘で奪ってしまうのは忍びないですからね。………それに、これ以上あなたを家に帰さなかったらグロッシ侯爵に一生恨まれそうな気がしたんです」

ラファエロは肩を竦めると立ち上がり、リリアーナの椅子の隣へと歩み寄ってから、その場に跪いた。

「………それに、私も相当我慢したのですよ?あなたの手に触れるだけで、抱き締めて、口付けをして、あなたの存在を全身で確かめたくなるのに、その全てを押し殺して素っ気ないふりをするのは、なかなかの苦行でした。………それでも私を許せないというのであれば、どうぞ気が済むまで私を叩いてください。………ただし、私から逃げることは絶対に許しませんよ」

ラファエロが跪いているせいで、リリアーナは彼を見下ろす形になる。
彼が、そんなことを考えていたなどとは思いもよらなかった。
確かに、自分を騙すようなことをしたのは許せないが、自分と、自分の家族の気持ちに配慮してくれていた部分もあるのだと知り、彼の深い愛情と優しさに、胸がいっぱいになる。

じっと彼を見つめているだけで、涙があふれそうになるのをぐっと堪えると、リリアーナは立ち上がり、ラファエロに抱きついた。

「リ、リリアーナ………?」

リリアーナの予想外の行動に驚いたのか、ラファエロが上ずった声を上げた。

「確かにラファエロさんがなさったことは酷いですし、許せないと思いますけれど………そのように言われてしまえば許すしかないではありませんか。それに、心配しなくても今回のことで私の心は全てラファエロ様で埋められているのだということを嫌というほど実感いたしましたの。ですから、ラファエロ様が嫌だと仰っても、ずっと一緒におりますわ」

リリアーナはラファエロの耳元でそう囁くと、彼を抱き締める腕に力を込めたのだった。

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