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婚約編
38.花言葉
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「正式な婚約の書類については、後日お持ちしますが、これであなたは、正真正銘私の婚約者です。………もう逃げたいと言い出しても、決して逃しませんので、そのおつもりでいてくださいね」
リリアーナが漸く落ち着きを取り戻した頃合いを見計らって、ラファエロは幸せそうな笑顔でそう囁く。
ーーーー婚約者。
そう言われても、まだ当然ながら実感は湧かなかった。
三年以上もの間、婚約者だった男が消え、ずっと臨んでいた婚約解消を成し遂げたのは一ヶ月前。そしてその日のうちに想い人から愛の告白があり、更に今日に至る。
まさに怒涛の一ヶ月と言っても過言ではないだろう。
「それにしても………これだけの薔薇の花を用意するのは、大変だったのではありませんの?」
リリアーナは改めて室内を埋め尽くす薔薇の花束と薔薇をぐるりと見回した。
「あなたの為に贈り物を用意するのは、喜びこそ感じますが、苦労など微塵も感じませんよ」
ラファエロは涼し気な笑顔を浮かべながら、テーブルに飾られた薔薇を一本引き抜いた。
「………一本の薔薇の花言葉は『一目惚れ』と『あなたしかいない』です。そのどちらも私の心のままの言葉だと言ったら、あなたは信じてくれますか?」
そう言いながら、薔薇の花弁に軽く口付けを落とし、薔薇の花をリリアーナの髪に飾ってくれた。
「私はラファエロ様の婚約者ですもの。信じますわ。………一本が愛の告白で、百八本がプロポーズの言葉ならば、この本数は…………?」
そもそも一体何本の薔薇が用意されているのだろうか。
リリアーナはじっとラファエロの答えを待った。
「正確に、この部屋に何本の薔薇があるのかは分かりません。本来は、九百九十九本の薔薇を用意するつもりだったのですが、庭師に尋ねたところ、そんなに大した量でなく、あなたをがっかりさせてしまうような気がしたのですよ。ですから、用意出来るだけの花を用意したのです。………因みに当初の予定の花言葉は、『生まれ変わってもあなたを愛する』です」
照れたような、けれどもこの上なく美しい笑顔を浮かべたラファエロに、リリアーナは思わず抱きついた。
ーーー今生を添い遂げ、来世でも共に。
重く、強いラファエロの愛の告白に、リリアーナはこの上ない多幸感に満たされていく。
リリアーナは蕩けるような笑顔を、ラファエロに向けた。
「………約束、ですわよ?」
「ええ、勿論です。何度生まれ変わっても、あなたを選んでみせますよ」
至近距離で、エメラルド色と紺碧色の視線が絡み合う。
その様を、美しい月がそっと照らしていたのだった。
リリアーナが漸く落ち着きを取り戻した頃合いを見計らって、ラファエロは幸せそうな笑顔でそう囁く。
ーーーー婚約者。
そう言われても、まだ当然ながら実感は湧かなかった。
三年以上もの間、婚約者だった男が消え、ずっと臨んでいた婚約解消を成し遂げたのは一ヶ月前。そしてその日のうちに想い人から愛の告白があり、更に今日に至る。
まさに怒涛の一ヶ月と言っても過言ではないだろう。
「それにしても………これだけの薔薇の花を用意するのは、大変だったのではありませんの?」
リリアーナは改めて室内を埋め尽くす薔薇の花束と薔薇をぐるりと見回した。
「あなたの為に贈り物を用意するのは、喜びこそ感じますが、苦労など微塵も感じませんよ」
ラファエロは涼し気な笑顔を浮かべながら、テーブルに飾られた薔薇を一本引き抜いた。
「………一本の薔薇の花言葉は『一目惚れ』と『あなたしかいない』です。そのどちらも私の心のままの言葉だと言ったら、あなたは信じてくれますか?」
そう言いながら、薔薇の花弁に軽く口付けを落とし、薔薇の花をリリアーナの髪に飾ってくれた。
「私はラファエロ様の婚約者ですもの。信じますわ。………一本が愛の告白で、百八本がプロポーズの言葉ならば、この本数は…………?」
そもそも一体何本の薔薇が用意されているのだろうか。
リリアーナはじっとラファエロの答えを待った。
「正確に、この部屋に何本の薔薇があるのかは分かりません。本来は、九百九十九本の薔薇を用意するつもりだったのですが、庭師に尋ねたところ、そんなに大した量でなく、あなたをがっかりさせてしまうような気がしたのですよ。ですから、用意出来るだけの花を用意したのです。………因みに当初の予定の花言葉は、『生まれ変わってもあなたを愛する』です」
照れたような、けれどもこの上なく美しい笑顔を浮かべたラファエロに、リリアーナは思わず抱きついた。
ーーー今生を添い遂げ、来世でも共に。
重く、強いラファエロの愛の告白に、リリアーナはこの上ない多幸感に満たされていく。
リリアーナは蕩けるような笑顔を、ラファエロに向けた。
「………約束、ですわよ?」
「ええ、勿論です。何度生まれ変わっても、あなたを選んでみせますよ」
至近距離で、エメラルド色と紺碧色の視線が絡み合う。
その様を、美しい月がそっと照らしていたのだった。
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