猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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婚約編

25.式典後

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リリアーナは夢見心地のまま、ラファエロと共に港へと戻った。

掴みどころのない、扱いにくい人物だという印象が、拭えなかったリベラートが、まさかあんなとびきりサプライズを用意していたなど思いもよらなかったが、それによりクラリーチェとエドアルドのプロポーズは人々の胸により深く刻まれることになったのも事実だった。

「足元に、気をつけてくださいね」

下船しようとするリリアーナの体をしっかりと支えながら、ラファエロがリリアーナを覗き込む。
その途端、あの時ラファエロに囁かれた言葉が不意に脳裏に蘇り、リリアーナは思わず頬が赤くなるのを必死に隠しながら、船を降りた。


港は相変わらず沢山の人でごった返していた。

「あの、ラファエロ様。私クラリーチェ様にお祝いを申し上げたいのですけれど………」

何とか落ち着きを取り戻したリリアーナはきょろきょろと辺りを見回し、先に下船したクラリーチェの姿を探すが、見当たらなかった。

「おそらく、さっさと王宮に戻ったのでしょうね。あんな演出で派手に注目を集めたのですから、クラリーチェ嬢を他の男の視線から守ろうと、引き揚げたんだと思いますよ」

ラファエロが微妙な笑顔を浮かべてリベラートを一瞥した。
だが当のリベラートは全く気にする様子はなかった。

「この後は王宮で夜会が開かれるのだろう?いくら式典の後とはいえ、レディの身支度は時間がかかるからな」
「はいはい、そういうことにしておきましょう。ではリリアーナ、私達も王宮へ戻りましょうか?」
「え?でも私は………」

王宮にという表現が正しいのかということはともかくとして、夜会のために一度侯爵邸へ戻ろうと思っていたリリアーナは戸惑った。

「夜会用のドレスなどは、王宮に用意してあります。それとあなたの侍女のエラ、でしたか?あなたの父君にお願いして、彼女を王宮に派遣して貰いましたから、侯爵邸に戻らなくても支度は出来ますよ」

さらっと説明された内容に、リリアーナは恐縮しつつも驚く。
ラファエロはいつでも用意周到で抜かりないが、今回はいつも以上に根回しが早い気がした。

「ドレスなら、充分過ぎるほどに頂いていますわ。それに、エラまで連れてくるだなんて………」
「マリカに手伝って貰っても良かったのですが、あなたの事を一番理解しているのは、長くあなたに仕えている侍女だと思いまして………。今日という素晴らしい日を、最高の姿で終えて貰いたいという私の我儘を、どうぞ聞いて下さい」

困ったように笑顔を浮かべると、ラファエロは優しく、けれども懇願するような目でリリアーナを見つめながら、微笑んだのだった。
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