猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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婚約編

12.想い

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「………もしかして、私の実体験に基づく話だと思いましたか?」

くすり、と小さく笑い声が聞こえたあと、静かに落とされた声に、リリアーナはびくりと肩を揺らした。
そして、おそるおそるラファエロのエメラルド色の瞳に視線を合わせる。
うまく取り繕っていたはずなのに、どうして分かってしまうのだろう。
心の中まで、このどこまでも美しい澄んだ宝石のような目に、全てを見透かされているのだろうか。

「勘違いさせてしまったのなら、申し訳ないことをしました。………今の話は私ではなく、リベラートの実体験に基づいた話ですよ」

まるで、不安に揺らぐリリアーナを宥めるかのような優しい、落ち着いた声を響かせた。

「リベラートはいつもあのような掴みどころのない人ですが………、妃を迎える前に、想い人と結ばれなかったという過去を持っているんですよ。………失恋した後に一度、直接話す機会がありまして、その時にリベラートが話してくれたのが先程の話です」

ラファエロの口から丁寧な説明がなされた。
納得できるような、それでいて疑わしいような、微妙な心の揺らぎに、リリアーナは何と答えたら良いのか分からずに口籠ってしまう。

「………口では何とでも言えますから、一度疑いを持ってしまえば、その疑念を取り払うのはそう簡単にはいかないということは分かっています」

本当に、読心術でも使えるのだろうかと思う程に正確に、ラファエロはリリアーナの心の中を言い当ててきた。
そして、ゆっくりとラファエロはリリアーナの手に触れてきた。

「ですから、あなたにほんの少しでも不安を与えてしまったお詫びとして、あなたが私の気持ちを少しも疑うことのないように、じっくりとあなたに私がいかにあなたを大切に想っているのかということを教えて差し上げますよ」

柔らかく、そして甘く微笑むと、ラファエロはリリアーナの手を包み込むように握った。

「え………、あの………」

己の唇から零れ落ちたのは、いつもの強気なのに猫かぶりな、リリアーナとは似ても似つかない、か弱い乙女のような弱々しい声だった。
そんなリリアーナに向かって、ラファエロは更に笑みを深くする。

「是非、期待していて下さいね、リリアーナ?」

柔らかな吐息とともに吐き出されたラファエロの声に、リリアーナは困ったように、微笑んだのだった。
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