猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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婚約編

9.エドアルドとリベラート

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謁見は何となくピリピリとした空気のまま終わりを告げた。
とても友好国の王族同士、しかも懇意にしている従兄弟同士とは思えない雰囲気に、リリアーナはただ同席していただけだというのに気疲れした気がした。

「クラリーチェ様は大丈夫なのかしら………」

ふうっと息を吐き出すと、ラファエロが心配そうにリリアーナを覗き込む。

「心配はいりませんよ。兄上と一緒ですから」

先程までのリベラートに対する態度を詫びるため、エドアルドとクラリーチェはリベラートのいる貴賓室へと向かった。
そこに敢えてラファエロがついていかなかった事に、リリアーナは不安を覚えた。

「本当に、平気ですの?陛下は今にも王太子殿下に食って掛かりしうな勢いでしたけれど………」

するとラファエロは穏やかな笑顔を浮かべた。

「まさか、あんなにも必死に威嚇するとは思いませんでしたが………大丈夫です。兄上もいい大人ですし、己が何をすべきなのかは分かっているはずです。………それに………」

そこまで呟いて、ラファエロはエメラルド色の双眸を、細めた。

「………クラリーチェ嬢なら、大丈夫です」

少し意味深な笑みを浮かべるラファエロは、徐ろにリリアーナの手を取った。

「まだ晩餐までは時間がありますし、あの三人の話し合いもまだ暫くの間は貴賓室で話し合いをしているはずです」

本当に、ラファエロに知らないことなど何もないような、そんな錯覚に囚われそうだった。

「………少し我々も休憩をしましょう。リベラートはあの通りの人柄ですから、まともに相手をすれば疲れてしまいますしね」
「はい」

ラファエロに導かれるように、リリアーナは謁見の間を出ると、先日訪れたラファエロの私室へと向かった。



ラファエロはリリアーナを自室へと招き入れ、控えていたマリカにお茶の準備をさせる。

「………信じられないかもしれませんが、ああ見えて兄上とリベラートは、とても仲が良かったのですよ」

唐突に、ラファエロが呟いた。

「と言っても、子供の頃の事ですけれどね。オズヴァルドを訪れた際、あんなにも生き生きとしている姿は、キエザでは見られませんでした」

どこか懐かしそうに、ラファエロはエメラルド色の双眸を細めた。

「気を遣う必要もなく、自分らしく振る舞える、というところが兄上には新鮮だったのかもしれません。………まあ、それは私の推測に過ぎませんけれどね」 

エドアルドの事となると、いつになく饒舌にねる事にラファエロは気が付いているのだろうか。
ラファエロの話を聞きながら、リリアーナはぼんやりと考えるのだった。
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