猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

30.トゥーリ伯爵家の断罪(1)

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お茶会の後、暫くの間クラリーチェはリリアーナと手紙のやり取りをしていたようだが、リリアーナが王宮を訪ねてくることはなかった。
それを少しさみしく思いながらも、ラファエロは山積した仕事を次々に片付けていった。

「………ブラマーニを処分する前に、先にトゥーリ伯爵を問いただそうと思う」

またしても唐突に重大な提案をしてきたエドアルドに、半ば呆れながらもラファエロは同意した。

「一度に全てを片付けるのは難しいでしょうからね。………しかし、クラリーチェ嬢は納得したのですか?」
「ああ。彼女自身も、『ジャクウィントの呪い』の真相を知り、全てを暴くことを望んでいる。トゥーリ伯爵夫妻や従姉妹と面会することも了承してくれた」

エドアルドの返答に、ラファエロは些か驚いた。
あれほどまでに弱く、今にも消えてしまいそうだった少女が随分と強くなったものだと感心してしまう。
そして、それは断罪の場においても同じだった。

その提案から一週間後、トゥーリ伯爵家の面々が謁見の間に呼び出された。
周囲には騎士たちが武装して待機しており、物々しい雰囲気に包まれた謁見の間でも、クラリーチェは堂々としていた。

トゥーリ伯爵家に掛けられた嫌疑は、ジャクウィント侯爵家の財産の横領、未成年者の監禁及び虐待、爵位返上の手続の不履行など、多岐に渡る。
中でもエドアルドが最も腹を立てているのは、夫人とその娘によるクラリーチェへの度重なる虐待だった。

体中の傷跡は、一生消えないものもあるし、骨や筋肉も未発達のままの部分があるという。
一体どれだけ辛い思いを、たった一人で耐えてきたのだろうと考えるとラファエロですら胸が痛んだ。

初めのうちはエドアルドが審尋し、それに淡々と伯爵が答えていたが、夫人がそこに加わると、エドアルドの表情が一気に冷たくなるのをラファエロは感じた。
それは、ラファエロがブラマーニ公爵家、殊にジュストに対して抱いている気持ちととても良く似ていた。

「恐れながら………それは誤解ですわ、陛下」

この女は、なんの権限があってエドアルド国王の言葉を否定するのだろうなどと、ぼんやり考えた。

愚かな小物ほど、よく喚くというが、この女はまさにそんな風だった。
勿論クラリーチェに対する虐待、というよりも拷問と言うに等しい行いの数々は既に証拠や証言に裏打ちされている。

(そうとも知らず、本当に愚かな人ですね…………)

ラファエロはエドアルドとクラリーチェが彼らを断罪する様をゆっくりと眺めるのだった。
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