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ラファエロ編
38.提案
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それから暫くは、ブラマーニ公爵達をどう処分するかという難題のために、近衛騎士や王の影たちを使ってあれこれ動き回る毎日で、リリアーナとの接点は勿論のこと、クラリーチェと顔を合わせる機会すらなく過ごしていた。
忙しく過ごしていたお陰で余計なことを考える暇もなく、ラファエロも漸く落ち着きを取り戻し、本来の彼に戻りつつあった。
そんなある日。
「クラリーチェ嬢が、何者かに襲われた?」
神妙な面持ちで報告をしてくるダンテに、ラファエロは茫然とした。隣にいるエドアルドは唖然とし、それから苛立たし気に拳を握りしめたのが見えた。
「お前がついていながら、そのような失態を?」
「はい、申し訳ございません」
確か今日クラリーチェは、生家であるジャクウィント侯爵邸を訪れていたはずだ。それを狙って、しかも護衛として近衛騎士団長のダンテやその妹リディアがついていたのにも係わらず、クラリーチェが危険に晒されたということになる。
「兄上、少し落ち着いてください。………それで、クラリーチェ嬢の様子は?」
今にもダンテに八つ当たりをしそうな雰囲気のエドアルドを宥めると、ラファエロは状況を詳しく説明させた。
結果的にクラリーチェは無事だったが、ショックのために倒れてしまったとのことだった。
しかも、犯人を追い詰めたところまでは良かったが、捕らえる前にその場で自害してしまい、黒幕を吐かせることが出来なかったという事実は更にエドアルドの怒りを増幅させていた。
ジャクウィント侯爵邸でクラリーチェが床下に隠された箱を見つけたらしく、もしかするとブラマーニ公爵の手の者が、ずっと屋敷を見張っていたのかもしれないというのがダンテたちの見解だったが、それでもエドアルドの態度が軟化する様子は
「とにかくクラリーチェ嬢が無事だったのは、二人がいたからですよ。失敗を責めるよりもまずは最低限の役目を果たしたことに感謝すべきだと思いますがね。それに兄上が怒ったところで、黒幕が判明するわけではありませんよ」
クラリーチェのことになると冷静な判断ができなくなるエドアルドに、ラファエロは釘を刺すかのように声を掛けると、エドアルドは悔しそうに頷いた。
「とにかく、クラリーチェの身に危険が及ばないようにするのが最優先だ。基本的には部屋の外へは出ないほうがいいだろう」
「しかし陛下。それではクラリーチェ様もお辛いと思うのですが………」
主を危険な目に合わせてしまった手前、強くは言えない様子のリディアが申し訳なさそうに口を開く。
元々、物静かな女性であるし、本があれば外出しなくても苦にはならないだろうが、ほかにも気晴らしがなければと考えたのだろう。
そんなリディアの意図を汲み取り、ラファエロは少し考えてから、エドアルドに笑顔を向けた。
「それであれば、カンチェラーラ侯爵夫人とグロッシ侯爵令嬢に、クラリーチェ嬢の話し相手を務めていただくというのはどうです?色々な情報交換はクラリーチェ嬢の為にもなりますし、気晴らしにもなるでしょう?」
「………なるほど」
我ながら名案だと思った提案は、エドアルドの心も動かしたようだ。
クラリーチェとリリアーナの仲が縮まれば縮まるほどに、必然的に自分との接点も増えていくだろう。
心の中で、ラファエロは静かに笑みを浮かべたのだった。
忙しく過ごしていたお陰で余計なことを考える暇もなく、ラファエロも漸く落ち着きを取り戻し、本来の彼に戻りつつあった。
そんなある日。
「クラリーチェ嬢が、何者かに襲われた?」
神妙な面持ちで報告をしてくるダンテに、ラファエロは茫然とした。隣にいるエドアルドは唖然とし、それから苛立たし気に拳を握りしめたのが見えた。
「お前がついていながら、そのような失態を?」
「はい、申し訳ございません」
確か今日クラリーチェは、生家であるジャクウィント侯爵邸を訪れていたはずだ。それを狙って、しかも護衛として近衛騎士団長のダンテやその妹リディアがついていたのにも係わらず、クラリーチェが危険に晒されたということになる。
「兄上、少し落ち着いてください。………それで、クラリーチェ嬢の様子は?」
今にもダンテに八つ当たりをしそうな雰囲気のエドアルドを宥めると、ラファエロは状況を詳しく説明させた。
結果的にクラリーチェは無事だったが、ショックのために倒れてしまったとのことだった。
しかも、犯人を追い詰めたところまでは良かったが、捕らえる前にその場で自害してしまい、黒幕を吐かせることが出来なかったという事実は更にエドアルドの怒りを増幅させていた。
ジャクウィント侯爵邸でクラリーチェが床下に隠された箱を見つけたらしく、もしかするとブラマーニ公爵の手の者が、ずっと屋敷を見張っていたのかもしれないというのがダンテたちの見解だったが、それでもエドアルドの態度が軟化する様子は
「とにかくクラリーチェ嬢が無事だったのは、二人がいたからですよ。失敗を責めるよりもまずは最低限の役目を果たしたことに感謝すべきだと思いますがね。それに兄上が怒ったところで、黒幕が判明するわけではありませんよ」
クラリーチェのことになると冷静な判断ができなくなるエドアルドに、ラファエロは釘を刺すかのように声を掛けると、エドアルドは悔しそうに頷いた。
「とにかく、クラリーチェの身に危険が及ばないようにするのが最優先だ。基本的には部屋の外へは出ないほうがいいだろう」
「しかし陛下。それではクラリーチェ様もお辛いと思うのですが………」
主を危険な目に合わせてしまった手前、強くは言えない様子のリディアが申し訳なさそうに口を開く。
元々、物静かな女性であるし、本があれば外出しなくても苦にはならないだろうが、ほかにも気晴らしがなければと考えたのだろう。
そんなリディアの意図を汲み取り、ラファエロは少し考えてから、エドアルドに笑顔を向けた。
「それであれば、カンチェラーラ侯爵夫人とグロッシ侯爵令嬢に、クラリーチェ嬢の話し相手を務めていただくというのはどうです?色々な情報交換はクラリーチェ嬢の為にもなりますし、気晴らしにもなるでしょう?」
「………なるほど」
我ながら名案だと思った提案は、エドアルドの心も動かしたようだ。
クラリーチェとリリアーナの仲が縮まれば縮まるほどに、必然的に自分との接点も増えていくだろう。
心の中で、ラファエロは静かに笑みを浮かべたのだった。
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