猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

11.ラファエロの計画

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それから暫くの間はエドアルドとクラリーチェのことで手一杯だった。
女性への接し方から始まり、何をどうすればよいのかという基本的な恋愛の手順すらも知らないのにクラリーチェを口説こうとするエドアルドの暴走と迷走を止めるべく、ラファエロはありとあらゆる手段を駆使して兄を止めたり宥めたりと奮闘していた。

ラファエロとて、女性を口説いた経験など一度もない。
だが、敬愛する兄にこれ以上の醜態を晒させる訳にもいかない。
エドアルドは愚王フィリッポとは違う、「完璧な王」であるべきなのだ。
ラファエロは考えを巡らせてから、何かを決心をしたように顔を上げた。

「………仕方ありません。他ならない兄上のためですからね」

ラファエロは独り呟くと、マリカを呼んだ。

「お呼びですか、殿下」
「ああ、来ましたか。早速ですがお願いがあります」

マリカは神妙な面持ちでじっとラファエロの指示を待った。

「平民用の服を一着と、羊皮紙を数枚、それから染粉を用意してください。服と羊皮紙は、出来得る限り粗末なものをお願いしますね」
「………また、何を企んでおいでですか?」
「企むとは人聞きが悪いですね。これは、立派なです」

冷ややかな視線を向けるマリカに対して、ラファエロはふわりと笑って見せるだけだった。


翌日。
さっさと自分の分の執務を終えると、ラファエロはマリカに湯あみの準備をさせた。

「思いの外、綺麗に染まるものですね」

ラファエロは鏡を眺めながらしみじみと呟く。
父親譲りの明るい金色だったはずのラファエロの髪は、染粉によって最も一般的なダークブラウンへと変貌していた。

「存外、こうして髪の色を変えるだけでも別人のようになるものだと思いませんか、マリカ?」

マリカの用意してくれた服を身に着けると、ラファエロは満足げに微笑んだ。

「身なりだけは目立たなくなったと思いますが、その長身と無駄に整ったご尊顔はどうしようもありませんね」

淡々と感想を述べるマリカはそっと羊皮紙を差し出した。

「護衛は数人つけてありますが、くれぐれも危険な真似はなさらないでくださいね。それから、必ず晩餐の時間までにはお戻りください」
「わかっていますよ。………しかし、マリカ。そのおせっかいはどうにかなりませんか?あまり口うるさいと愛想をつかされますよ」
「おかげさまで夫婦仲は円満です」

てきぱきと片づけをしながら、何も聞かずに見送ってくれるマリカに、心の中で感謝しながら、ラファエロは颯爽と白昼堂々王宮を抜け出すと、城下町へと向かったのだった。

※※※お詫び※※※

すみません、ラファエロ君の回想が思いの外長くなったのでリリアーナ編とラファエロ編に分け、ラファエロ編のタイトルを変更しました。
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