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リリアーナ編
60.断罪(1)※残酷描写あり
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そのままブラマーニ公爵達を閉じ込めてある部屋へと入ると、中には厳重に鎖で縛り上げられ、椅子に座らされたブラマーニ公爵たちの他、厳つい顔の体格の良い中年男性と無表情の中年女性が一人ずつ。それから近衛騎士が数名いるだけだった。
その中年の男女の顔には見覚えがあった。
近衛騎士団長ダンテとクラリーチェの侍女リディアの両親・コルシーニ伯爵夫妻に違いない。
あまり公の場には姿は表さないが、挨拶を交わした事くらいはある。
「………陛下。ご指示通りに用意を致しました」
「ああ」
姿を現したエドアルド達に対して、伯爵夫妻は恭しく頭を下げる。
その様子を見て、『コルシーニ伯爵家』が王家にとってどんな存在なのかを何となく理解した。
王の剣となり盾となり暗躍する『影』としての職務を担っているのだろう。
だからこそ、リディアがクラリーチェの侍女に選ばれたのだろう。
普通の令嬢でないという事には気がついていたが、漸く理由が分かって納得した。
「エドアルド………!私をこんな目に合わせて………よくも………っ」
怒りを顕にしたディアマンテが、突然エドアルドに食って掛かった。
「………あなたも本当に懲りないヒトですね。………罪人の分際で、王である兄上の名を軽々しく口にするとは………」
呆れたようにそう呟いたのは、ラファエロだった。
「お黙り、ラファエロ!この私を罪人扱いするだなんて………、恥を知りなさい!」
「罪人扱い?何を言っている。立派な罪人なのだから当然だろう。手の骨を踏み砕かれたくらいでは、己の立場が理解出来なかったか………?」
「な、………や、止め………っ!」
靴を脱がされ、抵抗できないように椅子に括り付けられた裸足のままの足を、軽く踏みつけると、それだけでディアマンテは悲鳴を上げた。
先程の鉄靴程の破壊力はないにしても、革靴で素足を踏み付けられるのだから、それなりの痛みが伴う事は何となく想像がつく。
「それだけで悲鳴をあげるなどとは、情けないですね。あなた方が殺した人々に味わわせた無念と絶望をたっぷりと味わっていただかなければいけないのですから、もっと頑張って下さい」
天使の微笑みを浮かべたラファエロが、優しく囁いた。
紡ぎ出す言葉の内容と、表情や口調が全く伴っていないことは最早当然のように感じられるが、逆にラファエロがそう振る舞うからこそ恐ろしさが増幅するようにも見える。
「わ、私は直接手を下していないわっ!やったのはロベルトやカルロッタよ………!それに命令したのだってお兄様だわ………!何も知らない私が、どうして責められなければならないの………?!」
未だに保身に走ろうとするディアマンテを、エドアルドもラファエロも冷ややかな目で見下していた。
「自分は知らない、悪くないと喚くのならば、それを証明し得る証拠を出してみろ」
エドアルドはディアマンテが縛られている椅子を、蹴り倒した。
ディアマンテは冷たい石の床に体ごとたたきつけられ、苦悶の表情を、浮かべる。
「それなら、カルロッタが知っているわ!カルロッタがリオネッラに毒を盛ったのだもの………!それはお兄様の指示よねっ?!」
短い髪を振り乱し、紫暗色の瞳は血走り、化粧も剝がれかかったディアマンテはこの上なく醜悪だった。
美しさだけが誇りだった彼女の姿はもう見当たらず、リリアーナはひっそりと嘲笑を浮かべた。
「………いいえ、ディアマンテ様。私は、あなた様の心に従っただけです」
「なっ、何を言うの?!私の心ですって………?」
「ええ、そのとおりです。あなたは、常に自分が頂点に立たなければ気の済まない方ですもの。………フィリッポ前国王陛下との婚姻を強く望んだのも、第一側妃ではなく、正妃という立場に、異様に執着していたのも、全てはディアマンテ様………あなたの自己顕示欲を満たしたいがためでございましょう?それに、正妃でいらっしゃったリオネッラ様は女神のように美しく、聡明で慈愛に満ちた素晴らしい方でした。その上、陛下と殿下………二人の子を授かって………それが妬ましかったのですよね?」
フェラーラ侯爵夫人の言葉に、ディアマンテの顔が怒りに歪んだ。
「………っ、お黙り!薄汚い下位貴族の娘だったお前を、取り立ててやったのは誰だと思っているの?!」
「その点は、夫共々感謝しております」
激昂しているディアマンテとは対象的に、フェラーラ侯爵夫人は全てを諦め、受け入れたかのように淡々としていた。
「ディアマンテ様、いい加減認めたらどうですか?もう分かっているでしょう?」
ラファエロがいつの間にか手にしていた剣を、流れるような動作でディアマンテの目の前の床へと突き刺した。
ガキン、と鋭い音が走り、ディアマンテはあまりのショックに、失神したのだった。
その中年の男女の顔には見覚えがあった。
近衛騎士団長ダンテとクラリーチェの侍女リディアの両親・コルシーニ伯爵夫妻に違いない。
あまり公の場には姿は表さないが、挨拶を交わした事くらいはある。
「………陛下。ご指示通りに用意を致しました」
「ああ」
姿を現したエドアルド達に対して、伯爵夫妻は恭しく頭を下げる。
その様子を見て、『コルシーニ伯爵家』が王家にとってどんな存在なのかを何となく理解した。
王の剣となり盾となり暗躍する『影』としての職務を担っているのだろう。
だからこそ、リディアがクラリーチェの侍女に選ばれたのだろう。
普通の令嬢でないという事には気がついていたが、漸く理由が分かって納得した。
「エドアルド………!私をこんな目に合わせて………よくも………っ」
怒りを顕にしたディアマンテが、突然エドアルドに食って掛かった。
「………あなたも本当に懲りないヒトですね。………罪人の分際で、王である兄上の名を軽々しく口にするとは………」
呆れたようにそう呟いたのは、ラファエロだった。
「お黙り、ラファエロ!この私を罪人扱いするだなんて………、恥を知りなさい!」
「罪人扱い?何を言っている。立派な罪人なのだから当然だろう。手の骨を踏み砕かれたくらいでは、己の立場が理解出来なかったか………?」
「な、………や、止め………っ!」
靴を脱がされ、抵抗できないように椅子に括り付けられた裸足のままの足を、軽く踏みつけると、それだけでディアマンテは悲鳴を上げた。
先程の鉄靴程の破壊力はないにしても、革靴で素足を踏み付けられるのだから、それなりの痛みが伴う事は何となく想像がつく。
「それだけで悲鳴をあげるなどとは、情けないですね。あなた方が殺した人々に味わわせた無念と絶望をたっぷりと味わっていただかなければいけないのですから、もっと頑張って下さい」
天使の微笑みを浮かべたラファエロが、優しく囁いた。
紡ぎ出す言葉の内容と、表情や口調が全く伴っていないことは最早当然のように感じられるが、逆にラファエロがそう振る舞うからこそ恐ろしさが増幅するようにも見える。
「わ、私は直接手を下していないわっ!やったのはロベルトやカルロッタよ………!それに命令したのだってお兄様だわ………!何も知らない私が、どうして責められなければならないの………?!」
未だに保身に走ろうとするディアマンテを、エドアルドもラファエロも冷ややかな目で見下していた。
「自分は知らない、悪くないと喚くのならば、それを証明し得る証拠を出してみろ」
エドアルドはディアマンテが縛られている椅子を、蹴り倒した。
ディアマンテは冷たい石の床に体ごとたたきつけられ、苦悶の表情を、浮かべる。
「それなら、カルロッタが知っているわ!カルロッタがリオネッラに毒を盛ったのだもの………!それはお兄様の指示よねっ?!」
短い髪を振り乱し、紫暗色の瞳は血走り、化粧も剝がれかかったディアマンテはこの上なく醜悪だった。
美しさだけが誇りだった彼女の姿はもう見当たらず、リリアーナはひっそりと嘲笑を浮かべた。
「………いいえ、ディアマンテ様。私は、あなた様の心に従っただけです」
「なっ、何を言うの?!私の心ですって………?」
「ええ、そのとおりです。あなたは、常に自分が頂点に立たなければ気の済まない方ですもの。………フィリッポ前国王陛下との婚姻を強く望んだのも、第一側妃ではなく、正妃という立場に、異様に執着していたのも、全てはディアマンテ様………あなたの自己顕示欲を満たしたいがためでございましょう?それに、正妃でいらっしゃったリオネッラ様は女神のように美しく、聡明で慈愛に満ちた素晴らしい方でした。その上、陛下と殿下………二人の子を授かって………それが妬ましかったのですよね?」
フェラーラ侯爵夫人の言葉に、ディアマンテの顔が怒りに歪んだ。
「………っ、お黙り!薄汚い下位貴族の娘だったお前を、取り立ててやったのは誰だと思っているの?!」
「その点は、夫共々感謝しております」
激昂しているディアマンテとは対象的に、フェラーラ侯爵夫人は全てを諦め、受け入れたかのように淡々としていた。
「ディアマンテ様、いい加減認めたらどうですか?もう分かっているでしょう?」
ラファエロがいつの間にか手にしていた剣を、流れるような動作でディアマンテの目の前の床へと突き刺した。
ガキン、と鋭い音が走り、ディアマンテはあまりのショックに、失神したのだった。
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