ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

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「私にとってもセラフィナはかわいい妹だ。ウォルターとは別の立場で私も母上と父上、そして正妃様を見て来た。関わる誰もが複雑だというのにも同意する。だから私は…」
 ベンジャミンはそう言いながら、チラリとウォルターを見た。
「僕が東国へ行けば良い、と思っておられるのですよね?」
 片眉を上げてウォルターが言う。
「…そうだ」
 頷くベンジャミン。
 ラウルが意を決したように拳を握った。
「俺は…カルロッテを正妃にしたい。だからセラフィナを娶る気はない。だからこそウォルターを説得するためにこの視察に同行させたのだ」

「そうですね。僕は今、ヴィクトリアとの婚約を解消して、東国へ行っても良い気がしています。それが国のためにも、セラのためにもなる」
 ラウルがそう言うウォルターを見つめる。
「ウォルター…」

「しかし、僕が東国へ行くよりもっと手っ取り早い解決方法がある事に気付いていらっしゃいますか?ラウル殿下」
「もっと?」
 ラウルが眉を寄せて首を傾げた。

「ルイーザ様に戻っていただくのです」
「…は?」
目を見開いてウォルターを見上げるラウル。
「ルイーザ様が王家に戻り、ステファン兄上と結婚する。これが一番早い。ルイーザ様は王籍から抜けてはいないんですよね?」
「あ、ああ。籍はそのまま…」
「つまり、ルイーザ様に正式な婚姻歴はない」
 ウォルターが言うと、ラウルは「あ…」と呟く。

「いや…しかし、姉上が男と出奔した事は事実で、今もその男と一緒にいるのでは…」
 視線を彷徨わせながらラウルが言うと、ウォルターとベンジャミンは揃って眉を顰めた。
「ラウル殿下、本当にルイーザ様が出奔した後、お探しにならなかったのですね」
 少し呆れたようにウォルターが言うと、ラウルは慌てて手を横に振る。
「いや、もちろん直後には捜索したぞ。ただ…好いた相手がいて、盟約のためと政略結婚を強いられるのが辛いなら…並々ならぬ決意で逃げたのだろうし、放っておいてやるのが本人にとって良いと思ったんだ。俺は幸い相愛の相手と婚約できたが、政略結婚に気乗りしない気持ちも理解できるし」

「私は政略という程ではないにしても、周りに決められた相手と結婚しましたがね。まあ私にはラウル殿下のように相愛の相手がいなかったのですが」
 ベンジャミンが顎に手を当てて呟くように言った。
「いやあの…」
 慌てた様子のラウルに、ベンジャミンはふっと小さく吹き出す。
「コルネリアには何の不満もないですし、周りに決められた結婚もそう悪くはないですよ。でもまあ相愛の相手がいれば、違う相手と結婚しなければならないのは辛いでしょう。それから、ラウル殿下がルイーザ様をお探しにならなかった気持ちはわかりました。だからご存知ないのも仕方ありませんが、ルイーザ様の『夫』は、既に亡くなっているのです」
「え!?」
 ベンジャミンがそう言うと、ウォルターは頷き、ラウルはますます目を大きく見開いた。
「一緒に暮らせたのは一年半ほどだそうで、亡くなってからもう五年以上経つと聞きました。ステファン兄上は『夫』が存命の頃からルイーザ様たちの元を訪れ、なにくれなく手助けをしていたと」
 そうウォルターが言うと、ラウルはがっくりと項垂れる。
「姉上は幸せに暮らしているとばかり…」

「ルイーザ様は『後悔はちっとも全然全くしていないわ!』と仰られていましたよ?」
 ウォルターがルイーザの口調を真似して言うと、項垂れたままラウルが「ふっ」と吹き出した。
「姉上らしい…」

「ただ、いくら兄上が訪れているとはいえ、そう頻繁ではないですし、女性の一人暮らしの上、周りは鉱夫や荷持ちの男ばかりで…」
 ウォルターが腕を組みながら言う。
 ラウルが顔を上げた。 
「更に、最近ヴィクトリアや僕などが出入りするので、ルイーザ様がやんごとなき身分の出だと知られてしまいそうなのです」
 渋い表情でウォルターが言う。
「それでルイーザ様が王家へ戻りたいと言われているのか?」
「いえ」
 ベンジャミンが言うと、ウォルターは首を横に振った。
「ルイーザ様は何も。ステファン兄上がルイーザ様が心配なのであの集落から離したいと言われています。とすると他所へ移り住むのも簡単ではないので、王家に戻るのが現実的だろうと」
「ふむ…」
 自分の拳を口元に当てて、考え込むベンジャミン。
 ウォルターはそんな兄を見ながら言った。
「ベンジャミン兄上、僕が邪魔ですか?」



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