ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

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「デリスは私が王女で婚約者もいるのを知っていたから、私に対して何かしら好意を抱いているような態度は一切見せなかったわ。好きになったのは私の方なの」
 居間兼食堂のテーブルについたルイーザはそう話し出した。
 ステファンはまだ戻って来ていない。
「私も、好きになった処でどうにもならないことはよくわかっていたわ。でも…デリスが倒れて…余命一年だと宣告されて…」
「え…?」
「それで私、デリスの最期の時まで一緒にいたいって、デリスに言ったの。王女も婚約も、国も、何もかも捨てるって。もちろんデリスはすんなりと受け入れてはくれなかったけど…私の粘り勝ちね」
 紅茶のカップを持ちながらふふっと微笑むルイーザ。
 その表情だけでルイーザがデリスと過ごした日々が幸せだったのだとわかる。

「デリスは肺を患っていたの。アイリスちゃん『鉱山病』って知ってる?」
「いえ…」
「粉塵などを吸い込む事によって呼吸器や肺を傷めてしまうの。デリスの病とは違うけれど、医学を志していたデリスは同じように肺を患う鉱夫たちに何かを残したくて、それで私たちはここに来たの」
 ルイーザはチェストの上の姿絵に愛おしそうに視線をやった。
「今、鉱夫たちがしているマスクは粉塵を防ぎながらも呼吸がしやすいようにとデリスが考案したものだし、鉱山病に罹った鉱夫を診察したりしたわ。それで、余命一年と言われた時から、二年、ここへ来てから一年半…デリスはがんばって生きてくれた…」
 ルイーザの翡翠色の瞳が僅かに揺れる。

「ファンが私たちを見つけてここにやって来たのは、私たちがここに来てから一年経った頃だったわ」
「ス…ファンさんはルウさんを連れ戻すつもりで探していたんですか?」
「多分最初はそのつもりだったと思うわ。でもファンはデリスと私の事を応援してくれたの。度々デリスに薬を持って来てくれたり、医師を連れて来た事もあるし…」

「まあそれは下心故だがな」
 玄関の方からステファンの声がして、黒髪の鬘を被ったステファンが居間兼食堂に入って来た。
「下心?」
 アイリスがステファンを見上げながら言うと、ステファンは口角を上げる。
「俺は婚約者同士の面会交流で会っていた子供の頃からルウの事が好きだったからな。ルウの方は二つ歳下の俺など弟くらいにしか思っていなかったが」
 そう言いながら椅子に座るステファンを、ルイーザは少し頬を赤くしながら見た。
「そんな事…あるけど」

「俺としてはルウが幸せならそれで良いんだ。だから探し出したルウがデリスと幸せそうだったからそれが少しでも長く続くと良いと思っただけ。そしてデリスは今際の際に俺に『ルウを頼む』と言った。だから今度は俺がルウを幸せにする」
 ステファンはじっとルイーザを見つめながら言う。
 ルイーザはますます頬を赤くしてステファンから目を逸らした。
「しかし、未だにルウにとって俺は『客人』らしいがな」
 じーっとルイーザを見ながらステファンが言う。ルイーザはテーブルに突っ伏した。
「だって…」

 ルイーザ様、耳まで真っ赤。
 今はルイーザ様もステファン殿下の事…?

 バアンッ!!

 と勢いよく玄関扉が開き、そちらを見たアイリスの視界に青紫色が映る。

「アイリス!」
 玄関扉から入って来たのはウォルターだ。
「ウォルター殿下!?」
 アイリスが思わず椅子から立ち上がると、ウォルターがツカツカと居間兼食堂に入って来て、そのままアイリスを抱きしめた。

「!?」

 え?
 ウォルター殿下は攫われた私を助けに来てくれたのよね?
 でも私はここではヴィクトリアの筈なのに、今「アイリス」って呼ばれた…よね?

「ウォルター、アイリスがお前が爆発に巻き込まれて怪我をしていないかと心配していたぞ」
 何事もなかったかのような落ち着いた口調でステファンが言うと、ウォルターはアイリスを抱きしめたまま、ステファンを睨む。
「兄上…これは一体どういう事なんですか?」
「ヴィクトリアのためだ」
「は?」
「ヴィクトリアがウォルターとの婚約を破棄できるように、この事件を起こしたんだが…」
 ステファンはテーブルに肘をついて口角を上げてアイリスを抱きしめるウォルターを見た。
様子を見るとウォルターのためにもなったのかもな」









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