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無慈悲な処刑宣告

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周りには、病を治し傷を癒してあげた貴族が大勢いる。

でも、誰もディアをかばってくれないし、目も合わせてくれない。王も王妃も外遊中の今、王子に逆らえる者などいないが、そもそも貴族たちは助ける気もないのかもしれない。

ひとりぼっちのディアを見て、ユースレスは満足そうに口端を吊り上げた。

「貴様に癒しの力があるのは認めよう。だが、それを悪用し、聖女の名を騙った罪は重い。民草のみならず多くの貴族、王族を惑わせた。よって明朝――中央広場にて斬首刑とする!」

「ざ、ざんしゅ……?」

ぽかんとするディアに、イルミテラが静かに語りかける。神秘的な紫色の目には、深い慈愛の色があった。

「平民ディア。聖女と偽ったという点を除けば、貴女の行いは素晴らしかったです。本来ならもっと重い刑罰が科されていてもおかしくはありませんが、その善行を考慮し、貴族と同じ断頭台による処刑としました」

神々しく威厳に満ちた姿は、いかにも彼女の方が聖女にふさわしく見えた。イルミテラは祈りの言葉で締めくくる。

「命の消えるそのときまで、貴女に女神ディアマンティアナの祝福がありますように」

罪人に向けるには、あまりにも労わりに満ちた言葉。

貴族たちは誰ともなく、イルミテラに向かって拍手をした。

割れんばかりの拍手と歓声の中、王子は初恋の女性を優しく抱き寄せた。たった今、死刑を宣告された元婚約者のディアが見ている前で、恋人同士のように。


新しい聖女の誕生。
それも美しい公爵家のご令嬢。

みんな大いに喜んだ。

これが破滅の始まりだと、そのときは誰も思わなかった。
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