上 下
18 / 57
2章 RHYME

17. <幕間> ライムの弟子日記、RHYME IS VERY EASY.

しおりを挟む
◇◇◇
17. <幕間> ライムの弟子日記、RHYME IS VERY EASY.


(ライムの日記より抜粋) 


私が見た、ケイジさんの強さの秘密 …やはりあれは…違う世界のものだ。

魔力自体の出所が、今の私ではわからない。

結果、引き起こされる現象も解析できない。
この国の魔法とは全く違う体系で出来上がっている。


私の知る限りの呪文構成と詠唱の術式では、呪文を全て、意思のとおりに構成するのは上級魔法師にも難しい。

精霊や天地から魔素を引き出すために伏句フックが必要で、魔力を増幅させるためには装飾の呪節も組み込むのが当然の型。
だから普通、呪文全てが術者の感情の乗る言葉にはならない。


―ケイジさんの呪文は即興性と独自性が異常に高い。

術者の情念・情動は詠唱に対して自乗効果を生む。
ケイジさんの呪文は全ての言葉を感情句にしており、伏句フックと言えるものが入っていない。

他から魔力を得るためのターンがもし不要なのであれば、その魔法の速さ、即効性は理解できる。

しかし相手の意識を刈り取るほどの威力を、全部自分の内在魔力で行っているとしたら、一級魔法師なんてものじゃない、神仏級だ。


一体あの魔力は――どこから…?


その秘密は早急に見極めておかなければならない。



もう試験本戦が始まってしまう。

このままレコードどおりに事態が進めば― 本当の大厄災が…。


ケイジさんには本当に申し訳ないことをしてしまっている。
それも三晩も続けて。

すでに私たちの、この国のことに深く巻き込んでしまっている。
それは避けられなかったのかもしれないが、「仕方ない」で済ませていいことでは決して無い。


でも本当にケイジさんに会えたのだから――必ず遂げてみせる。 


私はカッサネール家四女であり、魔法学士を目指す者。
この国を担う者。


―たとえ全てを裏切ることになろうとも。



(ライムの日記より一部抜粋)



◇◇◇

(第18話より新章開始)
しおりを挟む

処理中です...