沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪

文字の大きさ
21 / 22
始まりの街ゴスル

いざ!!ランキング狩り!!②

しおりを挟む
 森を抜けて砂漠に睡月は来ていた。

 木々が生い茂っていた森とは違い、見晴らしのいい解放感のある乾いた風邪が睡月の長い髪をなびかせる。

 数年間家に閉じこもった後、外の風に当たった時の気持ちよさのような感覚に睡月は気分よく獲物を探す。

 マップに示された位置は大体ここら辺だ。

 もちろん睡月が移動している間に相手も移動する。

 何度も起きてマップを確認しながら移動してきた睡月は、若干不機嫌だ。

 やはり参加するべきではなかったと少し後悔しながらも、始めてしまった以上最後までやらなければモヤモヤする。

 睡月はため息をつくと、【睡拳】を使い移動し始めた。

 距離にして200m、睡月の獲物がそこに居た。

 睡月は大きく迂回しながら背後を取るように獲物に近づいていく。

 イベントが始まる前に師匠である塩田に色々と助言を聞いてきた。

  元々参加するつもりは無かったが念の為に聞いておいたのだ。

「まず、一体多数の場合は人数を減らすことを意識するのじゃ。当たり前だと思うだろうが、案外これが出来ない連中が多くてな。一発逆転の一手なんぞそうそうない。相手の戦力を確実に削りながら、数的不利な状況から脱出するのじゃ。そのために必要なのは、いかに先制攻撃で相手に損害を負わせるかじゃ。初撃で最低でも1人は倒したい。今回お主が参加するイベントは対人戦じゃろ?対人戦で重要なのはいかに相手の意表を突いて何もさせずに勝つことじゃ。タイマンでワシとほぼ互角に戦えるお主なら簡単じゃぞ。そうだな.......これなら恐らく誰であろうと一撃で倒せる。それは─────」

「裏に回って首をボキッてね」

 【睡拳】を使っている睡月に意識はない。

 寝言のようにポツリと呟いた。

 音もなく静かに近づく。

 相手は全く気づく気配はなく、のんびり歩いていた。

 魔の手が後ろから迫り、1人の視界を上下反転させる。

 相手はここで睡月に気づいたがもう遅い。

 懐に素早く入ると鳩尾に掌底を捻りながら撃ち込む。

 【睡拳】を使用している状態で睡月の一撃をまともに受けきれるのは、VITとHPに大きくステータスを割いているタンク職だけだ。

 VIT、HPにさほどステータスを振っていない魔法職のプレイヤーには耐えきることは不可能だった。

 一瞬でHPが消し飛び、ポリゴンになって消えていく。

 これで残り3人。

 最初にヒーラーを倒しているため、回復されることは無い。

 次に睡月のターゲットになったのはモンクの男。

 武器を一切持たず拳で戦う近接戦闘特化のプレイヤーだ。

 男は肉弾戦なら負けないと思っていた。

 事実、お互いステゴロの状態で闘って負けたことは無い。

 男は最初に自分を倒すべきだったなと思いながら睡月に向かって正拳突きを放った。

 が、拳は睡月を捕らえるどころか、虚しく空を切る。

 素早く振った拳の風を切る音だけが男の耳に残り、視界が逆さまになる。

「クソっ」

 刀を持った女は一瞬で倒された3人を見ながら腰を落として、刀に手を掛ける。

 抜刀の構えだ。

 女の抜刀を見切った者は少ない。

 女の最大最速の攻撃だ。

 睡月はそんなことお構い無しに女の射程距離に、刀の届く範囲に無警戒に踏み込む。

「【瞬速抜刀】!!」

 素早く放たれた斬撃は睡月の首と胴を真っ二つに切り分ける。

 はずだった。

「嘘..........でしょ........?」

 睡月は避けるのではなく刀を摘んでいた。

 しかも刀の刃の部分を持っているのではなく、刃の裏側、峰の方を摘んでいる。

 速かったのだ。

 女が振る刀よりも睡月が刀を捕らえる腕の動きの方が。

 パキンと摘んだ刀の部分をへし折る。

 女は余りにも非現実的な光景に腰を抜かし、とても動ける状態ではなかった。

 そこに睡月の拳が顔を捉え──────

「【カバーシャウト】!!」

 女を殴り飛ばす前にタンク職の男が女を庇う。

 だが、【睡拳】を使っている睡月のパンチを男は受けきれず女を巻き込みながら後ろに吹き飛んでいった。

「いってぇ....なんてパワーだ。おい、しっかりしろせめてお前だけでも生き残れ。失うポイントは少ない方がいい」

「え....えぇ....そうね。そっにの方が────────」

 急に言葉が切れた女の方を男は嫌な予感を覚えながら見る。

「おいおいまじかよ。いつの間にお前そこに居たんだ......」

 男の目に映ったのは首の折れたさっきまで話していた仲間と黒い悪魔が居た。

 素早く盾を構えようとするが、もう遅い。

 男も女と同じように首が折れ、ポリゴンになって消えていった。

 睡月は戦闘を終える起きてマップを開く。

「次は......ここのパーティーが近いかぁ....後8パーティー!!頑張るぞー!!......今まだ0時45分か。まだまだ時間があるなぁ.....もっと遅くて良かったかも」

 黒の悪魔の行進は始まったばかりだ。

 
スキル解説

【瞬速抜刀】
アクティブスキル クールタイム70秒
効果:刀を装備している時に発動可能。抜刀時の速度、攻撃力に50%の上方補正がかかる。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...