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〜初めての依頼〜

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 ギルドからの依頼内容は教会の手伝いという依頼内容だった。

 記された場所に行くと,街外れにあるボロボロの教会がそこにはあった。
 「すいませ~ん」
 「はい~~。どちら様ですか?」
 「冒険者ギルドの依頼で来た冒険者なのですが……」
 「あら? 本当に来てくれたんですか? ありがとうございます」

 「よろしくお願いします! 俺はカナデといいます。隣がクロエです」
 「クロエじゃよろしく」

 「私はシスターをやっていますマリと言います」
 「依頼は教会の手伝いという事でしたが,どういった事なんですか?」
 「教会は孤児院も運営しておりまして,子守と共に,教会のあちこちの修繕を手伝ってほしいのです」

 「なるほど。教会には他の方は居ないんですか?」
 「ええ……今は私一人でやっていますので,大変なのです」
 「わかりました。それではお手伝いしましょう」

 すると大勢の子供達が教会から現れた。孤児の子供達なのだろう。
 「おじちゃん達だ~れ?」
 「おじ……冒険者だよ。今日一日お手伝いにきたんだよ」

 「そうなんだ。じゃあ後で遊ぼうね!」
 俺は不器用ながらも教会の壊れた箇所などの修繕を始めた。

 クロエはというと,魔法の力を使って教会全体を掃除し始めた。最初は水魔法で洗い流し,風魔法で洗った水を乾かしていく。魔法というのはとんでもなく便利なだと俺は感じていた。

 それを見ていた子供達はクロエに興味を持ったようで,魔法を見せてほしいと皆が頼んでいる。クロエも満更でもない様子で,魔法を繰り広げて子供達と遊んでいた。

 「カナデさん! ちょっと出かけてきますので,少しの間よろしくお願いします」
 「マリさん分かりました。気をつけて下さい」
 俺はそのまま言われた仕事をこなしていた。

 しばらくするとマリさんが戻ってきた。
 仕事を終えたのでマリさんに依頼の達成のサインをもらう。

 「良かったら,カナデさんとクロエさん食事をしていきませんか?」
 「おお! 食事とな! 丁度腹が空いたのじゃ」
 「いいんですか?」
 「ええかまいませんよ」
 
 俺とクロエはお言葉に甘えて,食事をご馳走になる。
 教会の奥の部屋へ行くと食堂があり,子供達と一緒に席に座り,食事を待つ。
 大きな鍋とパンをマリさんが持ってくる。

 よそったスープの色はかなり透明度が高く,ほとんど具が入っていなかった。
 パンも見るからに硬そうなパンだった。

 祈りのポーズを全員がする。俺とクロエも見様見真似で同じ所作をする。
 「それでは神に感謝していただきます」
 スープを一口含むとほとんどお湯に近かった。

 「なんじゃマリ! このスープは! お湯じゃ!」

 「バカ!!!! クロエバカ!!!!」
 「バカとは何じゃカナデ」

 「いえいいんです。事実ですから」
 「ここの教会の財政は厳しいんですか?」

 「まあ……とてもじゃないけど,運営出来ないんです。先程もいくつか寄付をしてもらえそうな場所を回ってお願いをしてみたんですが,駄目でした」

 「なるほど……」
 「何じゃ何じゃ! 余にも分かるように話せ」
 「簡単に言えばお金が必要って事さ」
 「また金か! 人族は本当に金がかかるの~」

 「クロエは長生きで頭がいい龍なんだろ? 何か解決出来ないのか?」
 「急に何じゃ。余はお金に関してはよく分からん。カナデこそ何かいい案はないのか?」
 俺は少し考えたが,この世界の事自体よく分からない。そんな中でいい案が出てくるはずもなかった。

 お金を寄付するのは簡単な解決方法だと思うが,根本的な解決にはならない。ずっと誰かに寄生し続けなければいけなくなるからだ。自立が出来るようなお金を生む何かが教会にあるといいのだが。

 「マリさん,元々はどんな資源で財政を賄っていたんですか?」
 「教会ですから寄付が主でしたが,昔は回復の治療を行える者が居たりして回復の治療でお金を頂いたり,後は薬などを販売していたそうです」

 「他の教会はどういった事でお金を得てるんですか?」
 「主に回復の治療ですね。高額な治療費を取って運営している所がほとんどです」
 
 「怪我や病気になったら皆どうしているんですか?」
 「高い治療費を教会の司祭に払い魔法で治してもらう事がほとんどです。もちろん薬を販売している薬師の店もあるんですが,大きな病気などは治せないので教会に行くことがほとんどです」

 なるほどな。魔法なんて便利なものがあるから医術が進歩していないのだろう。
 「カナデせっかくじゃ。ここで一曲頼む!」
 本当に突然言い出すなクロエのやつ。

 「分かったよ仕方ないな!!」
 俺は立ち上がり,いつも持っているヴァイオリンを出す。
 そして音を奏で始めた。

 「♫~,♫~♫~♫~♪~♫~♪~,♪♪♫♪♫♫♫」
 バッハ作曲 無伴奏ヴァイオリンパルティータ第三番『ガヴォット』
 もしかしたら初めて音楽を聴くかもしれない子供達には楽しい音でありたい。そう想い俺は演奏した。

 弾き終えると,先程までそっけなかった子供達が近寄ってきた。
 「「「おじさんすご~~い」」」
 俺は子供達のその反応がなんだか嬉しかった。

 クロエは満足気な顔をしていた。マリさんは微動だにせず止まったままだった。
 俺達は食事のお礼をし,教会を後にする。

 ギルドへ依頼の報告と報酬を受け取りに戻る道中で,

 「なあクロエ。あそこの教会どうにか出来ないかな??」
 「どうにかってどうするのじゃ!?」
 「何かお金を生み出せるようなものがあるといいんだがな」

 俺は少し考え事をしながらギルドへと戻り,報告と報酬を受け取ると,酒場ライデンへと戻った。
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