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奪われる頭脳よみがえる悪夢

173・杠の誤算(3)

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 その時から相当年数が経過した後、杠が何をしようとしていたのか明らかになった時代からすれば、彼がやろうとしていたのは首相権限を濫用した工作だと知られるようになった。そのことは後世で評価されたが、その最大の障害は次期首相の最有力候補の神谷が敵対する行為をすることだった。本人の自覚に関係なく。

 「困ったな、松林くんが次期首相ならなんとかなったが・・・とりあえずプランCを選ぶか・・・」

 杠は失敗の可能性が高いプランを選ぶしかなかった。それでは事が公になってしまうし、人的被害も相当出るかもしれないが、仕方がなかった。とりあえず各国首脳が集まる場のそばで事態が大きく動くことを待つほかなかった。

 世間の注目は新首相の神谷に集まっていた。杠選挙管理内閣は新たに選出された国会議員による首班指名直前で役割を終える、首相として権力を行使できるのはその時までだ。もちろん、そこまで連中が何もしなければ打てる手はなくなる危険もあった。

 選挙管理内閣の閣議で首班指名が行われる国会の日程が決定されたが、その時神谷が杠のところにやってきた。

 「お疲れ様です。引退されたら何をされます?」

 神谷は慇懃無礼な表情を浮かべていたが、それは自信の裏付けだった。彼を押す政党が第一党になったのは自分が認められたと自負していたのだろう。

 「老兵は死なず、ただ消え去るのみだ。まあ、故郷の四国の山奥の一軒家に引っ越そうとは思っている。だから首都に来ることはもう無くなるだろうな」

 そういって杠が席を立って執務室に戻ろうとしたときの事だ、一人の政務官が走って来た。

 「緊急事態です! 帝央大学の理工学部で大規模な爆発が発生しました! モニターで確認してください!」

 モニターに映し出されたのは崩壊した高層校舎だった、そこにあったのは・・・エキゾチックブレインのコピーだ!

 「被害状況を! 確認されているのを伝えろ!」

 杠は怒鳴った声で政務官に尋ねていた。

 「爆発が起きたのは、学生が登校する前だったんで少なかったとのことですが・・・少なくない人数がいたのは間違いないようです。特に・・・新型の・・・実験装置が爆心のようですが・・・」

 政務官は寄せられていた情報に戸惑っていたが、杠は見当がついていた。連中が何らかの失敗をしたのかもしれないと。それが杠が思っていたものと異なる事態の始まりであった。 
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