冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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三姉妹との邂逅

147・研究所の朝(2)

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 入ってきたのは丹下教授だった。愛莉が知っているよりもずっと若いはずなのに、どこか疲れ切っている様だった。さっきまでいたアーカイブの時代より10年経過しているがそれ以上に老化しているように思えた。

 教授は中央に置かれた、機械化しそこねたような残骸の元死刑囚のボディを持っていた教鞭でたたいていた。その行為には憎しみが籠っていた。そしてラジオのスイッチを入れた。愛莉もそうするのは知っていた。いつも丹下教授が研究所にいるときはラジオをつけていたから。聞くのは朝のワイド番組と決まっていた。陽気なDJのトークと音楽が好きなんだと思っていた。しかし、その時流れていたのは深刻なニュースだった。

 「首相官邸からお伝えします。先ほど安藤首相は蔡国へ残留邦人救出のために派遣されている自衛隊機の即時撤退を防衛省に命令しました。また航空自衛隊に麗華に対し必要な要撃を与える準備を指示しました。また、倉持防衛大臣は全国に非常事態宣言をする準備に入ったとしています。
 それに対し、蔡国および麗華は正午から東西合同議会を麗華の首都ハイゴンで開催すると通告しております。またEU及び中華は平和的解決する方向に意見が集約することを希望するとの談話を発表しています・・・」

 その日の事は愛莉は覚えていた。世界が崩れる序曲だったと。両親と死に別れたこともあるが、それまでの世界も崩れてしまった・・・あまりの衝撃でそのあと三ヶ月の記憶がはっきりしないほど。ただ、そのあと何が起きたかは後で学習はしていたが。

 「丹下だ! 杠君、どうだね状況は?」

 丹下教授はデスクに座り手を組んでどこかに電話していた。

 「最悪です! もう避けられないでしょ破滅は! どちらかが手を出しても避けられません。可能なのは全世界が飲み込まれるのを防ぐことです。とりあえずハイゴンに向かいます」

 「いま、どこにいる? 正午に間に合うか?」

 「モスクワです。これから離陸です。音速ビジネス機なので、間に合うはずですが、それまで麗華の中枢部が持ちこたえていればいいのですが」

 「そうか、期待している」

 いったい丹下教授は裏で何をしているの? 愛莉は不思議に思った。すると淳司はこういった。

 「丹下教授は三姉妹が描いたシナリオを変えようとしているのさ。でも、そのシナリオに気付いたのはさっきなんだ」

 「シナリオってなんなのよ?」

 「それは、現生人類の粛清と新人類の創生さ」

 「新人類?」

 「君も知っているだろ、人間の身体を機械に変えてしまう改変ナノマシーンを。全世界で暴走させるのさ、人類の国家を破壊した後に」

 それを聞いた愛莉は恐怖した。なぜ三姉妹がそうしようとしたのかを・
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