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三姉妹との邂逅

148・研究所の朝(3)

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 愛莉はその日の事をはっきり覚えていた。その日は月曜日でなんとなく気分が重かった。ニュースは深刻なものばかりで、コメンテーターは自制を促すものもいたが、好戦的なものもいた。小学生の愛莉からすれば全て雑音にしか思えなかった。好き勝手な事を大人たちが言っている。それらは不協和音でしかなかった。

 両親は慌ただしく飛行場に向かおうとしていた。両親は共稼ぎで独りぼっちになることは珍しくなかったが、あの朝から永遠に独りぼっちにされるなんて予想できなかった。もし、知っていたなら止めるか、一緒に行きたかった。

 「愛莉ちゃん、分かっていると思うけど、これはアーカイブだ。一切過去を変える事はできない」

 淳司はそう言ったのは愛莉が涙を浮かべていたからだ。もし、本当に変えられるのなら、あの時住んでいたアパートに駆け込みたかった。飛行機に乗ってはいけない! 撃ち落されてみんな死んでしまう! でも、それはこの地球上の多くの人が思う事であるだろう。「悲劇の13日」は従来の世界秩序の崩壊を招いたのだから。

 「わかっているよ・・・淳司はこの時何をしていたの?」

 愛莉はそう聞いたが、彼は答えなかった。でも質問に対しこんなことを言った。

 「それはね・・・今度ゆっくり話をしたい。君が本来の姿を取り戻したときに」

 「本来の?」

 愛莉は全身拘束刑でほぼ機械の身体に変えられている。いま、ここにある姿は疑似的なものだ。それにしても、高校の制服姿なのはなぜだろう?

 「ちょっと、まって! 動きがあるようだ」

 ラジオから新たなニュースが流れだした。

 「先の世界大戦において、米露中三か国で使われた超中性子弾に関し、国連地球機構は量産したのは麗華民主共和国最先端技術部と断定しました。またエキゾチック・ブレインですが、猛烈な速度でサイバー攻撃を行う危険があるとして、注意を呼び掛けております。最悪の事態が予想されます」

 「これって?」

 「知っているだろ。麗華のエキゾチック・ブレインが世界中に戦争を仕掛け始めたのさ。核反応兵器や大陸弾頭ミサイルを開発していたというのに全てを放棄したのは、新たな手段を手に入れたわけだが、その手段が麗華の首脳陣を放逐して独自の活動をしはじめた瞬間さ」

 「それって?」

 「君のご両親が犠牲になった・・・世界中で悲劇が始まった」

 思わず愛莉は目を伏せてしまった。本当はどこかに隠れたかったが、今は出来なかった。ここで、これから何が起きたのかを目撃するために。
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