冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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三姉妹との邂逅

135・令和の虐殺魔(4)

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 のちに「令和の虐殺魔」と呼ばれる殺人犯は15人の命を奪った悪名高い男であった。その男が処刑されたのは「悲劇の13日」よりも二年前の2028年夏の事であった。その直後当時の世界三大強国による大戦争により世界が混乱したため事実上死刑制度が停止状態になり、それから五年後に「全身拘束刑」が導入されたわけだ。

 「シグマ計画って・・・聞いたことないわよ」

 愛莉は記憶を検索したがわからなかった。愛莉は理数系で計算能力などは優れていたが、社会科学系にあまり興味がなく、覚えることはできても余り考えることはなかった。

 「シグマ計画は簡単に言えば人体のナノマシーンによる機械化技術の土台さ。ナノマシーンを知っているよね、君がロボットのような姿にされた技術さ」

 クラウゼの言葉に愛莉は戦慄が走った。たしかナノマシーンを開発したのは「偽りの13か月の平和」に麗華の天才三姉妹だったと聞いていたというのに。それよりも前に開発されていたというのか、しかも丹下教授がかかわっていた?

 「それっておかしいわよ、最初の被験者が目の前の男なんて!」

 愛莉はメタリックなボディを震わせながらいうと、クラウゼが振りかえって指を振った。

 「ちがう! 実は丹下教授は密かに引き取り手のない遺体などを使っていたんだ。次は死刑囚をつかって、実証したんだ。そして最後に永遠に苦しむようにと、目の前の奴を改造したわけさ。
 それまでの被験者は全て最終的には廃棄処分したというのに、ここでもう十二年近くも保管しているんだ。時々、電源が入るようにしていて苦しんでいるのさこいつは! 
 丹下教授に言わせば死を望んで多くの、妻と娘の命などを奪った奴に死ぬよりも恐ろしい生を永遠に与えたんだと。最終的には誰の手にも触れられない棺桶にいれて地中深く埋めて、この地球が消滅するまで苦しめてやると計画していたんだぞ」

 愛莉は今まで丹下教授に抱いていた印象が崩れるのがわかった。肉親を奪われて死を望むのではなく地球が滅亡するまで苦しめてやるやるなんて恐ろしい事をしようとするなんて。そのとき、目の前のモニターに文字列がうかんだ。それは地獄に落ちた餓鬼の言葉のようで恐ろしいといえた。

 ”はやく”機能停止しろ! お願いだ! シグマ計画の事を教えるから! 早く電源を落としてくれ!”
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