冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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三姉妹との邂逅

136・令和の虐殺魔(5)

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 愛莉はクラウゼがシグマ計画を調べるために、自分をこのおぞましい元死刑囚が永遠に苦しむ者に引き合わせたらしいと分かった。しかしおかしいといえる点があった。この「令和の虐殺魔」はなぜシグマ計画を知っているかである。実験体が秘密の計画を知っているとは思えなかった。それに「令和の虐殺魔」に関する情報ならここ「丹下犯罪学研究所」のアーカイブに大量に保管されているはずだった。

 「クラウゼさん。わざわざ私をここに連れてきた理由を教えていただけないでしょうか? なにかするつもりなのですか?」

 そう尋ねるとクラウゼは下げていたバックからデバイスみたいなものを取り出した。それを愛莉が電脳に照会すると、恐ろしい答えが分かった。

 「それって電脳?」

 「見たらわかるだろうね。君の仲間さ! ちょっと無理やり協力してもらっているけど」

 「誰の電脳?」


 「それはすぐにわかるさ。実はこの壊れかけの全身拘束男は、知っているだろうけど事件当日に警官に銃撃されて脊髄が損傷して下半身不随だった。その治療と称して徐々に改造したんだけど、こいつの胴体にシグマ計画に関する情報が保存されたHDDが埋め込まれていたのさ。その中に知りたいことがあるようなのさ。だから君とこの電脳を接続させてもらうのさ」

 そういうとクラウゼは持ってきた電脳と愛莉のボディにインターフェイスを取り付けた。

 「大丈夫ですか、こんなことをして」

 「大丈夫さ。ここは機密保持のためあらゆる電磁的送受信ができないようになっているから警備システムに気付かれないさ。作業自体は10分で終わるけど君たちにとっての主観時間はそれなりに長いから覚悟してくれたまえ」

 そういってクラウゼがシステムを稼働するとこんなことをいった。

 「それでは2019年の世界に行きなさい! 謎が少しわかることを期待しているからね愛莉ちゃん」

 愛莉の意識は遠くなった・・・

 愛莉は恐ろしい光景を見た。「令和の虐殺魔」がしでかしたことを。この国が令和元年と定めた年に起きたことを。数多くの人々を重火器で虐殺しているところを。そうしていると、時間が逆行している感覚があった。次に意識を取り戻すと愛莉はクリスマスでにぎわう街にいた。

 「夢? なの?」

 愛莉はとあるお店のショーウィンドの前にいた。そのショーウインドに映る姿は女子高生の自分だった。通っていた全寮制高校の制服で赤いマフラーをしていた。戸惑っていると肩をたたかれた。

 「よお!」

 振り返るとそこには淳司が立っていた!

 「どうして先生がここにいるのよ!」

 愛莉は驚いているとこんなことをいった。

 「ヘルムート・クラウゼって知っているか?」

 「クラウゼさんなら存じていますが」

 「だろうな。あいつったら危ない橋を渡らせやがって! 今日は何日かわかるか?」

 「いまはたしか2039年?」

 「いや、この世界は令和元年12月14日さ! つまりは令和の虐殺魔事件当日なのさ!」

 「えっ?」

 愛莉はアーカイブ世界に接続されたことを知った。
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