129 / 198
迷宮魔道な場所へ
120・疑惑(5)
しおりを挟む
午後、五限目の授業が終わった真由美は丹下犯罪学研究所に出向いていた。ガイノイド・エリーのメンテナンスが気になっていたのだが、中に入った途端、雰囲気がおかしい事に気付いた。エリーの前にいるのはドイツ人の男しかいなかったからだ。
「クラウゼさん。どうですかエリーは?」
少しだけ驚いた表情を浮かべたヘルムートだが、すぐ取り繕うような顔に変わっていた。
「安養寺さん。少しびっくりしますよ。いきなり話しかけられたら。順調ですよ、全て」
「全て? まさか記憶バンクをリセットしたわけないですよね? そんなことをしたらあたいの事を忘れました、だからはじめましてなんて事いったりしませんよね!」
「それはありません! 大丈夫です! 行動プログラムの再チェックだけですから!」
ヘルムートはモニターを不可視化してから真由美を見ていた。その顔になにかを隠しているように真由美は感じていたが、もう一人いるはずの人がいない事に気付いた。
「そういえば長崎先生はどうされたのですか? どこにいるのですか?」
淳司がいないことに真由美は不安になっていた。
「先生ですか? なにか用事があったようで昼過ぎにどこか行きました。後は頼むって言われました。週が明けたら問題なく戻ってくると思います!」
ヘルムートはそういったが、淳司のデスクの上に淳司が持っていたバックが置かれたままなのが気になった。でも、真由美はそれを指摘できなかった。頼りになる淳司もエリーもいないのに、自分よりも屈強な男に対峙することなんか出来ないと思ったからだ。
「ところで、安養寺さん。このカード・電脳を額にかざしてもらえませんか?」
「かざすだけでいいの?」
真由美は電脳化されていない人間にやる意味がないのにと不審に思いながら、手に取って額にかざしたが、何も起きなかった。真由美は淳司がいないことが気になっていたが、この場は早く離れた方が良いと思い、それ以上は何も言わず帰宅した。
ヘルムートは真由美が持ったカード・電脳のデータをエリーに接続した。すると、エリーの電脳、元は愛莉の記憶が共鳴し始めた。その様子にヘルムートはニヤリとした表情を浮かべていた。
「さあ、はじまるぞ。連中が勝つか連盟が勝つか、それとも我々が勝つか、やってみるしかねえがな」
ヘルムートの心にはダークサイトが宿っていた。
「クラウゼさん。どうですかエリーは?」
少しだけ驚いた表情を浮かべたヘルムートだが、すぐ取り繕うような顔に変わっていた。
「安養寺さん。少しびっくりしますよ。いきなり話しかけられたら。順調ですよ、全て」
「全て? まさか記憶バンクをリセットしたわけないですよね? そんなことをしたらあたいの事を忘れました、だからはじめましてなんて事いったりしませんよね!」
「それはありません! 大丈夫です! 行動プログラムの再チェックだけですから!」
ヘルムートはモニターを不可視化してから真由美を見ていた。その顔になにかを隠しているように真由美は感じていたが、もう一人いるはずの人がいない事に気付いた。
「そういえば長崎先生はどうされたのですか? どこにいるのですか?」
淳司がいないことに真由美は不安になっていた。
「先生ですか? なにか用事があったようで昼過ぎにどこか行きました。後は頼むって言われました。週が明けたら問題なく戻ってくると思います!」
ヘルムートはそういったが、淳司のデスクの上に淳司が持っていたバックが置かれたままなのが気になった。でも、真由美はそれを指摘できなかった。頼りになる淳司もエリーもいないのに、自分よりも屈強な男に対峙することなんか出来ないと思ったからだ。
「ところで、安養寺さん。このカード・電脳を額にかざしてもらえませんか?」
「かざすだけでいいの?」
真由美は電脳化されていない人間にやる意味がないのにと不審に思いながら、手に取って額にかざしたが、何も起きなかった。真由美は淳司がいないことが気になっていたが、この場は早く離れた方が良いと思い、それ以上は何も言わず帰宅した。
ヘルムートは真由美が持ったカード・電脳のデータをエリーに接続した。すると、エリーの電脳、元は愛莉の記憶が共鳴し始めた。その様子にヘルムートはニヤリとした表情を浮かべていた。
「さあ、はじまるぞ。連中が勝つか連盟が勝つか、それとも我々が勝つか、やってみるしかねえがな」
ヘルムートの心にはダークサイトが宿っていた。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!
ジャン・幸田
SF
わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!
それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド
ジャン・幸田
SF
昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?
女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!
彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱
ジャン・幸田
SF
何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。
過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。
どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!
ジャン・幸田
SF
バイトの面接に行ったその日からシフト?
失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?
機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる