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迷宮魔道な場所へ
80・機械奴隷
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もともと肉体の機能を機械に置き換えるサイバロイド技術は、身体に障碍がある場合に改善されるためにあった。人工眼球や稼働する義手や義足などがそれに相当した。しかし、世界の多くの国々で自国第一主義が台頭し、国際的規制がないまま無秩序にサイバロイド技術が発展した結果、恐ろしい事になった。人間の身体そのものを素材にしたロボットの製造だった。結果、世界各地の戦場に投入され恐ろしい惨禍をもたらした。
その惨禍を前に、世界の主要国の核武装諸国は核兵器による抑止力で世界大戦など起きるはずはないと積極的な世界秩序の回復に努力しなかった。しかし、それを崩壊させたのがエキゾチック・ブレインによる世界同時サイバーテロであった。具体的にどのように事態が進行したのかは明らかになっていない面もあるが、わずか一週間で従来の世界秩序は終焉を迎えたのは事実であった。
その結果、世界中に拡散したのが機械と肉体を融合させる技術であった。どこの国でも規制の差こそあれ、ある程度の改造を受けられる事は可能であった。だから、いまどき身体の一部が機械になったなんて人々と遭遇する確率は高かった。しかし、通常は「人間らしさ」を表明するものなので、明らかに「機械らしい」姿なのは奇異であった。
ほんの数か月前の理工学部の構内を思い出していた。その時にもグレン教授のように明らかに機械と融合する肉体改造をしたものはいたけど、ここまで多くはなかった。しかし、この理工学部構内の研究員や作業者の改造割合は異常だと愛莉は思った。その時、ある考えが浮かんだ。半ば強制されて改造されたのではないかと。
この国では規制によって愛莉のようにほぼ全身を機械に改造されるのは、全身の大半が機能不全に陥る重傷を受けるか、全身拘束刑でも死刑相当と判断される犯罪者だけであるが、それよりも軽い改造だったら関係省庁に届け出をするだけで構わない場合がある。たとえば、俗に”機ぐるみ”などというパワード・スーツのような外骨格強化服は、医師の許可があれば簡単に機械の姿になれるわけだ。だから、ここのロボットのようにみえる人間の作業員はそんな形で改造されたようだ。しかも洗脳されているようだ! もっともそれは違法行為であるが、そんなことはここでは問題ないようだ。なぜなら理工学部のこの巨大な空間は独立した国家のような権力を持っているのだから。
そんな理工学部の構内は機械奴隷にあふれていた。しかもエキゾチック・ブレインの復活に関係すると思われる作業をしているようだった。最初に見学に訪れた軌道エレベーターの研究とされるエリアなどは、実際には巨大な構造物を構築しているようだった。それは、かつて存在したエキゾチック・ブレインの中枢にエネルギーと水を供給するための構造体に酷似していた。愛莉の電脳に記憶されたデータがそう判断していた。
そのときだった、真由美の車椅子を押しているエリーの背後に二体の警備ロボと一緒に近づいて来た女がいた。その女が一体と一人、いや二人を呼び止めた。
「そこの車椅子のお嬢さんと介助ガイノイド、ちょっと話を聞いてもいいかしら?」
その女はタオ先輩だった!
その惨禍を前に、世界の主要国の核武装諸国は核兵器による抑止力で世界大戦など起きるはずはないと積極的な世界秩序の回復に努力しなかった。しかし、それを崩壊させたのがエキゾチック・ブレインによる世界同時サイバーテロであった。具体的にどのように事態が進行したのかは明らかになっていない面もあるが、わずか一週間で従来の世界秩序は終焉を迎えたのは事実であった。
その結果、世界中に拡散したのが機械と肉体を融合させる技術であった。どこの国でも規制の差こそあれ、ある程度の改造を受けられる事は可能であった。だから、いまどき身体の一部が機械になったなんて人々と遭遇する確率は高かった。しかし、通常は「人間らしさ」を表明するものなので、明らかに「機械らしい」姿なのは奇異であった。
ほんの数か月前の理工学部の構内を思い出していた。その時にもグレン教授のように明らかに機械と融合する肉体改造をしたものはいたけど、ここまで多くはなかった。しかし、この理工学部構内の研究員や作業者の改造割合は異常だと愛莉は思った。その時、ある考えが浮かんだ。半ば強制されて改造されたのではないかと。
この国では規制によって愛莉のようにほぼ全身を機械に改造されるのは、全身の大半が機能不全に陥る重傷を受けるか、全身拘束刑でも死刑相当と判断される犯罪者だけであるが、それよりも軽い改造だったら関係省庁に届け出をするだけで構わない場合がある。たとえば、俗に”機ぐるみ”などというパワード・スーツのような外骨格強化服は、医師の許可があれば簡単に機械の姿になれるわけだ。だから、ここのロボットのようにみえる人間の作業員はそんな形で改造されたようだ。しかも洗脳されているようだ! もっともそれは違法行為であるが、そんなことはここでは問題ないようだ。なぜなら理工学部のこの巨大な空間は独立した国家のような権力を持っているのだから。
そんな理工学部の構内は機械奴隷にあふれていた。しかもエキゾチック・ブレインの復活に関係すると思われる作業をしているようだった。最初に見学に訪れた軌道エレベーターの研究とされるエリアなどは、実際には巨大な構造物を構築しているようだった。それは、かつて存在したエキゾチック・ブレインの中枢にエネルギーと水を供給するための構造体に酷似していた。愛莉の電脳に記憶されたデータがそう判断していた。
そのときだった、真由美の車椅子を押しているエリーの背後に二体の警備ロボと一緒に近づいて来た女がいた。その女が一体と一人、いや二人を呼び止めた。
「そこの車椅子のお嬢さんと介助ガイノイド、ちょっと話を聞いてもいいかしら?」
その女はタオ先輩だった!
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