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(閑話)真由美の放課後
真由美が知りたい情報
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真由美は杠にあまり聞くことが出来なかった。父がいた事もあるが、肉親を目の前で殺されたという話を聞いていいのか分からなかったのだ。真由美も母と一緒にいた時にテロに遭遇したと聞かされていたので、同じ立場の人間なのだと思った。もっともその時の記憶は一切ないのであるが。
「そうなんですか? それは大変でしたね」
真由美は言葉を綴れなかった。なんて答えたらいいのか分からなかったが。すると父が助け船を出した。
「杠! 今日はうちの娘の入学祝いに飛び入り参加してくれたんだろ? あんまり深刻な話をしないでくれ! 初対面なのにさ! 場を考えない話をしないでくれ!」
「すまなかったな真由美さん。あんまり気を悪くしたのならごめんな」
「い、いえ。大丈夫ですわ」
あんまり愉快な話題になりそうもないと思っていたが、首相からこうやって謝罪されるのも変な気分になった。それにしても首相なのに腰が低い人物なんだなあと真由美は感じた。もっとも、それは父の前だけであったのを知ることになったが。
一般的に知られている杠の経歴はほんの十年前までほぼ無名の存在だった。それが変わったのは世界各国による自国第一主義の蔓延とその後に発生した世界同時多発サイバーテロと世界恐慌が起きた後からであった。
一回生議員なのにいきなり司法長官に抜擢され、死刑制度の廃止と全身拘束刑の導入など行刑政策の刷新を行い、そのあとは国土安全省副長官などを歴任していたが、国民に直接説明する立場でなかったので、あまり認知度が高くなかった。そんな杠が世間の予想を覆して首相になった時のマスコミの拒絶反応は激しいモノであった。でもマスコミはその理由を開示することはなかった。
そんな杠と安養寺親子の会食は進んでいったが、杠は特に何かを話すことはなく、何故ここにいるのか理由がわからなかった。会食も進んでいって最後のデザートがテーブルに運ばれてきた時、彼の口から真由美が知りたい情報がこぼれた。
「真由美さん」
「はい?」
いきなり杠から声掛けされ、思わず真由美は持っていたスプーンを皿に落としてしまった。
「あなたのお父様に頼まれた、山村愛莉さんの事ですが、消息がつかめました」
愛莉、という固有名詞を聞いて真由美は杠の方に身を乗り出していた。
「お姉ちゃん? いや山村さんの事をご存じなのですか?」
そう聞くと、杠は周囲にいた警護の警官ロボに外に出ていくように指示した。そして部屋に人間だけになったところで切り出した。
「君の親愛なる愛莉さんだが、全身拘束刑に処されているそうだ。今は機械の身体になっているんだ、無実の罪で」
その言葉を聞いた真由美は混乱していた。それってどういう意味なのよ!
「そうなんですか? それは大変でしたね」
真由美は言葉を綴れなかった。なんて答えたらいいのか分からなかったが。すると父が助け船を出した。
「杠! 今日はうちの娘の入学祝いに飛び入り参加してくれたんだろ? あんまり深刻な話をしないでくれ! 初対面なのにさ! 場を考えない話をしないでくれ!」
「すまなかったな真由美さん。あんまり気を悪くしたのならごめんな」
「い、いえ。大丈夫ですわ」
あんまり愉快な話題になりそうもないと思っていたが、首相からこうやって謝罪されるのも変な気分になった。それにしても首相なのに腰が低い人物なんだなあと真由美は感じた。もっとも、それは父の前だけであったのを知ることになったが。
一般的に知られている杠の経歴はほんの十年前までほぼ無名の存在だった。それが変わったのは世界各国による自国第一主義の蔓延とその後に発生した世界同時多発サイバーテロと世界恐慌が起きた後からであった。
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そんな杠と安養寺親子の会食は進んでいったが、杠は特に何かを話すことはなく、何故ここにいるのか理由がわからなかった。会食も進んでいって最後のデザートがテーブルに運ばれてきた時、彼の口から真由美が知りたい情報がこぼれた。
「真由美さん」
「はい?」
いきなり杠から声掛けされ、思わず真由美は持っていたスプーンを皿に落としてしまった。
「あなたのお父様に頼まれた、山村愛莉さんの事ですが、消息がつかめました」
愛莉、という固有名詞を聞いて真由美は杠の方に身を乗り出していた。
「お姉ちゃん? いや山村さんの事をご存じなのですか?」
そう聞くと、杠は周囲にいた警護の警官ロボに外に出ていくように指示した。そして部屋に人間だけになったところで切り出した。
「君の親愛なる愛莉さんだが、全身拘束刑に処されているそうだ。今は機械の身体になっているんだ、無実の罪で」
その言葉を聞いた真由美は混乱していた。それってどういう意味なのよ!
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