冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

66・接触

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 淳司はエリーの機体を優しく抱き寄せた。それには愛梨はドキマキしてしまった。こんなふうに男の人に抱かれるなんて初めてだったから。そ行為にガイノイドとして拒絶できないのでなされるがままだった。

 エリーは愛莉の肉体を素体にして改造製造されたガイノイドであるが、元の肉体に外骨格が受ける刺激を伝達するようにナノマシーンによって構成されていた。だから抱かれるという行為は愛莉の身体を抱いているという行為と同じであった。

 「ちょっと! 淳司! いきなりなにするのよ! いくら今は機械の身体でも私はその・・・男の人に抱いてもらったことなんかないのよ!」

 愛莉は淳司に訴えたが、それはネットワーク上のやり取りでしかなかった。もし丹下教授や真由美が見ても沈黙の中、淳司がロボットに寄りかかっているようにしか見えないはずだ。

 「やっぱりな、君の人間性はかなり回復しているようだな。柴田技師長が君に最初に施した電脳化措置は事実上君の精神をリセットするものだったからな。まあ彼女も上からの指示どおりにしただけだが、それってサイコパスな矯正が困難な凶悪な犯罪者に施されるものなんだぜ。本当に我々の協力者が気付いてくれていなかったら、いまも君はタダのロボットだったな」

 その言葉に愛莉ははっとした。最初にアイリとして起動したときのことを。あのとき、人間としての記憶を持っているが、ただのプログラムでしかなかった自分を。あのまま万が一エキゾチック・ブレインのパーツにされていたとしたら、死んでしまったと一緒ではなかったのではないかと。

 「それは、そうね。それは感謝しているわ。でもね、淳司! もう少しロマンティックなシチュエーション考えてくれたって良いじゃないのよ! こんな古い新聞の束の脇で逢瀬をするだなんて! もし、あとで・・・」

 「あとで・・・なんだよそりゃ?」

 淳司に言われ愛莉はあとでの続きをなんて言おうとしたのか、忘れてしまった。まさか自分って淳司の事を? いや、そんなはずはないってば! 今の身も心も機械にされている自分という存在が恋をするなんてありえないってば!

 「別にいいわ。それよりも今日の段取りを教えてちょうだいよ」

 愛莉がそういうと淳司がエリーの右胸のドームの中に小さな何かをいれた。それにしても機械なので胸の膨らみも道具を入れられるようになっていた。

 「今入れたのが、超小型原子力電池搭載の大容量データ送受信装置さ。これで理工学部にいるアイリと君がリンクできるようになるのさ」


 そういって、淳司は今度はエリーの首筋にデータカードを挿入した。
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